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#蛙噺

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今まで書いた小噺をまとめたものになります。
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記事一覧

お金と、僕と、色々。

僕と、お父さんと、お金僕が5歳の頃、お父さんが言いました。 「お金はばっちいから触るな」…

数の話

例えば僕が数を数えるとしよう。 1、2、3、4、5という具合にね。 そのとき、僕は間違え…

apagador.1

マスキングテープ友達整理致しましょう。 いらない人から、マスキングテープで目隠しのほうさ…

apagador.2

消しゴム消しゴムってすぐ無くしてしまうから嫌いなの。 だから、文字を消す時は黒い煙を書い…

口紅1

桜色の口紅おかあさまからもらったきれいなくちべに。 あか、きいろ、みどり、むらさき、そし…

口紅2

緑の口紅姉さまの口紅がピンクから赤に変わったのはいつからだっただろう。 私が姉さまに欲情…

口紅3

紫の口紅「叔父様は紫の口紅がよくお似合いだ」 私は姉さまとお母様によく似た青年に恋をした。 お父様はそれを知らない。 「紫が似合う人は訳ありなのをご存知?」 おつむが少々緩い彼は子猫のように首を傾げた。 なんてお馬鹿な人。 蛭のように膨れた彼の唇は、柔らかく、弾力があり、そして初々しい。 私は、彼の唇がとても気に入っている。 桜がとても綺麗な春だった。 行方不明だった姉さまは水死体として見つかった。 死んだ姉さまはどんな姉さまよりも美しかった。 赤い口紅

書く事が好きだった二人が書く事をやめてしまったお話。1

あるところに物語を書く事が好きな少女がいた。 少女はいつも不機嫌だった。 眉間に皺を寄せ…

書く事が好きだった二人が書く事をやめてしまったお話。2

あるところに物語を書く事が好きな少年がいた。 少年はいつも無気力だった。 口をぽかんと開…

書く事が好きだった二人が書く事をやめてしまったお話。3

少女は少年の話を私から聞き、是非お話を読んでみたいと言いました。 少年は少女の話を私から…

書く事が好きだった二人が書く事をやめてしまったお話。4

あの日から、彼らが私のもとに来る日数が減りました。 来たとしても、以前のように物語を披露…

ハローグッバイ-Hello,hello-

彼女は「私の夢は宇宙人になることなんだ」と、僕に言った。 彼女はわらべうたが好きで、よく…

たべてもいいの?

「ごはんよ」 緑色の肌に黄色の目を持つ白い髪の女が言いました。 恰幅の良いその体から発せ…

恋をした実験マウス(グロテスクな描写を含みます)

「恋をすると世界が変わる」と、誰かが言っていた。 僕はその言葉を肯定する。 彼女と初めて会ったあの日、生まれ変わった僕の世界は冷たく、そして僕に優しくない世界だった。 僕の中に予め内蔵されていた運命がギリギリと嫌な音を立てた。 警告音だった。僕には戻るという選択肢があった。 だけど、僕はそれを選ばず、破って捨てた。 びりびりになった紙が僕に問いかけた。 「後悔はしないか?」 僕は答えた。 「もちろん」 紙は返事をしなかった。 ただの紙切れになり、冷たい世界の一部と