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【人事に効く論文】「個人成果とチーム成果に基づくインセンティブを組み合わせましょう」 → そんなに都合よくは機能しません

Barnes, C. M., Hollenbeck, J. R., Jundt, D. K., DeRue, D. S., & Harmon, S. J. (2011). Mixing Individual Incentives and Group Incentives: Best of Both Worlds or Social Dilemma? Journal of Management, 37(6), 1611–1635.

1. 45秒で分かる論文の概要

個人成果へのインセンティブ、チーム成果へのインセンティブ、そしてそれらをミックスしたインセンティブについて、米国の大学生304名を4人1組の76チームに分けて実験(コンピューターによる戦争シミュレーションゲーム)を行い、効果を検証した論文です。その結果に基づいて以下の仮説が検証され、すべて統計的に有意であることを明らかにしました。

仮説1:ミックスインセンティブ制度の場合、グループインセンティブ制度の場合よりも、メンバーの仕事が速くなる

仮説2:ミックスインセンティブ制度の場合、グループインセンティブ制度の場合よりも、メンバーはより多くのエラーを起こす

仮説3:ミックスインセンティブ制度の場合、グループインセンティブ制度の場合よりも、メンバーは自分自身のタスクをより多く完了する

仮説4:ミックスインセンティブ制度の場合、グループインセンティブ制度の場合よりも、メンバーは他のメンバーへのバックアップ行動をより少なく行う

2. 私的な解説/感想

この論文による主な示唆は、「ミックスインセンティブは、メンバーを社会的ジレンマに陥れる傾向がある。その結果としてメンバーは、グループインセンティブ制度のもとで働く場合よりも、個人の利益をより追求するようになり、協調性は低下する」というものです。つまり、個人インセンティブとグループインセンティブを組み合わせたからといって、両方の美味しいトコ取りできる訳ではなく、個人インセンティブ寄りの結果になるということです。
論文内の先行研究レビューでは、個人インセンティブとグループインセンティブの特徴について触れられていました。いくつか紹介しますと、、、

グループインセンティブ:
・グループメンバーの経済的利害が一致し、それが協力と正確さにつながる
・メンバー間での情報や専門知識の共有が促される
・他のメンバーのバックアップ行動に積極的に取り組むようになる
・グループインセンティブは、社会的手抜きを引き起こす可能性がある

個人インセンティブ:
・個人の努力と個人のアウトカムとの間に強い結びつきがあるため、個人の努力と業務遂行スピードが高くなる
・メンバーが個人的な成果を重視するようになり、チームワーク、助け合い、協調性、チーム全体のパフォーマンスが損なわれる
・メンバー間での情報や専門知識の共有が妨げられる

なお、Johnson et al.(2006)では、とある実験で最初は個人インセンティブ制度のもとでタスク遂行したチームに対し、2回目はグループインセンティブ制度を適用したところ、メンバーは個人を重視した行動をとり続け、協力のレベルも低かったそうです。 つまり、1回目の個人インセンティブ制の影響が残ったということになります。

3. 読後の余談

この研究では、ミックスインセンティブの個人・グループ比率が50:50に設定し、実験が行われました。50:50でも個人インセンティブ寄りになってしまうのですから「恐るべし、個人インセンティブ」といった感じです。皆さんの会社での目標管理制度、個人目標と組織目標の比率はどの程度ですか?組織目標をチョロッと入れてるくらいでは、何の効果もないかもしれませんよ。

2024年10月6日 初稿作成

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