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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年11月3日 06:28
秋の夕暮れ、ウサギは窓辺に腰掛け、降り続く雨音に耳を澄ませていた。ティーカップに熱いお湯を注ぎながら、ふと誰かに呼ばれた気がして、小さな本棚に目を向けた。そして一冊の絵本を手に取ると、その表紙をじっと見つめた。「この淡い色彩の絵が、優しい物語にぴったりなのよね…」と、つぶやきながら、紅茶の香りに誘われて、そっとひとくち口に含む。静かな時間が流れる中、ウサギはゆっくりとページをめくり始めた。
2024年10月22日 06:36
「今日も一日、よく頑張ったわね」ウサギは小さなあくびをした。時計の針は午後十時を指し、彼女の目も少しずつ重くなっている。ベッドに向かう前に、小さな本棚の前で立ち止まると、何気なく一冊の本を手に取った。そして、その本を胸に抱きしめながら、ベッドにふわりと飛び込んだ。「優しい一日の終わりには、絵本がぴったりなのよね」とウサギは微笑みながら、手の中の本を見つめた。ふと、もうすぐハロウィンだというこ
2024年10月13日 06:22
その日、カメは図書館の閲覧席で、いつも通り穏やかに本のページをめくっていた。ふと、視線を上げると、ウサギが肩を落とし、足取り重く歩いてくるのが見えた。「今日はいろいろあったの。もう、異世界にでも飛び込みたい気分よ」彼女は小さくため息をつき、隣の席にドサッと座り込んだ。カメはページをめくる手を止め、一冊の本を取り出した。それをそっとウサギの前に滑らせながら、「異世界に行くのもいいかもね」と、
2024年9月10日 06:09
薄い雲が広がり、気持ちが少ししっとりしている昼下がり、ウサギは本棚から一冊の絵本を取り出した。久しぶりに手にした感触に微笑みながら、表紙を細い指でなぞりつつ、ゆっくりとページをめくり始めた。絵本といっても、それは、白いページに黒い線で「まる」が描かれているだけのシンプルなものだった。しかし、よく見ると、その「まる」には目があり、体には隙間が空いている。「まる」である「ぼく」は、その隙間を埋