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[TechGALA イベントレポート]AIと人間の共生による幸福の追求


AI技術の進化が人間の生活や仕事にどのように寄与し、共生することで幸福を追求できるかを探る。倫理的課題や社会的影響を考察し、AIと人間の協働による新たな価値創造の可能性を議論する


登壇者

砂金信一郎
Gen-AX株式会社 代表取締役社長 CEO
生成AIに特化したB2B SaaSと業務変革コンサルティングを提供するソフトバンクの100%子会社Gen-AXの代表を務める。業務知識や接遇の高度なチューニングが必要な、カスタマーサポートや照会応答業務の効率化・自動化を、自律エージェントやLLM Opsなどの技術で実現する。東京工業大学卒業後、日本オラクル、ローランド・ベルガー、マイクロソフトでのエバンジェリスト、LINEでのAIカンパニーCEOなどを経て現職。デジタル庁にてインダストリアルユニット長を兼任。

國本知里
Cynthialy株式会社 代表取締役
SAP、AIスタートアップ等で事業開発に従事後、AI特化のエージェント会社を創業。その後、生成AIの社会実装を加速するために、Cynthialyを創業。企業向けの生成AI人材育成「AI Performer」、AI Transformation(AIX)事業を展開。女性AI推進リーダーコミュニティ「Women AI Initiative」創設。生成AI活用普及協会 協議員等、生成AIの普及に取り組む。


相良美織
株式会社バオバブ 代表取締役社長
バオバブは2010年創業以来、AI向け学習データ構築サービスを、Carnegie Mellon University、NTT、Googleなど日本/海外の法人・研究機関に提供。2022年 「スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版03 科学技術とインクルージョン」に「誰もがその人らしく働ける就業環境の社会価値 」共著論文掲載。2024年 Forbes JAPAN 「テクノロジー領域で世界を変える女性30人」受賞

はじめに

2025年、AIテクノロジーの急速な進化は私たちの生活や働き方に大きな変革をもたらしている。その中で、AIと人間がどのように共生し、新たな価値を創造していけるのか。この問いに対する示唆に富んだディスカッションが、「AIと人間の共生に向けた幸福の追求」と題されたパネルセッションで展開された。

登壇者には、Gen-AX株式会社代表取締役社長CEOの砂金信一郎氏、Cynthialy株式会社代表取締役の國本知里氏、そして株式会社バオバブ代表取締役社長の相良美織氏という、それぞれの分野でAIの社会実装に取り組む第一人者が集まった。

AIがもたらす社会変革

「ChatGPTの登場は、まさにパンドラの箱が開いたような衝撃でした」と相良氏は語る。2022年11月のChatGPT登場以降、AIと人間のコミュニケーションの形は劇的に変化した。それまでのAIシステムは、事前に整理された要件に基づいて一方的に実行するものだったが、ChatGPTは人間との対話を通じて目的を達成していく。

砂金氏は、この変化をクラウドコンピューティングの登場と比較する。「クラウドはIT業界の仕事のあり方を変えましたが、それは業界内の話でした。しかし、ChatGPTの影響は生活全般に及び、家庭での子育ての悩み相談から、少年野球の指導者による保護者向け文書作成まで、あらゆる場面で活用されています」

働き方の変革とダイバーシティ

特に注目すべきは、AIが働き方の多様性を促進している点だ。國本氏は、女性の働き方における変化を指摘する。「これまで8時間かかっていた仕事が10分で終わるようになることで、フルタイムでなくても同等の価値を生み出せるようになっています。結婚や育児で諦めていた仕事に再チャレンジできる可能性が広がっているのです」

また、相良氏が率いるバオバブでは、AIの学習データを作成するアノテーション業務で、自閉症や発達障害を持つ方々の特性を活かした雇用を実現している。「これは福祉的な発想ではなく、彼らの能力とアノテーション業務が非常に相性が良いからです」と相良氏は説明する。さらに、ウクライナやシリア、アフガニスタンからの難民に対しても、アノテーションリーダープログラムを提供し、将来的な自立支援にも取り組んでいる。

AIと人間の協働における課題

しかし、AIの導入が必ずしも理想的な結果をもたらすとは限らない。砂金氏は、コールセンター業務のAI化を例に挙げ、その課題を指摘する。「効率化だけを追求すると、人間同士のコミュニケーションから得られる価値が失われてしまう可能性があります。特に高齢者にとって、コールセンターとの会話自体が重要なコミュニケーションの機会となっているケースもあります」

データの品質に関しても重要な指摘があった。「ゴミデータからはゴミモデルしかできない」と相良氏は強調する。ChatGPTの登場以降、データの品質への要求はさらに高まっており、それを支える人材の育成も急務となっている。

教育と人材育成の新しい形

AIの進化は、教育のあり方にも根本的な変革を迫っている。砂金氏は自身の高校時代を振り返りながら、「数学と物理とプログラミングだけでなく、哲学や倫理学といったリベラルアーツの重要性」を指摘する。AIが簡単に答えを導き出せる時代だからこそ、「正解のない問題に対してどう向き合うか」という能力が重要になってきているのだ。

國本氏は、生成AI時代の人材育成に関して具体的な取り組みを展開している。「東京都と連携して、プログラミングの経験がなくても女性が事業を立ち上げられるような育成プログラムを提供しています。生成AIを活用すれば、これまでテクニカルな壁で諦めていた方々も、自分のアイデアを形にできるようになるのです」

人間らしさの再定義

討論の中で繰り返し浮上したのは、「人間にしかできないことは何か」という問いだ。相良氏は「感情を持つこと、五感で感じること、命の尊さを理解することなど」を挙げる。しかし、より重要なのは、それらの能力をAIとどう組み合わせ、新しい価値を生み出していくかという視点だ。

「AIを単なる効率化のツールとして見るのではなく、AIとの協働を通じて幸福を感じられる可能性を探るべきです」と國本氏は提言する。実際に、AIとのコミュニケーションを通じて、利用者の80%が「自分の生き方に良い変化があった」と回答した例も報告されている。

これからの展望:共生への道

パネリストたちは、AIと人間の共生に向けた展望について、慎重かつ希望に満ちた見方を示した。「日本人は、AIを敵対的な存在としてではなく、同じ目線で対話できる存在として受け入れやすい文化を持っている」と砂金氏は指摘する。

しかし、その実現には地道な取り組みが必要だ。相良氏は「AIの研究者たちは、もっと心理学や哲学など、人間に即した学問分野との連携を深めるべき」と提言する。技術の発展と人間の幸福をいかに両立させるか、その答えは、分野を超えた対話の中から生まれてくるのかもしれない。

おわりに

本セッションは、AIと人間の共生という壮大なテーマに対して、技術的な側面だけでなく、人間の幸福や社会のあり方という観点から深い考察を行った。そこから見えてきたのは、AIは単なる効率化のツールではなく、人間社会に新たな可能性をもたらす存在だという視点である。

重要なのは、その可能性を追求する過程で、人間の幸福とは何かを常に問い続けることだ。テクノロジーの進化が加速する中で、この問いかけはますます重要性を増していくだろう。AIと人間が真の意味で共生できる社会の実現に向けて、私たちはまだ歩み始めたばかりなのかもしれない。

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