書く事が好きだった二人が書く事をやめてしまったお話。1

あるところに物語を書く事が好きな少女がいた。

少女はいつも不機嫌だった。

眉間に皺を寄せ、「どうせ私なんか」が口癖だった。

少女の書くお話は常に人が死んだ。

世界が滅びることも多かった。

彼女は言った。

「私の書く物語で人が死んでも誰も悲しまない」

「人を殺しても誰も怒らないの」

彼女の書いた物語に出てくる登場人物には名前がなかった。

そのかわり、アルファベットが当てはめられた。

Aさん、Bさんという具合だ。

「登場人物に愛を注ぐ気なんてこれっぽっちもないわ」

「だって、彼らは死ぬために作られたんだもの」

彼女の作ったお話に救いなどなかった。

最後に残るのは無数の死体と、それを笑う主人公だけだった。

彼女は自分の書いた作品が好きだった。

「嫌なことがあったときは必ず読むようにしてるの」

そう話す少女はとても楽しそうであった。

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