#小説
イタロ・カルヴィーノ「冬の夜ひとりの旅人が」
言葉の魔術師と評された、イタリアの作家、イタロ・カルヴィーノの最後の長編です。
カルヴィーノの長編は毎回趣向が凝らされているのですが、本作のそれはメタフィクションによる読書論。
こう書くとややこしく感じる方もいるかもしれませんが、彼の魅力的な語り口は難解さを感じさせません。
本作の書き出しはこうです。
<あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている
ハン・ガン『すべての、白いものたちの』
最近小説を手に取ることが少なくなっていたので、書店で表紙とタイトルが気になった、この本を読んだ。
久しぶりに“言葉”に触れたと思わせる作品だった。雪の一片一片が静かに降り積もるように、詩と小説のあわいをいく静謐で美しい断章が読者の心に降り積もっていく。もっぱら通勤と帰宅の電車の中で読んでいたのだけど、その間は喧騒から離れた澄んだ時間に浸ることができた。
静かな感動を与えてくれる傑作。