【グッドプラン・フロム・イメージスペース】 「『ヒキガエルよりマシでしょ』 作戦」 (No.0112)


  昨日誕生日だったのに、ミントはガッカリとうなだれて空き地の土管に座っていました。
その姿を見つけた友達のミライは、心配になってミントに近づいてみると、彼は何やらヘンテコなたぬきのヌイグルミを持っていました。

「ミント、誕生日おめでとう。そのヌイグルミはひょっとして誕生日プレゼントで貰ったのかな?」
「ああミライ、全くそうだよ。」
「その調子だとそれは君が望んだものとは随分違ったみたいだね。」
「そりゃそうさ。誰がこんなヘンテコな物を欲しがるかい。でもしょうがなかったんだよ。」
「仕方なかったってどういうことさ?」
「うん、昨夜母がプレゼントをくれるときにさ、2つの袋をボクに見せたんだ。それで言うんだよ。『どっちか好きな方を選んでいいよ』って。」
「ふうん。面白いことをするんだね君の家は。」
「でも、実はボクは見ちゃったんだよ。母が準備している時に左の袋に青いネコ型ロボットのヌイグルミを入れる瞬間をさ。」
「ネコ型って、あ、あのヌイグルミ?」
「そうさ。ボクが大ッキライなやつさ。だからボクは有無を言わさず右を選んだのさ。」

そう言ってミントは手に持ったヘンテコなヌイグルミをぷらぷらとさせました。

「そうか、その結果がこのヌイグルミって訳か。可哀想にな。」
「しょんぼりだよ。あーあ、どうしてこうなっちゃったんだか。」

ミライは一緒に土管に座るなりミントに言いました。

「ミント、それは罠だったんだよ。君はまんまと引っ掛かったんだ。」
「罠って何さ?」
「君の母は始めからそのヘンテコたぬきを選ばせるつもりだったのさ。準備の姿もワザと君に見せたんだよ。そうすれば必ずこっちを選ぶからね。」
「な、何だよそれ・・・。ひどい話じゃないか。」
「そうだね。ひどい話だ。でもよくある手口だよ。『ヒキガエルよりマシでしょ』作戦っていうのさ。」
「なにそれ?聞いたこと無いよ。」
「ヒキガエルみたいにブサイクで気持ち悪いものを散々見せつけたあとでなら、たとえどんなに頭が悪くて役立たずでも人は必ず後の方を選ぶものなのさ。」
「たしかにだれだってヒキガエルみたいに頭が狂っていて野菜でも何でも食べちまう不愉快なものは選ばないけどさ。でもそれって随分露骨でバレバレじゃないか。そんな作戦が通用するのかな?」
「そうだねミント。でも残念ながらよく効いてしまうんだ。昔からずっと使われている手口だけど、スマホの時代になってもまだ効果があるんだ。手品師が未だにハトを出すように、今でも通用してしまうんだ。それが怖いんだよ。」
「それは何だか悲しい話だなあ、ってボクも昨夜引っ掛かったばかりだった!」

あはは、あはは、と2人の笑い声が空き地に響きました。


ミントは家に帰るなりミライに教わった昨夜のトリックの正体を母に突き付け、見事にヘンテコたぬきのヌイグルミを、昔から欲しかったものに交換してもらいました。


ミントが昔から欲しかったものは何か?

それは内緒ですが、少なくとも生きたヒキガエルではありませんでした。


【グッドプラン・フロム・イメージスペース】

「『ヒキガエルよりマシでしょ』 作戦」 (No.0112)


おわり

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