言葉と口の緊張
言葉と文化
ここでは文化による言葉捌きとその身体についての考察をしていきます。
言葉の捌き方は言語が違うので国によってそれぞれです。
もちろん同じ言語であっても個人によっても違いますが…
アニメなどを見ていると言葉に対する国の違いがよく分かります。
リップシンクという技法があります。
リップシンク
リップシンク(Lip Synchronization)とはアニメなどでキャラクターの口の動きとセリフを合わせるということです。
日本のアニメでは口の動きは3パターンが普通だそうです。
有名なアニメ映画である大友克洋監督の【AKIRA】(1988年公開)ではかなり精密なリップシンクで作られています。
「AKIRA」を観たことがある方は分かると思いますが1980年代の日本のアニメとは思えないクオリティですね。前述した通り日本のアニメでは大体3つの口の大きさで言葉を喋らせますが「AKIRA」ではかなり精密に口が動いています。
海外のアニメの場合は製作段階の絵コンテに母音が書かれているそうでその指定母音の口で書くそうです。岡田斗司夫氏の36:00~にリップシンク等について話しています。
https://www.youtube.com/watch?v=N0D4M3EnFhc
海外の場合、事前に声優がレコーディングをしてからそのセリフに合わせて作画する場合が多いそうです。
現実では確かに日本語でもそれなりに口は動きます。しかしアニメになった途端に日本語の場合は精密なリップシンクが逆に邪魔をしてしまう場合があります。不自然に見えてしまう。
というか見ている日本人が勝手に違和感を抱いてしまう場合が多いんです。
日本語を喋る時に口がそんなに動いていない、というわけではありません。
不自然に感じるのは個人的な見解かもしれませんが。。。
それは(観る方として)日本人が口に重点を置いていないということになると思います。
マスクと口
マスクの有無や有効性など色々と議論されています。その中で「欧米人はあまりマスクをしない」ということがよく話題に上がります。
欧米人にとって無意識的に口の動きが重要な役割を果たしているんです。なので口元が見えないマスクなどを無意識的に嫌がるんですね。
「目は口程に物を言う」と言いますが日本人にとって目はとても大事なんです。そして実は欧米人からすると目はそんなに重要ではないんです。
同音異語と表現
前述の岡田斗司夫さんも言っていますが日本語には同音異語が非常にたくさんあります。同じの発音ですが違う意味の言葉ですね。
「こうしょう」という単語は合計48個あるそうです。(「交渉」「考証」「公証」「校章」など…)
なので日本人は「言葉そのもの」よりも「言葉の内容」に知らずと意識が行くのだと思います。言葉ではなくその言葉の前後(文脈)が大事ということです。
故に日本人の表情が分からない、表情が乏しいと言われるのは「言葉」自体が重要ではなく「内容」を感じ取るからです。言葉に意味がない…とまでは言いませんが。。
少し話は逸れるかもしれませんが…
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」 2021年11月24日(水)の放送で池田清彦氏が「幼少期から漢字とルビの構造に慣れており漫画を受け入れやすい」という旨の発言をされていました。
漢字とは形自体に意味があります。知らないうちに頭の中に「漢字の意味」を思い浮かべます。文字を見ただけで勝手に意味や内容を想像するんですね。
【カリオストロの城】に見る言葉の違い
では言葉ではなく内容が大事とはどういうことでしょう?
宮崎駿監督の【ルパン三世 カリオストロの城】(1979年公開)で次のようなシーンがあります。開始から10:30位のシーンでクラリスが気を失ったルパンの側から離れるシーンです。
クラリスは一言「ごめんなさい」と言いその場を離れます。
日本語では「ごめんなさい」の一言で済むのですが、、、
英語版では「I'm so sorry. I can't stay here.」となっています。
「I'm so sorry.(ごめんなさい)」の後に「I can't stay here.(ここにいることができません。)」とわざわざ気絶しているルパンに言うんです。
イタリア語版は「Mi dispiace. devo andare.」となっています。
「Mi dispiace.(ごめんなさい)」の後に「devo andare.(行かなければなりません。)」ともっとストレートな言い回しを採用しています。
本来たった5文字の中にこれだけ詰め込むのもすごいですね。どちらにしても自分の状況を「説明」するんです。日本人からしたら回りくどい(日本語の方が回りくどいのか…)かもしれませんがそういう文化とも言えます。
日本語は一言「ごめんなさい」と言ってその後の動作(仕草)があれば状況判断として「いちいち説明しないでも当然分かるよね。」ということが前提として言葉の中に含まれているんです。
しかし欧米の場合は言わないと分からない。
I love you
あと有名なのは『日本人は「愛している(I love you)」とあまり言わない』ともよく言われます。それも言葉での表現が足りないということです。
しかし感覚として「好きなんだから付き合ってるんだよ。」「愛してるから結婚したんだよ。」というのが前提にあるんですね。
なので日本人(日本語)の裏には「そんなに言わなくても(表現しなくても)相手が汲み取ってくれる」という思考があるんだと思います。だから「空気を読む」や「忖度」という人の気持ちを受け手側が察するということにもなるような気がします。
言葉そのものに意味を持たせるのか?
その前後を含めて意味を持たせるのか?
目的によって違ってきますがそういう違いがあるということは分かっていた方が体は楽になります。
表現しないことが表現~クレショフ効果~
基本的に日本人には「相手の思いを汲み取る」ことが大事になってきます。
読み取る力、汲み取る力とは何なのか?
「クレショフ効果」というものがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=ZwMRtWNEQRo&t=40s
なので実は表情が感情を生むのではなく見ている方が勝手に想像しているんです。日本人は無表情を美徳とする考えがあります。感情を表に出さないとい事です。
市川海老蔵さんとその息子、勸玄君のTIGERのCMで「<炊きたて>CM 土鍋神話「親子」篇(15秒)」での最後。
https://www.youtube.com/watch?v=eFwSvgEEsXc
最後に無表情な二人がいます。でもその前に美味しそうにご飯を食べているシーンがあるんです。それを踏まえた上でこちらが勝手に感情を憶測するんです。
能面もそれぞれの役割があるにせよ表情自体は変わりません。こちらが動きや台詞からその人の感情を想像しないといけないんです。
役者が無表情だったとしても見ている方がシーンに応じて勝手に想像してしまう。そういう「頭で考える感情のほうが面白い」ということを能面でも見られるように昔の日本人は知っていたのかもしれません。
身分が高い者は表現しない
武士は感情をあまり表には出さないことが良しとされました。
1860年に遣米使節団が渡米しましたがその時の様子をウォルト・ホイットマンという詩人が上記のように書き残しています。
この「表情一つかえずに」というのがアメリカ人から見たら奇妙だったのでしょう。その当時のマンハッタンは下記のような様子です。
日本とは全く違い高い建物や多くの物で溢れています。しかし日本とは全く違う文化を目の当たりにしても表情を変えない、これを表現しないことが良いとされている。
感情を表にあまり出さないことは日本独特だと思われていますが意外とそうでもないようです。
映画【ハリー・ポッター 秘密の部屋】で主人公ハリーのライバルであるドラコ・マルフォイは感情をむき出しにしてハリーに突っかかります。そこにドラコの父親のルシウス・マルフォイが表れ、息子ドラコのその態度を叱ります。
岡田斗司夫氏曰く
下記の表がイギリスの階級です。
他にもイギリスには例があります。
2016年2月21日放送【ダウントン・アビー 知られざる貴族の作法】(NHK総合)はイギリス貴族の話です。
感情を出さない方が美徳というのは歴史の長い国では割と見られる現象なのかもしれません。
違いを知る
まずはそういう文化の違いを知ることが大事です。
そして何だかんだで欧米の物に溢れてしまっている状況を克服するには細かな日常生活のバランスの修正をしていかないといけないんです。
口の緊張感、使い方は呼吸の量に関係します。これはパフォーマンスにも直結します。もちろん日常生活にも影響を与えます。
目指すべき終着点にもよって違ってきます。なのでこの文化の差、姿勢の差というものを見極める事がとても大事な出発地点なんだと思います。
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