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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】

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あらゆるアートやフィクションは人に影響を与えると思います。 つまり人の心が清く安らかになる様なフィクションがあれば、良い世の中になると言えます。 どんなに下手で稚拙であろうと気に…
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2020年6月の記事一覧

【グッドプラン・フロム・イメージスペース】 「雛鳥のルール」:後編 (No.0132)

それから父鳥は1羽で2羽分の餌を取ることになりました。
これは父鳥にとって大変な苦労でした。自分の餌もロクに取れず肉体は疲労でボロボロでした。

また、兄の雛は弟の雛が父鳥の餌を貰うことに全く納得しておらず、弟の雛が餌を貰うたびに怒鳴り散らしていました。

しかし父鳥もこれ以上の苦労を背負えず、仕方なく弟の雛にやる餌はなるべく小さく見窄らしい小虫の欠片などにして兄の餌と差を作って、何とか収まるよう

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】 「雛鳥のルール」:中編 (No.0131)

 しかしまた数日後に同じ事が起きたと言い始めました。

今度もみんなの記憶に無いうえに、弟も同じようにお腹を空かせた雛ですから、流石にそうは簡単に餌を差し出せません。

ついに餌の奪い合いで兄と弟が揉めだしたのです。

親鳥達もなだめてみたり手をかけてみたものの、取り分け兄の雛の怒りは収まらず、仕方なく父鳥の餌をクチバシの短い兄の雛が貰い、母鳥の餌を足の大きな弟の雛が貰うルールを設けました。

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】「雛鳥のルール」:前編 (No.0130)

 都会の真ん中でも春を迎えたあたりから、ふと足元が点々と汚れているところを見かけるようになります。

不潔だなぁと不満げに目線を上げると、そこには手のひら程度のささやかなツバメの巣があり、それを見てからやっとさっきからチヨチヨと鳴き声が囁かれていることに気づき、道端の汚れに腹を立てていた自分の心の狭さを軽く恥じながらこのあとの天気なんぞを思いながらその場を立ち去ったりするのです。

その小さな、手

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.10 (No.0130)

後編 Part.10のつづき

 本はこの世のものや人々が思考した事などがすでにまとめられているものですが、その種になるものは「この世」に無限というほど存在しています。

新しい教師たちは子供達が自分で、どんなに幼い頃であろうと関係なく一人ひとりが「本」を書くことが出来ることを目指していました。

それはこの世を文字にすることですから、まず幼い頃には特にですが、文字を読むのではなく世界を読むことを

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】「イモが育てた心たち :後編」 (No.0126)

「カスミさん。多分これがジャガイモですよ。」

ハナコは目の前に茂っているジャガイモの葉を摘んで言いました。

ハナコさんは本当に話を聞かないなぁ、とカスミは思いました。

「ハナコさん、さっき先生がそう言ってましたよ。ここがジャガイモ畑だって。だからここに生えてるのがジャガイモなのは当たり前でしょ。」

山型に盛られた土の畝がトタン屋根のように畑全体に波を作っています。その山に少し黄色みを帯びた

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】「イモが育てた心たち :中編」 (No.0125)

 カスミは一人で農地の隅にしゃがんでいるハナコとは特別親しくはありませんでした。

しかしひと目で思わず納得出来るほど、ハナコは園内で有名だったのです。

何時も好き勝手に動き回り、人のお話に全然耳を貸さず保育士さんを困らせてばかりいる子でした。

カスミが見たところハナコは袋を持っていませんでした。

やっぱりこの子は保育士さんのお話も聞かないで遊んでいたのだな、とカスミは呆れました。

「ハナ

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】「イモが育てた心たち :前編」 (No.0124)

 とても天気が良く抜けるような青空のこの日は、都心から離れた小さな幼稚園の子供達が総出でジャガイモを掘る日です。

幼稚園から20分ほど歩いたところにある農家の老人は子供達の為に農地の一隅をジャガイモ畑にして今日まで大切に育ててきました。

ぞろぞろと保育士や父兄に連れられてやってきた子供達を、農家の老人は温かく出迎えジャガイモ畑の前まで案内し、これからの手順などをまず保育士と父兄に伝えました。

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.9 (No.0119)

後編 Part.8のつづき

しかし、こうして時代が変わり過去の研究が進むとその理由も判明しました。

世の万物は階層構造をしており、僅かなものを多くが支える事が基本になっています。

この構造自体は現在の新しい時代でも確かに変わりませんが、問題はその多くが支える存在が悪そのものであったことでした。

始めから悪を支える人達などいないはずですから、恐らくは歴史の何処かで入れ替わったり、少しずつ乗っ

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.8 (No.0118)

後編 Part.7のつづき

新しい教師たちの教育方針にとって特に大切な部分は、

「考える事が出来るようになること」

でした。

過去の時代は、考える力は殆ど誰も持ち合わせていませんでした。

ひとりひとりには極めて優れた美しい頭脳も才能も与えられていたにも関わらず、その力の使い方どころかその存在すら教えてもらえずに一生を奴隷労働で終えていく人ばかりだったのです。

過去の時代から教員として現

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.6 (No.0116)

後編 Part.5のつづき

驚くほど子供たちは愛に敏感でした。新しい教師たちもこの今の時代になってやっと人への、子供たちへの愛に気づいたのですが、それにしても気持ちを込めることが、これほど子供たちに、人々に大きな影響を与えるのかと感嘆しました。

そしてそれまで如何に愛を軽んじ冷たい心で人生を送り、子どもと接してきたのかと振り返り、かつての苦しさと真実を知った喜びで泣き崩れたのでした。

ただ、

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5 「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.5 (No.0115)

後編 Part.4のつづき

 新しい教師たちは、何か特別な事を子供たちに教えたりはしませんでした。
それはもちろん手を抜いているというわけではありませんでした。
過去の教師や学校では、正しいことであっても教えすぎていました。
教えたら出来るものという風に人の認識を非常に乱暴に解釈していたのです。
そうやって子供たちを全部同一のものとして、まるで工場のように取り扱っていました。

その残酷な扱いが

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.4 (No.0113)

後編 Part.3のつづき

 このような学習生活をたっぷりと時間をかけ、一人として置き去りにせずにじっくりと行う授業。
毎朝早くに集まり、集まった場所からすぐ目の前にある路地や公園や街路樹などを使って1日中みんなで話し合ったり探し合ったり絵を書いたり調べたりを続けていました。

今まで素通りしてきた何の変哲のない場所なのに、いざ立ち止まって調べだすと何週間かかっても切りないほど新しい発見が次々に

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】 「『ヒキガエルよりマシでしょ』 作戦」 (No.0112)

  昨日誕生日だったのに、ミントはガッカリとうなだれて空き地の土管に座っていました。
その姿を見つけた友達のミライは、心配になってミントに近づいてみると、彼は何やらヘンテコなたぬきのヌイグルミを持っていました。

「ミント、誕生日おめでとう。そのヌイグルミはひょっとして誕生日プレゼントで貰ったのかな?」
「ああミライ、全くそうだよ。」
「その調子だとそれは君が望んだものとは随分違ったみたいだね。」

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5 「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.3 (No.0110)

後編 Part.2のつづき

子どもたちはどんどんと元気になっていきました。
自然の中で身体を使って遊ぶことだけでなく、そのときに大人が教えてくれる事を何でも喜んで集中して聞き、学んでいました。
それはキャンプだけでなく、普段通ってきた学校の中や近くの公園や通学路でもそうでした。

新しい教師たちは子どもたちに何も特殊な事を教えることはしませんでした。
とにかく身近なものから教えてあげました。

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