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[本・レビュー] モモ
モモ ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳
児童文学としてはもちろん、ビジネス書ですら名著として紹介されることの多い本書。
ようやく読んでみました。
『星のおうじさま』しかり、『エルマー』しかり、本書しかり。
優れた児童文学を読み終わった後にいつも思うのは、『自分が幼い頃にこの本を読んでいたら、一体どんなことを考えていたのだろう。そして、それは今とどう違うのだろう』ということです。
おそらく、
『自分も、モモみたいな友だちが欲しいと思いました』
だとか
『時間どろぼうがとても怖かったです。時間どろぼうが来ても、自分はモモみたいに立派に戦える自信がありません』
といった、『ぱっとしない、ひどい小学生の感想文そのもの』程度の感想しか述べられなかったのだろうと考えます。
そうであったとすれば、こういった優れた児童文学を読んで育っていたら、自分の考え方やこのレビューは一体どう変わっていたのだろうと、つい考えてしまいます。
本書は、個人的にはやや暗い作風を感じるのですが、エンデの作風そのもの、および訳の素晴らしさが相まって、とても美しく、壮大かつ幻想的な風景が頭に浮かんできます。
聞き上手な主人公の『モモ』、人間をだまして時間を奪っていく『時間どろぼう』、『時間どろぼうにだまされて時間をどんどん奪われていながら、その不自由さに疑問を抱けない大人たち』を通して、エンデの人生哲学が透けて見えてきます。
人生にとって『大切なもの』、『無駄なもの』とは一体なんでしょう。
私にとっての『幸せ』『人生の目的とすべきもの』とはなんでしょう。
ふと立ち止まって、こういうところを意識することなく、なんとなくで『幸せ』や『人生の目的』をひたすらに追い続けてしまうと、本来『幸せ』や『人生の目的』となりえたものまで、『無駄なもの』として切り捨ててしまうことになるのかもしれません。
高級な衣服や車、時計、豪華な住居、贅沢な食事。そういったものに価値や意味を見出せる人もいれば、家族、友人、趣味、心のゆとりに人生の価値を感じる人もいることでしょう。
無用の争いを避け、自分にとっての『人生の意味』を見出すために必要な第一歩は、モモの持つ『あいての話を聞く』力なのではないでしょうか。
お子さんはもちろん、大人にもおススメの一冊です。