見出し画像

おばけのジョージー

「今日も一日、よく頑張ったわね」
ウサギは小さなあくびをした。時計の針は午後十時を指し、彼女の目も少しずつ重くなっている。ベッドに向かう前に、小さな本棚の前で立ち止まると、何気なく一冊の本を手に取った。そして、その本を胸に抱きしめながら、ベッドにふわりと飛び込んだ。

「優しい一日の終わりには、絵本がぴったりなのよね」とウサギは微笑みながら、手の中の本を見つめた。ふと、もうすぐハロウィンだということを思い出して心が躍る。今夜、彼女が手に取ったのはおばけの話。静かな夜に、ぴったりの物語だと思った。

ホイッティカー夫妻の家では、毎晩決まった時間になると、階段がみしりと音を立て、ドアがゆっくりとギーっと鳴る。それは、この家にひっそりと暮らしている、小さなおばけのジョージーの仕業だった。

ジョージーのおかげで、ホイッティカー夫人は眠る時間を知り、猫のハーマンはネズミを追いかける合図を受け取り、フクロウのオリバーは「ほーほー」と鳴く時が来たことに気づくのだった。

「おばけと一緒に暮らすなんて、ちょっと怖いけれど、猫とフクロウが一緒なら、きっと大丈夫よね…」読み始めたばかりなのに、もうすっかり物語の中に引き込まれていた。

ある日、ささやかな事件が起こった。ホイッティカーさんはふと気まぐれに、緩んだ階段に釘を打ち、ドアのちょうつがいに油を差してしまった。それ以来、階段はみしりと音を立てなくなり、ドアもギーっと鳴ることがなくなった。静かな日々が始まったのだ。

ホイッティカー夫人はいつ寝るべきか分からなくなり、猫のハーマンはネズミを追いかけるタイミングを失い、フクロウのオリバーは「ほーほー」と鳴く時間を見失ってしまった。困ったことになった。

「わたしも困ったことになったわ、続きが読みたいけど、眠くてもう読めない…」ウサギはそっと本を閉じて、灯りを消した。

夢の中では、階段はみしりと音を立て、ドアがゆっくりとギーっと鳴っていた。おばけのジョージーの家では、いつも通りの夜が、静かに始まろうとしていた。

<おばけのジョージー>
ロバート・ブライト 作・絵/光吉夏弥・訳/福音館書店

いいなと思ったら応援しよう!