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鶴見俊輔『思想をつむぐ人たち 鶴見俊輔コレクション1』

鶴見俊輔『思想をつむぐ人たち 鶴見俊輔コレクション1』

鶴見俊輔を読む。今の若者たちのどれくらいが知っているのだろうか。

生涯と思想の背景

鶴見俊輔はアメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジで生まれ、父親は外交官の鶴見祐輔、母親は鶴見和子です。彼は幼少期をアメリカで過ごし、英語と日本語の両方に堪能。その後、ハーバード大学で哲学を学び、ウィリアム・ジェームズやジョン・デューイといったアメリカのプラグマティズムの思想に強く影響を受けた。

戦後日本

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「ふつうの暮らし」を美学する-家から考える「日常美学」入門

「ふつうの暮らし」を美学する-家から考える「日常美学」入門

これは軽い読み物だと思って手に取って驚かされた。

「日常美学」という聞きなれない言葉には何が表されているのか。

「日常美学」とは、1970年代の「環境美学」の分野から発展している。

人間の手によらない自然を美的鑑賞として議論してきた。

ここでいう「自然」とはどの範囲なのか。

結論から言うと、人口と自然が融合した都市や家も「日常美学」として取り扱うようになっている。

はじめに、日常美学の

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中井久夫 「私の日本語雑記」

中井久夫 「私の日本語雑記」

「私の日本語雑記」 著者:中井久夫 出版社:岩波書店 発行:2010年

著者は精神科医の中井久夫である。精神科医として、統合失調症の寛解過程理論、風景構成法の考案、その業績は枚挙にいとまが無い。一流の精神科医でありながら、現代ギリシャ詩の頂点であるカヴァフィスの全訳を行い、フランスの詩人ポール・ヴァレリー の詩集『若きパルク・魅惑』まで訳す翻訳家でもある。さらに、本書のような一般読者に向けたエッ

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ネガティヴ・ケイパビリティについて

ネガティヴ・ケイパビリティについて

箒木蓬生『ネガティヴ・ケイパビリティ-答えの出ない事態に耐える力』を読んだ。

とてもいい本。
めちゃくちゃ良くて2回読んでしまった。

詩人キーツが兄に宛てた手紙にある一文がある。

人って矛盾に耐えられないから何かしらの答えをひねり出す。どっちつかずってのが一番嫌な生き物なんだ。
昔付き合ってた彼女に中途半端が嫌いだ、と言われたことを思い出す(完全にこちらが悪かった)

キーツの生き様は劇的(

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