漫画みたいな毎日。「探しに行くよ、内なる花を。5」
旅の記録1~4はこちら。
在校生との座談会を終え、私たちは個別面談の順番を待っていた。
「バスや電車の時間がある方から先に面談しますね。」
職員の方が待っている見学者に声をかけてくださる。周囲を見回すと、急いで面談をしたいという様子の方がいらっしゃらないようだった。車ではあったが、帰りも渋滞にはまる可能性も否めないので、先に面談をさせていただくことにした。
部屋の中には3人ほど先生たちが各テーブルに着いていた。特に何も考えず、端から順番にと思って、入口から一番近い席につく。
長男は今日のオープンスクールのアンケートを書き終えてからと、まだやって来ないが、本人が居なくても話せる話もあるので、先に面談を始める。
今回の面談で確認しておきたかったことは、そう多くはない。
オープンスクールに参加したのは、何より本人が学校を自分の目で見て、感じることが一番の目的。
とは言え、現在、学校に行かない選択をし、日々を暮らしているので、その現状をお伝えし、高校入学には内申点というものが関係してくるので、学校に通っていないということがどの程度、この学校を受験するのに影響があるのかを確認したいと思っていた。
挨拶の後、早速本題に入る。
現在、中学2年生だが、小学校の時から、〈学校には自分の学びたいやり方がない〉といって自宅で学習する形を取っていること。現在もそのような形で、自分で計画を立てて、自宅学習をし、学校には通っていない。
内申点という観点からは、点数がつかないという状態だと思うのだが、こちらを受験する場合、内申点はどのくらい影響するのか。
面談をしてくださった先生は、〈学校には自分の学びたいやり方がない〉という言葉を私が発した時に、ほぉ・・・というような声を漏らした。それは、勝手な思い込みかもしれないが、マイナスの印象ではない気がした。
「HPにも受験での合格基準が記されていて、その通りなのですが、ペーパーテストと面談と、内申点、それぞれが占める割合があってその通りなのですが、今、教務担当がおりますので、確認してきますね!」
先生はフットワークも軽やかに、教務担当の方に確認をしにいってくださった。
「やはり、お答えした通り、HP上の割合で合否を決めることになります。ペーパーテスト、面談、身上書が占める割合の中でどの程度点数が取れるか、ということになりますね。」
私が高校のホームページを確認したときには、いわゆる内申点は影響しないようだったと記憶していた。影響するとしても当日のテストと面談の結果が大きな割合を占めていた気がする。
今まで学校に通わないという形を選択してきているが、生き物関連の施設でお世話になり、人との関わりを楽しんでいること。コミュニケーションも自発的にとることができること。基本的な生活習慣も身についており、下宿制度を利用する場合にも問題ないと思っていることなどをお伝えする。
そして、今日のオープンスクールで、学校全体の雰囲気や公開授業、座談会などで感じた生徒たちの印象について話をする。
生徒一人ひとりが自発的に考えて動いて学んでいるという印象を受けたことを伝えると、
「そうですね、基本的には何事も生徒たち発信で、私達はそれをサポートする役割だと思っています。だから、自発的に学ぼうという意識のある子どもには、沢山のことを学び受け取れる環境だと思いますが、そうでない場合はなかなか厳しい環境だとも言えると思います。」
なるほど。
私達が見学している間、先生たちは、「〇〇しなさい」という言葉を発することはなかった。
基本的に、先生たちから指示をすることはない。
だから子どもたちは〈自分で考える〉そして〈自分で動く〉。
座談会が終わった後、個人面談の前に、見学者を集め、保護者と子どもたちに向けて、先生から短いお話があった。
「今日、見学をしてみて、様々な話を聞いてみて、ちょっとでも違和感を感じたり、違うなと思う所があったら、近くの公立高校へ通うことをお勧めします。」
遠方から通うこと
下宿制度
交通の不便さ
授業の内容
学校の雰囲気
生徒たちの様子
職員の様子
なんとなく自分のイメージと違うということもあり得るだろう。
しかし、学校側として、「違和感を感じたら止めた方がいい」とハッキリ言えることに、私は好感を覚えた。
良いことばかりを並べて、入学者を募り、入学したら「思っていたのと違うな」「こんなはずではなかった」となるのは、お互いに不幸だと思うから。
良い所ばかりを見せようと取り繕うより、ずっと信用できる。
できないことを、できるというような不誠実さは信用できない。
私たちはいつだって、本当の事が知りたいのだ。
知った上で、〈じゃあ、自分はどうするか〉という選択をしていくのだから。
個人面談での先生からのお話を踏まえ、この学校は、自発的に動かなくては何も学べない場でもあるのだと感じる。
言い方を変えれば、自分で学ぶ気持ちがあれば、いくらでも学ぶことができ、受け取ることが出来るということだ。
実際に、大学進学を視野に入れて勉強している生徒には職員が補修授業を、行っているのとこと。「職員の数も潤っていますので、少人数での補修を行うこともできます。だから塾に行く必要もないみたいですね。」と先生は笑っていた。もっと学びたいと思っている生徒にとって、恵まれた環境だ。
学校は忙しい場であるのだと思うが、職員の方々に余裕が感じられる。
私達が遅刻の連絡を入れた際に対応してくださった時にも感じたのだが、人を慮るということは、自分に余裕がないと出来ないことだ。
おそらく、働く職員の方々にとっても、働きやすい職場であるのだろう。
下宿制度での食事のアレルギー対応のことなども確認し、最後に長男本人に聞きたいことは?と先生が長男に話を向けてくださる。
「公開授業を見学して、在校生から話をきいて、自分のやりたいことができる学校だなと思いました。ひとつ、質問してもいいですか?」
長男から質問?
「校則で、長髪って、大丈夫なんですか?」
校則!!長髪!!!
長男は、あたりまえのようにずっと長髪だったので、何の疑問にも思って居なかった!
「あ〜・・・男子の長髪、禁止なんです。」
だ、だ、男子の長髪禁止?!
ここへ来て、まさかのハードルが現れた。
「え〜。じゃあヤダな。」
長男がポツリと呟いたのを聞き逃さなかった。
「再来年までに、校則が変わっているといいですね!!」と、先生に笑顔で伝え、個人面談を終える。
え?まさかの男子長髪禁止の校則!?
生き物や自然環境、どれひとつとっても同じではないのに?!
それを学ぶ学校で、人間は統一を図るのか?!
女子は良くて男子は駄目ってどういうこと?
ちょっと時代錯誤じゃない?
私の脳内のヤンキーが暴れかかる。
落ち着け、脳内のヤンキー。
玄関を出ると、先程、座談会で一緒になった在校生に遭遇する。校則の事を聞くと、
「去年まで前髪は眉毛の上だったんですよ!」
ええええ!?
「でも、生徒会が頑張ってくれて、眉毛の下までOKになりました・・・」
ほほほぉ。
「男子の長髪は禁止なんですねぇ・・・」と私が話すと「なんだか校則だけ古いんです。」と、在校生は苦笑いしていた。
「入学するとしたら再来年なので、それまでに校則が変わるように頑張ってください!」と他力本願なお願いをしたにも関わらず、「頑張ります!」と答えてくれた生徒たちが可愛らしく思えた。
この夏、北海道に旅行に行きましたという生徒さんの話を聞いて、次に来道するときは是非遊びに来てね、と夫の名刺を渡して別れたのだった。
男子の長髪禁止。
う〜ん、これって攻略できるの?と色々考える。
そもそも、何故、男子だけ長髪が認められないのか。
その理由を聞く必要があるだろう。
そして、その一方で、長男が何故、髪を切りたくないのかという理由も当然問われることになる。
髪を切ってまで、入学したいのか。
髪を切らずに入学できる術を考えるのか。
まぁ、どちらでもよいし、どちらも面白い展開になりそうだ。
決めるのは本人。
親ができるのは、学びや育ちを邪魔しないことだけなのだから。
在校生が座談会の時に話してくれたことが印象的だった。
「ここは、環境として、治安もいいですが、人の治安もいいです!」
子どもたちが、安心して自発的に学べる人的環境と自然環境。
それを実際に目にし、感じることが出来た貴重な時間だった。
再来年、長男がどんな選択をするのか全くわからないが、どんな選択をしてもいいと思う。
彼の〈内なる花〉を見つける日々になるのであれば。
タイトルは、藤井風くんの「花」から。
今回の旅で、この曲が私の中に深く入り込んで来ました。何度も心を救われました。
この曲に救われたと強く感じたのは、オープンスクールで過ごした時間ではない部分で起きた出来事でした。
過去の出来事や体験の大きさや辛さに強く引き戻されそうになったとき、〈今〉に引き戻す力になってくれたのが、この〈花〉という曲でした。
そのことについては、来週金曜日に投稿予定の「虹色通り」で記事にしたいと思っています。定期購読もしくは、有料記事になってしまうのですが・・・自分の内側に潜って行きたいと思っています。
来週金曜日の続編にもお付き合いいただければ、嬉しいです。
オープンスクールの旅の記録は、今回で一旦終わります。
思いの外、長くなった旅の記録にお付き合いいただき、ありがとうございました。
誰の中にも存在する〈内なる花〉に出逢える喜びを胸に。
枯れていく
今この瞬間も
咲いている
全ては溶けていく
何が出来るのだろうか
誰を生きようかな
みんな儚い
みんな尊い
しわしわに萎れた花束
小わきに抱えて
永遠に変わらぬ輝き
探してた
僕らを信じてみた
僕らを感じてた
咲かせにいくよ
内なる花を
さりげなく
思いを込めてみる
やむを得ず
祈りを込めていく
いつまで迷うのかな
いつかは分かるよな
誰もが一人
全ては一つ
色々な姿や形に惑わされるけど
いつの日か
全てが可愛く思えるさ
わたしは何になろうか
どんな色がいいかな
探しに行くよ
内なる花を
しわしわに萎れた花束
小わきに抱えて
永遠に変わらぬ輝き
探してた
僕らを信じてみた
僕らを感じてた
咲かせにいくよ
内なる花を
探しに行くよ
内なる花を
my flower's here