口紅3
紫の口紅
「叔父様は紫の口紅がよくお似合いだ」
私は姉さまとお母様によく似た青年に恋をした。
お父様はそれを知らない。
「紫が似合う人は訳ありなのをご存知?」
おつむが少々緩い彼は子猫のように首を傾げた。
なんてお馬鹿な人。
蛭のように膨れた彼の唇は、柔らかく、弾力があり、そして初々しい。
私は、彼の唇がとても気に入っている。
桜がとても綺麗な春だった。
行方不明だった姉さまは水死体として見つかった。
死んだ姉さまはどんな姉さまよりも美しかった。
赤い口紅をつけ、私に迫ってきたあの姉さまよりずっとずっと。
私は姉さまに二度目の恋をしたのかもしれない。
彼の唇はそのとき咲いていた桜の花の色によく似ている。