【人事に効く論文】グループとしての団結がパフォーマンスを向上させるって、本当?
1. 90秒で分かる論文の概要
グループの凝集性(cohesion)とパフォーマンスの関係に関する論文です。この論文以前は、グループの凝集性とパフォーマンスとの間に関係があることを多くの研究者が認めているものの、実証的な研究結果は大きく異なっており、関係性の一般化を疑う研究者もいたそうです。そこで、この論文では64の先行研究論文(1951~2002年)のメタ分析が行われ、以下の仮説が検証されました。
仮説➀:凝集性は「結果的パフォーマンス」よりも「行動的パフォーマンス」と強い相関がある
→ 支持された。パフォーマンスを行動としてとらえた方が、結果としてとらえた場合よりも凝集性との相関が強かった(結果的パフォーマンスは、グループメンバーの努力とは無関係な要因によって決まることが多いため)
仮説②:凝集性は「効果」よりも「効率」と強い相関がある
→ 支持された。効率性の尺度の方が、効果性の尺度よりも凝集性との相関が強かった
仮説③:凝集性の構成要素である「対人的魅力(グループメンバーへの共感や帰属意識)」「グループとしてのプライド」「タスク・コミットメント」はそれぞれパフォーマンスとの相関がある
→ 支持された。相関の強さは対人的魅力<グループとしてのプライド<タスク・コミットメントの順だった
仮説④:グループ内でのワークフローに関して、プール型→順序型→双方向型→統合型と仕事の相互依存性が強くなるにつれて、凝集性の有益度が高くなる
→ 支持された。グループメンバー間の相互依存性に応じて、凝集性とパフォーマンスとの相関が強くなった
2. 私的な解説/感想
グループの凝集性(cohesion)≒団結力とグループのパフォーマンスの相関については多くの先行研究によって確認されています。企業の実務家にとってのこの論文のポイントは、パフォーマンスを結果と行動に分けて検証したこと、そしてグループ内のワークフローに応じて凝集性とパフォーマンスの相関が変化することを分析した点にあります。
ちなみに、ワークフローの4段階は以下のような感じで定義されていたので、興味があれば参照ください。
プール型ワークフロー:グループメンバー各自によって別々に仕事が行われる。メンバー間で仕事が流れることはない
順序型ワークフロー:グループ内のメンバーから別のメンバーへと一方向に仕事が流れる
双方向型ワークフロー:グループメンバー間で双方向に仕事が流れるが、ある瞬間には一人のメンバーとしか一緒に仕事をしない。
統合型ワークフロー:グループの目標を達成するため、メンバーはグループとして協力する必要がある
3. 読後の余談
グループとしての団結がパフォーマンスを向上させる。当たり前っちゃ当たり前ですよね。そういった当たり前のことでも、しっかりと研究し、裏付けを取る。そこにこの分野の学問の凄味があるように感じています。
2024年9月14日 初稿作成