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雲を紡ぐ┊︎読書感想
『雲を紡ぐ』との出会い
先日、伊吹有喜さんの『雲を紡ぐ』を読みました。
とーってもぐっとくる小説だったので、皆さんにシェアしたくなりました💌
他人の目が怖い主人公が心惹かれるものと向き合いながら自立していく成長譚であり、家族の再生の物語でもあります。
親子関係に悩みを持つ人はきっとぐっとくるだろうし、心の奥を揺さぶられると思います。
小説の力を感じた作品でもありました。
伊吹さんの本を読んだことがなく、たまたま図書館で手にとったのですがすごくいい出会いでした。
なんとなく惹かれたものが自分にとっていいものであったときに豊かさを感じます。
きっとまた読みたくなる作品なので、その時は書店で購入します!
あらすじ
「分かり合えない母と娘」
壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか?
羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。
ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。
美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。
一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。
実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた――。
印象に残った言葉
「なら聞くが。責めてばかりで向上したのか?鍛えたつもりが壊れてしまった。それがお前の腹じゃないのか。大事なもののための我慢は自分を磨く。ただ、つらいだけの我慢は命が削られていくだけだ」
「『大丈夫、まだ大丈夫』。そう思いながら生きるのは苦行だ。人は苦しむために生まれてくるんじゃない。遊びをせんとや生まれけむ...…楽しむために生まれてくるはずだ。毎日を苦行のようにして暮らすこと追い詰めたら姿を消すぞ。家出で済んでよかった。少なくともこの世にはとどまっている」
「失ってから気付いても遅いんだ。追い詰められた者の視界は狭い。安全なところに手を引いてやれるのは身内だけだぞ」
「相手の言い分を聞いたら、少しは歩み寄る用意はあるのかね。それがなければ誰も何も言わない。言うだけ無駄だからだ」
「自分は逃げないから、お前も逃げるなというのは酷な話だ。置かれている状況が違う。責任を全うしなければならないときもあるが、美緒はまだ子どもだぞ。耐えて壊れるぐらいなら逃げて健やかであるほうがいい」
感想
メモした言葉は他にもいくつかあるんだけど、ぜんぶ主人公のおじいちゃんの言葉なんです。
このおじいちゃんがわたしにとって理想の大人像すぎて。
孫の家出にここまで危機感をもって子どもを守れるのってすごい。
わたしは学生時代、家にいるのが本当に辛くて、でも行く当てもなく。
人が怖くて信じられないから、付け込まれないように、裏切られないように、もう誰も信じぬように、家でも学校でも常に気を張っていた。
そんなわたしに逃げ込める先があって、小説に出てくるようなおじいちゃんが傍にいて守ってくれたらどんなに心強かっただろう?と思わずにはいられなかった。
この小説を読んで、中学生のときの命を絶とうとした日を思い出した。
今も生きている。これからも生きていきます。ありがとう。
未来に希望が持てずとも、苦しみを手放さず、しっかりと抱えながら生き永らえた過去の自分への感謝が溢れる。
強く生きている。
あの頃のわたしが願っては絶望するほど欲しくてたまらなかったものを、今のわたしは手にしていて、それをより大きなものにしていこうとしている。
それは人との繋がりや、人を信じる心、素直に生きていく姿勢。
まだ欲しいものはたくさんある。
これからも悩みや苦しみがあるだろうけど、過去のわたしが欲しかったものをどんどん獲得して、より豊かになっていく。
そして話を聞くことの大切さもあるけど、聞かないことの大切さも感じる小説でした😌