個人的「本屋大賞」部門賞!お仕事小説編(本屋大賞アレコレ③)
HONYA AWARD Ⅲ
さて、「2021年本屋大賞」に向けて、過去の「本屋大賞」を振り返っています。今回は、これまでの大賞17作品から個人的な大賞を決定しようと思っていたのですが、なかなか絞れないんですよね~、実は....
「本屋大賞」はジャンルが幅広いので、タイプを絞って、部門ごとに考えてみようと思います。
今回は、お仕事小説って感じの作品について "note" してみようと思います。
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まずは、過去の大賞作品。
この中から、お仕事小説を感じさせる作品を、受賞年順にノミネートしていきたいと思います。
冲方丁さんの「天地明察」
まず、紹介するのが、実在の数学者”渋川春海”を主人公とした歴史ロマンである本書です。
描かれているのは、徳川四代将軍家綱の時代、当時の一大事業 ”暦の改編” なのです。暦の改編って、その国のすべての基準が変わるという事ですから、ものすごい重圧がある中、成し遂げようとする主人公の熱い思いが伝わってくる作品なのです。
三浦しをんさんの『舟を編む』
一見してタイトルの意味はわからないのですが、実は、新しい辞書を編纂するお話です。
定年間近の編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性などなど、個性的な面々と一緒に、主人公が辞書を編んでいく物語なのです。
百田尚樹さんの『海賊とよばれた男』
この本は、実在のモデルさんのいる実録系の作品なのです。戦前、戦後の時代を背景に、石油業に邁進するのが主人公なんですが、人情もありながら型破り、仕事にかける情熱も半端ではないのです。
現代だと、やや暑苦しい感じの社風だったりするのですが、この時代だと熱い!、やっぱり時代ですね~。
上橋菜穂子さんの『鹿の王』
おやっと思う人もいるかもしれません。
この本はハイ・ファンタジー世界の物語なのですが、主題のひとつに黒狼熱という疫病の治療に奔走する医術師の物語があって、そこがとても興味深いんですよね。疫病の原因究明、そして特効薬の製作と、このコロナ禍の現代と重なる部分があるのです。
さて、最後は
宮下奈都さんの『羊と鋼の森』
このタイトルを見た時に、何を表しているのか、すぐに理解できる人は少ないと思うのですが、これが、ピアノの調律師が主役の物語だと分かってくると、急にタイトルが秀逸なものに思えてくるんですよね。
静かだけど、AIなんかでなし得ない仕事なんですよね。
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以上、5作の大賞作品をノミネートしてみたのですがどうでしょう。
どの作品も、仕事に対する情熱があって、なんか自分の仕事に対する矜持にもつながっていく作品なんです。
ただ、個人的な好みで部門大賞を選ぶなら、辞書という、皆が知っている本の裏側を描いた『舟を編む』にしたいと思います。
個人的な”お仕事小説”大賞は、三浦しをんさんの『舟を編む』✨
三浦しをんさんは、『仏果を得ず』とか、『神去なあなあ日常』とか、数々のお仕事小説を発表しているのですが、この本は格別のお仕事小説だと思います。
「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく。」
という言葉を聞いて、初めてタイトルの意味が分かるというところも良かったですね。1冊の辞書の編纂作業を知ることも興味深かったし、その行程を通して、言葉ひとつひとつの大切さも教えてくれたような気がしたのです。
「本屋大賞」は映像化作品が多いのですが、今回ノミネートした作品も全部映画化されています。(『鹿の王』は2021年公開予定)
この『舟を編む』も、2013年に、松田龍平さんの主演で映画化されています。
まあ、辞書の話が中心で地味な事この上ないんで、恋愛要素が強くなってる感じもするんですが、松田龍平さんは主人公の人物像にぴったりでした。
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