漫画みたいな毎日。「夏雲を見上げながら。」
一昨日の北海道は、熱中症警戒アラートが出ていた。車の外気温計が36℃を表示したときは、流石に驚いた。昨日の最高気温は36.3℃だったとか。
観測史上初だそうだ。
学校に行っていない我が家にも、熱中症対策をして登校してくださいという旨のメールが届く。水筒と冷感タオルなどの準備をしてください、と。
東京生まれの東京育ちの私だが、この数日の暑さが堪え、「明日もこんなに暑かったらどうしよう!」とちょっと恐怖を覚えることもあったのだけれど、それは、暑い日に台所で、大量のトマトソースを作ったり、ジェノベーゼソースを作ったりしていた影響も大きかったらしい。
「台所が熱の渦みたいになってる!もう台所に立つの止めた方がいいよ!」
長男に止められて気が付いた。ダメダメな大人。
熱中症警戒アラートが発令され、今日という日をどう過ごすか?前の晩から家族で話し合った結果、「朝一番でプール、そのあとスケート!」という、涼を求めまくるプランが持ち上がった。
朝一番を目指してプールへ。小学生が夏休みを終えているので、プールは空いていて、ゆったりと水に浸かることができた。
「もう上がろうよ、と子どもたちが言うまで、どれくらい入ってるのか黙っててみようか?」と夫。
冬場は温水プールとはいえ、北海道のプールは、やはり寒い。
大抵の場合は、冬場は、直ぐに寒くなり、唇が紫になる頃に、「もう上がる~」ということが多い。夏といっても、ここは北海道。そこまで水温が高くないので、いつまでも入っていると身体は冷えてくる。
しかし、昨日は違った。
1時間過ぎても上がると言い出す気配は全く無く、水との戯れを味わっている。「気持ちいいねぇ~」と皆が水の感触を全身で味わい、外気温が36℃超えであることを忘れてしまうような快適さ。
子どもたちが「そろそろ上がる?」と聞いてきた時には、お昼時だった。きっとお腹が空いたのかもね、と夫と笑った。
プールで熱が鎮まった身体には、外の熱風もそこまで堪えることなく、
受け入れることができる感覚。
せっかくだから、どこかでランチをしようということになり、
「十割蕎麦、スープカレー、カフェのオムライス、どれがいい?」という提案に、今日は二男の希望である「蕎麦」とすることになった。
いつも行っているお蕎麦屋さんの駐車場に車を停め、さぁ、今日は何を食べようか、天ぷらもつける?盛りそば大盛り?と蕎麦の気分が盛り上がって、店内に入ろうとすると、目の前に現れたのは・・・
〈本日貸し切り〉
すっかり蕎麦を食べる気になっていた家族は意気消沈。
しかし、ここで美味しいものを食べなければ、さらに気持ちが落ち込むのが、食いしん坊家族。なんとしても美味しいランチを食べるぞ!
そんな気持ちで次に向かったのは、プールからお蕎麦屋さんの途中で見かけ、「今度、此処にも来てみようか」と話したばかりだった、高等支援高等学校が運営してるカフェ。
大きなガラス張りの窓にウッドデッキもあり、店内の様子をちらりと覗いて見た感じでは、天井も高く、広々した空間であるようだ。
高等支援学校の卒業生の方々だろうか。スタッフとして若い方が忙しく働いている。
「いらっしゃいませ!」と元気な声をかけられ、店内に案内される。
中は広いが、4人掛けのテーブルが6つくらいと、窓際にカウンター席が6席ほど。ゆとりのある配置になっている。キッチンもガラス張りになっていて、いつでも中の様子を観ることができる。キッチンも広く、立派なオーブンが設置されていた。
「すごい立派なキッチンだね!」と子どもたちも熱心に覗き込む。
羨ましいくらいにピカピカのキッチン。そのキッチンではパンも焼かれていて、お昼に合わせて焼き上がり、パンのテイクアウトもできる。飲み物やピザもテイクアウトできるようだ。飲み物は、コーヒーにはじまり、今は季節のドリンク・しそジュースもあった。
カフェで使われる野菜は生徒さんたちが農園で育てているものを中心に使っているそうで、無農薬での栽培にこだわっているのだそう。ピザのトマトソースも手作り。
ピザを乗せる木のプレートも、お皿がひとつずつ形が違うので、手作りかな?と思って見ていたパスタ皿も生徒さんたちの手作り。伝票を立ておくためのスタンドも木で手作りされていて、ひとつひとつ形が違っていた。年に何回か、マルシェがあり、お皿や木工品も販売されるらしい。
メニューの数は多くないけれど、十分楽しめる。
畑のピザ
畑のトマトソースパスタ
和風パスタ
バターチキンカレー
本日のスープ
カレーが食べたいと注文したら、残念ながら売り切れだった。
人気メニューなのかな、今度のお楽しみにしよう!
畑のピザと、トマトソースパスタ、和風パスタをそれぞれ×2で注文・・・。
これで足りるかな・・・と夫と顔を見合わせる。
注文したものが届くまで、末娘と焼き立てのパンの様子を見に行き、よい香りにつられ、バジルチーズのパンを購入。プール帰りでお腹を空かせた子どもたちの底上げを図る。他にも、アンパンやクリームパン、メロンパンにツナチクワパンなどが並んでいた。クリームパンのクリームも手作りだとか。
カフェで何より驚いたのは、価格の設定だった。
パンはどれでも1個120円。
ピザもパスタも、カレーも、一皿500円。
コーヒーは200円で、しそジュースは100円だ。
デザートのコーヒーゼリーも100円。
リーズナブルで嬉しい。
でも・・・と考える。
カフェの運営母体は高等支援学校であり、働いている卒業生や支援学校の生徒の方々が、畑の管理をしたり、木工で木のプレートを作ったり、陶芸でお皿を作ったり、カフェの清掃も業務として組み込まれているのだそうだ。
学校のHPを訪れてみたところ、学校のミッションは、「はたらくことを志す生徒を応援する学校であること」なのだそうだ。
〈働くこと〉とは、生きる上で、生活をしていくことだと思う。
生活をするには、ある程度のお金も必要になる。その手段をひとつでも多く得られるようにと、このカフェ事業が行われているのだろうなと思う。
リーズナブルな値段設定は、利用する側からしたら、とてもありがたい。
周囲には団地もあり、地域理解という点では、気軽に利用してもらい、地域での関わりが増えることも大事だということも、理解できる。地域に根ざすことは、とても必要なことになるだろう。
でも、働く側にとってはどうなのだろう?
彼らが自立できるだけの賃金を得られるのだろうか?
そんなことも頭をよぎる。
お金では得られないものを、地域に根ざすことで獲得し、それが生きていく上で彼らをしっかりと支えてくれるものになるといい。でも、お金も生活する上では欠かせない。どちらも得られるシステムとなっていくには、どうしたらいいのだろうか。
私が、保育士の学校に通って居た時の実習先のひとつが授産施設だった。
利用者の方々と一日、簡単な作業をした。ブロックの仕分けや、箱詰め、一日の賃金は驚くほど安いものであったが、利用者の方々が多くの賃金を得る事に拘っている様子も見受けられず、仕事の意味合いとは何か、生きること、生活することとは?と、毎日考える実習だったことを思い出していた。
利用者の方をお迎えにくる高齢化した親御さんの姿が、〈子どもが自立する〉とは何かを考える機会をくださった。
ふとそんなことを思い出しながら、料理が運ばれてくるのを待っていた。
注文した品々は、どれも優しい味付けで、とても美味しかった。パスタもアルデンテで私達の好みだった。ピザには野菜がぎっしりと乗っていて、嬉しい。ラストオーダーの前に、ピザを1枚追加注文し、子どもたちのお腹も満たされたようだ。
心地よいカフェは程よく冷房が効いていて、子どもたちはやや冷えてしまった様子だった。
「うわぁ!あったかい!」外に一歩出た子どもたちの第一声。
「暖房効いてるなぁ!」と夫。
車に乗り込む前に空を見上げると、入道雲。
夏らしいもくもくした真っ白な雲。
「なんか美味しそうだよね!」
食いしん坊の子どもたちは、そう言って、ケラケラと笑い声を上げていた。
今度は、人気メニューの〈畑のカレー〉を食べに訪れよう。