深読み (1分ショートショート)
永田町にある寿司屋の、カウンター。
「例の汚職事件、いくら使った?」
隣席に座っていたスーツの男が、小声で話しているのが聞こえた。
賄賂の金、いや、保釈金についてだろうか。
すると、もうひとつ奥の席に座っていた若い男が、指をサッと2本立てた。
200万?いや、2000万?まさかの2億!?
「お客様、いかがなさいましたか。青ざめておられますが」
寿司屋の大将が、オレの前に、ウニの軍艦巻きを置いた。
「い、いや、何でもない」
すると、スーツの男が、ゆっくりとオレの方を向いた。
「私たちは、今、『お食事券』の話をしていたんです。何か、聞き間違いをされたみたいですが」
しばらくして、2人は立ち上がり、大将に言った。
「お勘定をお願いします。それから、こちらの方、かなり酔われているようだ。熱いお茶を差しあげてください」
2人が去った後。
魚へんの漢字が、ビッシリと書かれた湯呑みを、オレは見つめた。
「鮭鮫鱈鯉(酒さめたら来い)」