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小説あれこれ

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#ユルスナール

中村邦生編「この愛のゆくえ」ポケット・アンソロジー

これも愛 あれも愛 たぶん愛 きっと愛
(松坂慶子「愛の水中花」より)

岩波文庫別冊で「ポケットアンソロジー」として発行された2冊のうちの1つです。

「愛」というテーマは魅力的でありながらも漠然としていますが、編者の中村さんは古今東西の作品を目配りよく取り上げて、未知の作家・作品に出合う喜びと、既知の作品を新たな視点から捉えなおすことができる愉しみを読者に提供してくれています。

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マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』

マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』

ベルギー生まれではありますが、フランス文学を代表する作家の一人であるマルグリット・ユルスナール。彼女の代表作としてはフェミナ賞(フランスでもっとも権威ある文学賞のひとつ)を受賞した長編、ローマ皇帝ハドリアヌスがその半生を振り返る『ハドリアヌス帝の回想』と錬金術師ゼノンの生涯を描いた『黒の過程』があげられるでしょう。

この短編集の原題は『Nouvelle Orientales』。つまり西洋から見た

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