回帰 (1分小説)
「改名させてください」
帰省した僕は、東京で知りあった彼女と一緒に、両親に頭を下げた。
「こんな子に育つとは」
両親は猛反対。
「僕は、もう判別がつく大人だよ。それから、僕たち結婚するから、このまま実家に住んでもいいかな」
両親が顔を見合わせる。
「結婚?成人したばかりだろ」
「うん。でも、どうしても生まれ故郷に戻って彼女と結婚し、この地で子供を産んでもらいたいんだ」
何度も説得した。
そして、やっと了承を得た僕は、翌週、彼女と二人で役所へ向かった。
改名届と婚姻届を提出すると、新婚の嫁が腕を絡めてきた。
「サケって、メスは、産卵して朽ち果てるけど、オスは、またすぐ別のメスを探すんだって」
上目づかいで、こっちを見てくる。
「僕は、そんなことしないよ」
腕が痛くなってきた。
「あなたのこと、まだしばらく、イクラちゃんって呼んでいい?」