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イライラしやすい慢性ストレスと「腹側迷走神経系」との関係とは❓【これからの免疫力を高める習慣34】

日頃のストレスを少しでも減らすことで、免疫力を高める生き方、始めてみませんか?

これからの免疫力を高める習慣

前回はストレスで「イライラしやすい」と「発達性トラウマ」との関係について述べました。

発達性トラウマによる生きづらさや慢性的なストレスによる体調不良、そして免疫力の低下を少しずつ解消していくためには、「腹側迷走神経系」の存在、そして「安心安全」が鍵となると考えられるのです。

ところで、自律神経には交感神経と副交感神経があり、リラックスするためには、ゆっくりと呼吸したりよく笑ったりするなどして、副交感神経の方を優位にすることが大切であるとよく言われています。

しかしこの副交感神経には、ポリヴェーガル理論の提唱者であるステファン・ポージェス博士によれば、進化上古い「背側迷走神経系」と進化上新しい「腹側迷走神経系」の二種類があるというのです。

一般的には、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキの役割を果たしており、危険や脅威に直面した場合は「戦うか逃げるか」というストレス反応が起き、その時は交感神経系が優位になるとされています。

しかし恐怖体験をすると「背筋が凍る」などと言いますが、交感神経よりも先に、リラックスだけではなく急ブレーキのような働きもする「背側迷走神経系」が生き物には備わっていると言います(1)。

花丘ちぐさ氏はこのことについて以下のように分かりやすく説明しています。

生き物は、始めは、あまりたくさんの酸素を使わなくてもよく、困ったときは死んだふりをしてやり過ごすという、不器用な神経系である背側迷走神経系を発達させました。次に、素早く逃げたり戦ったりして身を守ることができるように、交感神経系を発達させました。最後に、哺乳類が出現してから、周りにいる仲間とうまく協力し、お互いに気持ちよく幸せに暮らしていくために、攻撃的な交感神経系を調整し、人とうまくやっていくことができるという役割を持っている腹側迷走神経を発達させました。

花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』 71‐72頁
花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』

◎交感神経系・・・「戦うか逃げるか

◎副交感神経系
・背側迷走神経系・・・「凍りつきシャットダウン
・腹側迷走神経系・・・「心身のバランスがとれている」「社会交流できる

(参考 花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』 81頁)


ちなみに進化の順としては、

背側迷走神経系」(「生命の危機」) → 「交感神経系」(「危険」) → 「腹側迷走神経系」(「安全」)

となるのですが、人間の場合、危険にさらされたときには、先に「一番新しくできた腹側迷走神経系を使って、話し合いや社会的な解決で危険を回避しよう」とするといいます。


このことについて花丘ちぐさ氏は、『その生きづらさ、発達性トラウマ?』のなかで以下のように言及しています。

(略)ポリヴェーガル理論のなかで、ポージェス博士は興味深いことを言っています。私たちが危険に瀕したときは、私たちは進化とは逆向きに反応していくというのです。つまり、危険にさらされたときにまず人間は、一番新しくできた腹側迷走神経系を使って、話し合いや社会的な解決で危険を回避しようとします。それがうまくいかないと、次に交感神経系を使って戦うか逃げるかという反応をします。しかし、相手が強すぎたり、あるいは攻撃が突然であったりしたときには、対処することができません。そこで最終的に、進化のなかでは一番古い背側迷走神経系を使って「凍りつく」というわけです。

花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』 79頁


また、

 腹側迷走神経系は、いわゆる空気を読むための神経系でもあります。相手のちょっとした表情やしぐさや声の調子などから相手がどのように感じているのか、そして自分がどのような態度を示したらよいのかを判断するのです・これは、人と暮らしていくためにとても大切なスキルです。

とも述べています。

つまり哺乳類は、「周りにいる仲間とうまく協力し、お互いに気持ちよく幸せに暮らしていくために、攻撃的な交感神経系を調整し、人とうまくやっていくことができるという役割を持っている腹側迷走神経を発達」させ、また、「腹側迷走神経系は、お互いに「安全である」という「合図」を出し合うように」働くといいます。

 腹側迷走神経系は、お互いに「安全である」という「合図」を出し合うように働きますし、また、「安全である」と感じるときに、さらに活発に働くようになります。安全と絆は、哺乳類が健康を維持しながら生きていくために絶対に必要なもので、腹側迷走神経系は、「安全と絆」の神経系と言っても過言ではありません。

花丘ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?』 72頁


そのため、もし不適切養育などが理由で「腹側迷走神経系」がうまく発達していないと、「人間関係が苦手」など、社会交流が難しくなるというのです。

しかしだからといってそのことを悲観する必要はなく、(時間はかかりますが)「運動」や「あそび」など、様々な習慣やワークによって少しずつ神経系を調整し、「安心安全」の感覚を高めることで以前よりも健やかにしていくことは可能なのです。

次回へと続きます😊

『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント

注釈

1 『その生きづらさ、発達性トラウマ? ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』 花丘ちぐさ 著 春秋社

進化からいって一番古くから備わっている神経系は副交感神経の一部である背側迷走神経系で、消化やリラックスを司っています。この神経系はマイルドに働いているときは消化やリラックスを行いますが、危機に瀕したときは急ブレーキをかけるように呼吸や心臓の働きを遅くし、〈凍りつき〉やシャットダウンを引き起こします。次に発達していったのが交感神経で、活動を司っています。戦うか逃げるかの反応をするための神経でもあります。危険な肉食獣に襲われたときは逃げること、おいしそうな獲物がいるときは、力を出して仕留めることなど、栄養価の高い食べ物を得て、生き残るためにも、交感神経はとても大切でした。最後に、哺乳類だけに発達していったのが副交感神経のもう一つの枝である腹側迷走神経系です。この腹側迷走神経系は、仲間とつながり、安全に気持ちよく暮らしていくためのものです。

71頁


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塩川水秋
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