虹色の尾びれ(ショートショート)
空に浮かび上がる虹。雨上がりの街は洗濯したみたいにさっぱりとした匂いがする。
濡れたアスファルトのところどころで水たまりができている。
少し離れたところで親子の笑い声が聞こえる。小さな子どもとその母親。
水たまりをパシャパシャ踏む音と、笑いながら叱る声。
太陽がその光景を優しく見守っている。
僕も近くにあった小さな水たまりを、少しだけパシャパシャとやる。子供の頃の記憶から、懐かしい感情が滲み出てくる。
ふと空を見上げると、虹は相変わらず綺麗で、くっきりとその姿を現している。
パシャ。
近くの水たまりから音がした。後ろの方から聞こえたので、咄嗟に振り返ってみると、水たまりの中に何かが飛び込んだ後のようだった。
影が水たまりに溶けていき、水面が揺れる。
その水たまりを見ていると、別の水たまりから似た音が聞こえる。
今度はそれを逃さないようにすぐさま覗き込む。
魚影。魚の影だった。それもただの魚ではなく、虹色の。
虹色の魚? 一体どういう、と思いながら、一つ思い当たる。
空に浮かんでいる虹。あれから飛び出してきたのだろうか? だとしたら一体、どんな仕組みなのか。
そう思いながら見上げていると、虹の一部がぷくりと膨らんで、虹色の尾びれがぴょん、と顔を出す。