石黒 太郎_人事コンサルタント (立教LDC2期生)

人事関連の論文について紹介します/新卒入社したメーカーに20年勤務した後、人事コンサルタントにキャリアシフトしました

石黒 太郎_人事コンサルタント (立教LDC2期生)

人事関連の論文について紹介します/新卒入社したメーカーに20年勤務した後、人事コンサルタントにキャリアシフトしました

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【特別論考】「人的資源管理は人材をコストと見なし、人的資本経営では投資先と考える」は本当か?

1.人的資源管理をそんなにディスらないで!人事界隈の方であれば、以下の図表はご存じですよね。人材版伊藤レポートで示されている「変革の方向性」です。 私が以前から違和感を感じているのは上の2つの項目、「人材マネジメントの目的」と「アクション」です。左側の従来(Not this)には「人的資源・管理」「オペレーション志向」「コスト」「人事諸制度の運用・改善が目的」といった表現が並ぶ一方、右側の今後(But this)では「人的資本・価値創造」「投資」「経営戦略から落とし込んで策定

    • 【人事に効く論文】リーダーシップ研修なんて、本当に意味があるの? → あります、だけど…

      1. 10分で分かる論文の概要「リーダーシップ研修はどの程度効果があるのか」「リーダーシップ研修をどのように設計・実施すれば、その効果を最大化できるか」を明らかにすることを目的にした論文です。リーダーシップ研修に関する20,742の先行研究論文から335本を抽出し、カークパトリックモデルの「反応」「学習」「転移」「結果」を評価基準とするメタ分析によって以下の仮説が検証されました。 仮説1a:リーダーシップ研修は、受講者の「反応」にポジティブな効果をもたらす 仮説1b:リーダ

      • 【人事に効く論文】1on1ミーティング、マネージャーにとっては負担なんですよ、ぶっちゃけ…

        1. 45秒で分かる論文の概要学術的にはマネジリアルコーチングと呼ばれる1on1ミーティングですが、従来の多くのマネジリアルコーチングに関する研究では、部下への影響に焦点が当てられてきました。この論文の新しさは、コーチであるマネージャーに着目したことにあり、中国のとある製造業企業の現場マネージャー92名とその部下449名分のアンケート調査結果を元に、以下の仮説が検証され、すべて支持されました。(じっくり読むのが面倒であれば、「2.私的な解説/感想」に飛んでください) 仮説1

        • 【人事に効く論文】「個人成果とチーム成果に基づくインセンティブを組み合わせましょう」 → そんなに都合よくは機能しません

          1. 45秒で分かる論文の概要個人成果へのインセンティブ、チーム成果へのインセンティブ、そしてそれらをミックスしたインセンティブについて、米国の大学生304名を4人1組の76チームに分けて実験(コンピューターによる戦争シミュレーションゲーム)を行い、効果を検証した論文です。その結果に基づいて以下の仮説が検証され、すべて統計的に有意であることを明らかにしました。 仮説1:ミックスインセンティブ制度の場合、グループインセンティブ制度の場合よりも、メンバーの仕事が速くなる 仮説

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        【特別論考】「人的資源管理は人材をコストと見なし、人的資本経営では投資先と考える」は本当か?

          【人事に効く論文】部下が創造性に欠けている? 上司のあなたが原因かもしれませんよ!

          1. 3分で分かる論文の概要インクルーシブ・リーダーシップと心理的安全性、そしてメンバーの創造的業務への関与度合いの関係について研究した論文です。知識集約型組織の研究開発部門で働く150名(女性が92名、既婚者が64%、平均年齢32.3歳、平均勤続3.7年。学歴は高卒が27%、大卒45%、院卒25%)からの調査回答に基づいて以下の仮説が検証され、すべて支持されました。 仮説①:インクルーシブ・リーダーシップは心理的安全性と正の相関がある 仮説②:心理的安全性は、創造的業務

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          【人事に効く論文】グループとしての団結がパフォーマンスを向上させるって、本当?

          1. 90秒で分かる論文の概要グループの凝集性(cohesion)とパフォーマンスの関係に関する論文です。この論文以前は、グループの凝集性とパフォーマンスとの間に関係があることを多くの研究者が認めているものの、実証的な研究結果は大きく異なっており、関係性の一般化を疑う研究者もいたそうです。そこで、この論文では64の先行研究論文(1951~2002年)のメタ分析が行われ、以下の仮説が検証されました。 仮説➀:凝集性は「結果的パフォーマンス」よりも「行動的パフォーマンス」と強い

          【人事に効く論文】グループとしての団結がパフォーマンスを向上させるって、本当?

          【人事に効く論文】360度評価はパフォーマンス向上にどうつながるのか?

          1. 10秒で分かる論文の概要360度評価に関する24の先行研究をメタ分析した論文です。その分析結果に基づき、360度評価の結果がどのようにして本人のパフォーマンス向上につながるのか、下図の理論モデルが示されました。 2. 私的な解説/感想モデルを貼り付けるだけでは不親切かなと思い、モデルを構成するそれぞれの要素について論文での定義や内容を紹介しますね。 Characteristics of the feedback  フィードバックの特徴 簡単に言うと、フィードバックの

          【人事に効く論文】360度評価はパフォーマンス向上にどうつながるのか?

          【人事に効く論文】360度評価の結果を成長につなげられる管理職、つなげられない管理職

          1. 20秒で分かる論文の概要360度評価に関連して、部下から上司への評価(Upward Feedback)の有効性について調査・検証した論文です。執筆者の一人であるHeslin教授は、マネジリアル・コーチングの研究で有名な方。オーストラリアのプロフェッショナルサービス企業税務部門の管理職70名を対象に部下から上司への評価を行い、その結果から以下の仮説が検証されました。 仮説①:部下から上司へのフィードバックが上司のパフォーマンスに及ぼす効果を、「自己効力感」が調整する →

          【人事に効く論文】360度評価の結果を成長につなげられる管理職、つなげられない管理職

          【人事に効く論文】360度評価の結果レポートを渡すだけで行動変容につながると思ったら大間違い

          1. 80秒で分かる論文の概要360度評価のフィードバック・ワークショップについて、米国の地方銀行のマネージャー(中間管理職)を以下の群に分けて実験し、360度評価の結果が行動変容につながったかどうか、その効果が検証されました。 実験群(7名):ワークショップを開催の上、360度評価の結果レポートを渡す 対照群(7名):360度評価の結果レポートを渡すだけ 比較群(7名):360度評価の対象だが、結果レポートを渡さない。ワークショップは開催する 具体的にはワークショップ前

          【人事に効く論文】360度評価の結果レポートを渡すだけで行動変容につながると思ったら大間違い

          【人事に効く論文】内発的動機付けとパフォーマンスの正しい関係

          1. 90秒で分かる論文の概要内発的動機付けと外発的動機付け、そしてパフォーマンスとの関係について、過去40年分の先行研究結果をメタ分析した論文です。約1,000の論文をサーチし、154の情報源から得た21万人分のデータを元に、以下の仮説を検証し、すべて統計的に有意であることを明らかにしました。 仮説1A:内発的動機付けはパフォーマンスと正の相関がある 仮説1B:内発的動機付けとパフォーマンスとの相関は、量型タスクよりも質型タスクの方が強い 仮説 2A: インセンティブが

          【人事に効く論文】内発的動機付けとパフォーマンスの正しい関係

          【人事に効く論文】ジョブディスクリプションが従業員の職務満足度を下げる、ですって? それってどういうこと?

          1. 45秒で分かる論文の概要”The impact of job description and career prospect on job satisfaction”というタイトルが示す通り、ジョブディスクリプションとキャリア展望(career prospect)が従業員の職務満足度にどのような影響を及ぼすのか、定量的に研究した論文です。有名な論文では全くないのですが、面白そうなので読んでみました。モーリシャスにある多国籍企業の従業員132名からのアンケート回答結果を元

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          【人事に効く論文】組織学習? なんや、それで会社が儲かるようになるんか? → なります

          1. 20秒で分かる論文の概要組織学習(Organizational Learning)と組織コミットメント・職務満足度・ワークパフォーマンスの関係について定量分析した論文です。マレーシアの公務員(行政官と外交官)を対象にアンケート調査を実施し、435名分の回答を元に以下の内容について有意であることを明らかにしました。 ①組織学習は、組織コミットメント・職務満足度・ワークパフォーマンスと正の相関がある ②組織コミットメントはワークパフォーマンスと正の相関がある ③職務満足度

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          【人事に効く論文】新人を職場に定着させる「埋め込み」とは?

          1. 3分で分かる論文の概要組織における新人(新卒とは限りません)への社会化施策(Socialization Tactics)と「埋め込み(Embeddedness)」、そして離職との関係について研究した論文です。米国の大手金融サービス企業の従業員222名(勤続1年未満)へのアンケートの結果およびアンケート実施1年後の離職データ(55名が自発的に離職)を元に、以下の仮説が検証されました。 → 結論だけ知りたい人は「2.私的な解説/感想」に飛んでください。 仮説① 集団的(c

          【人事に効く論文】新人を職場に定着させる「埋め込み」とは?

          【人事に効く論文】キャリアプラトーに関する40年分の先行研究をレビューしてみました。

          キャリアプラトー(career plateau)という言葉、皆さんはご存じでしょうか。プラトー(plateau)には高原や踊り場という意味があり、キャリアプラトーは個人のキャリアが踊り場の上で停滞してしまっている状況を指します。この論文では、Ference, Stoner, and Warren (1977)を端緒に進められた約40年分のキャリアプラトーに関する先行研究論文72本についてレビューが行われました。 1. 5分で分かる論文の概要40ページ超ある論文の内容を、超サ

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          【人事に効く論文】職場メンバー間でのナレッジ共有を活性化するには?

          1. 3分で分かる論文の概要職場内でのナレッジ共有(knowledge sharing)について、従業員はナレッジ共有をどのように動機付けられるのか、調査・分析した論文です。ドイツの機械メーカーにおけるコペンハーゲン拠点(@デンマーク)の従業員を対象に実施されたアンケート調査への回答186名分を分析し、以下の仮説が検証されました。 仮説①:ナレッジ共有に対する内発的動機付け(intrinsic motivation)が強い従業員ほど、a)同僚から知識を受け取り、b)同僚に知

          【人事に効く論文】職場メンバー間でのナレッジ共有を活性化するには?

          【人事に効く論文】ベテラン人事:「これまでに1,000人以上と採用面接をしてきました」→ だから何?

          1. 50秒で分かる論文の概要採用面接における応募者の Deceptive Impression Management (欺瞞的印象操作)について分析した論文です。欺瞞的印象操作とは、簡単に言えば、噓やハッタリで自分を良く見せようとすること。ドイツにおける352名分の実験データをサンプルに、以下の仮説が検証されました。 仮説①:経験豊富な面接官は、経験の浅い面接官よりも欺瞞発見能力が高い → 支持されなかった 仮説②:経験豊富な面接官は、経験の浅い面接官よりも欺瞞の手がか

          【人事に効く論文】ベテラン人事:「これまでに1,000人以上と採用面接をしてきました」→ だから何?