海のような、優しい人。
…お母さんは、
……かいくんが一番大好きだよ……
泣いていた。
起きたら涙が出ていた。
……またあの夢か…
毎年、
この季節になると、
必ず、見る夢がある。
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サー… ザブーン… サー… ザブーン…
海のおとが聞こえる。
赤い太陽が、海にしずんでいく。
空はオレンジ色で、すごいきれい。
…砂の上は、歩きにくい。
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《今日は、学校がお休みだったし、
お母さんもお休みだったので
お買いものに行きました。
お母さんもぼくも、服を買いました。
お母さんは青のワンピースで、
ぼくはミッキーの服を買ってくれました。
あと、かめんライダーのぬりえも
買ってくれました。うれしかったです。
お買いもののつぎは、
お母さんと海に行きました。
お母さんと手をつないで歩きました。
お母さんといっしょにお話できて、
うれしかったです。
帰るときにお母さんが、
「かいくんが一番大好きだよ」
って言ってくれました。
すごくすごくうれしかったです。》
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…母は中学三年の時、亡くなった。
母子家庭だったから、
僕を育てる為に、無理してたんだろう。
…だから、体を壊したんだ。
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亡くなる前の日、夕方。
母が言ってくれた。
「かいくんが一番大好きだよ。」
……あの時
海で言ってくれた時と同じ、
優しくて、あたたかい声だった。
_____僕もいつか、
自分の大切な人に、
……いや、
自分よりも大切な人に、
「一番大好きだよ。」
って、言える人になりたいと、
………そう、思った。
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