マガジンのカバー画像

楽器作りのひとり言

15
楽器を作る生活の中で感じたことをつらつらと書いています。
運営しているクリエイター

記事一覧

メリークリスマス



メリークリスマス🎄🎁🎅

クリスマスには間に合わなかったけど、近々完成して楽器店に並ぶコアコンサート。

僕らが作る楽器を沢山の人たちが楽しみに待っていてくださると思うと、すごく励みになるし幸せな事だなぁって思いながら日々製作に取り組んでいます。

僕らが作った楽器で、弾いた人が少しでも楽しい気持ちになったり、傷んだ気持ちが晴れたり、笑顔が生まれたりしたら

もっとみる
ルーターという魔法の木工機械

ルーターという魔法の木工機械

楽器業界に入ってもう40年近くになるけど、ずっとその間僕を支えてくれた木工用機械がある。「ルーターマシン RO-116」という。

庄田鉄工という浜松の機械メーカーが作っている機械で、木工業界ではかなり定番の汎用機だと思う。最近はもう流石に作っていないのかな。

この機械の素晴らしいのは、数十年間基本的な設計を変えていないこと。

つまり例え30年前の機械であっても、現行の機械と同じ部品が使えるの

もっとみる
58歳にして改めて思う、仕事の楽しさ。

58歳にして改めて思う、仕事の楽しさ。

5月まで一緒に仕事をしていた従業員が退職し、自分達夫婦2人だけで仕事するようになってもう2ヶ月が経つ。

以前は「ティーズウクレレ」というウクレレブランドと、「Seilen」というブランドを並行して工房で作っていた。「ティーズウクレレ」の方を若手スタッフに担当して作ってもらい、Seilenはすべての工程を僕が自分の手で進めるというテーマでコツコツやっていたわけだ。

去年の秋にふと、「今後10年間

もっとみる
漁師とビジネスマン

漁師とビジネスマン

先日、工房で働いていた従業員が最後の出社日を迎えました。
少し寂しくなりますが、これからは人を雇わず妻と2人だけで小さな工房を営むことになります。

今まで僕の我がままに付き合って一緒に苦労をしてきてくれた歴代のスタッフの皆さんには心からの感謝を伝えたいと思います。至らぬ社長だったとは思うけれど、一緒に仕事をしたことで少しでも楽器作りが面白かった、楽しかったと言ってもらえたら本望です。

昨年11

もっとみる
音楽の役割

音楽の役割

4月。新しい季節の始まりですが、今年は残念ながらいつもと違うスタートになりました。
世界中でこの数ヶ月に7万人もの人がコロナウィルスの感染で亡くなっています。本当に信じられない事です。

今までに人類は多くの災害に遭い、その度に皆で力を合わせ手を取り合って乗り越えてきました。でも今回のこのウイルスは人が手を繋ぎ合うことが難しい災害です。世界中の都市が閉鎖され分断され、国同士もお互いに疑心暗鬼になっ

もっとみる
今、僕たちにできることは

今、僕たちにできることは

イタリアの医師が「申し訳ないけど、今は音楽とか言ってる場合じゃないんだ。」と語ったと何かの記事で読みました。

確かに、命を助けるために過酷な戦いを続ける医療現場は、相当に大変な状況なんだろうと想像します。最大限の感謝の言葉を伝えたいと思います。

でも、こんな時期だからこそ心にも栄養が必要だとも思う。
心を癒してくれる柔らかな言葉とメロディや、明日に希望をつなぐための力強いメッセージが本当に必要

もっとみる
「始まりゃ終わる」

「始まりゃ終わる」

ウクレレネック加工中なう。
100本です。(笑)  たくさんだね。

そしてちょっと休憩。カップラーメンでも食べよか。(^^)

 

ネック削りながら考えてたんだけど。

あ、そうそう。

こういった作業中って、手は忙しく動いてるんだけど頭の中のどこかの部分は休んでるんだね。忙しく動いている手と切り離されて、ある意味クールに自分を俯瞰しながらぼんやりしてる自分がいる。
それでその暇な部分の脳みそ

もっとみる

小笠原桑



昨年2月、工房にずっしりと重い荷物が届きました。
包みの中はひと固まりの真っ黒な木。小笠原桑と呼ばれる希少種です。

オガサワラグワ(通称オガグワ)は東京から千キロ南の小笠原諸島の固有種で、かつては島の森の主要な樹木でした。
人の行き来も少なく手つかずの森には樹齢数百年という大木も多く、その木質も緻密で黒く美しいことからオガグワは高値で取引されるようになり、明治頃にほとんど採り尽くされてしまい

もっとみる
木を乾かす

木を乾かす

樹はその中にたくさんの水分を持って立っています。
「人間の体重の3分の2は水分で出来ている」とよく言われますが、木も同じで生きている時は60%以上もの水分を含んでいます。

その大量の水分は木が切り倒された後に徐々に抜け、最終的には「平衡含水率」と呼ばれる15%前後に落ち着きます。乾燥するのに必要な時間は樹種や板の厚みによって違いますが、自然乾燥の場合は製材後数年かけてゆっくり乾いていきます。

もっとみる
「楽しみだね。」

「楽しみだね。」

最近「明日が楽しみ!」と思いながら眠りについたことはありますか?
先日仕事で上京し、年始ということもあって取引先担当者と食事をしながら僕自身の今年の計画についてお話しをして来ました。
今年は公私ともに少し大きな変化を予定していて、もしかしたら仕事のスケジュールなどで迷惑をかけることがあるかもしれないと考えたからです。
帰り際にその人が笑顔で「高橋さん、今年は楽しみだね。」と言ってくれたのが後になっ

もっとみる
人生の目標

人生の目標

「人生の目標。」って何でしょうね。

僕にとっての人生の一番大きな目的は、「楽しむ事。」です。
人生は山あり谷あり、楽しいことも嬉しいことも辛いことも悲しいことも沢山あります。でもそれを敢えて一つの長編映画を見るように楽しみながら過ごせたらいいな、と思っています。
仕事に一所懸命になって人の役に立てたり、スポーツを楽しんだり、映画のように恋に落ちたり、世界を駆け巡ったり。そして美味しいご飯を食べて

もっとみる
切磋琢磨

切磋琢磨

砥石を使って刃物を研ぐ。

木工を楽しむ人にはおなじみの作業ですが、一般の方はそれほどはなじみが無いかもしれませんね。

水をかけた砥石に切れなくなった刃物をあてがって前後に擦る。
ざらざらした砥石の面と擦れ合った結果、硬い鋼が少しずつ削れて研ぎ上がり、鋭利な刃先になる。

自分の体よりも数段堅いハガネを研くために砥石は、けなげにもその身をすり減らしながら少しずつ少しずつ相手を磨いていきます。

もっとみる
家を買うということ

家を買うということ

松本の自分の工房の近くに前から空き地があったんだけれども1年位前に宅地造成をして区画ができて。
そこは駅まで歩いて10分ちょい位な場所だし国道からも近いので、値段もそれほど安くはなかったけども案外あっという間にバタバタと家が立ち並びようになった。

ふと気が付くと、「あーこれでもうここには町内会ができるんだろうな」と言うような雰囲気にまでなっちゃっている。
1区画はそれほど広くもない。多分50坪か

もっとみる
35年のプロローグ

35年のプロローグ

初めまして。

僕はこの35年間、楽器製作を生業としてずっと生きてきました。

木を刻み、削り、磨き、塗装仕上げをした後に部品を付けて調整をし、そして音楽を演奏するための「楽器」として完成させる。そんな仕事をしています。

19歳で社長と自分だけの小さな楽器メーカーに就職し、4年半勤めた後に退社。数ヶ月間迷いつつも、周囲の協力もあり23歳で自分の工房を開きました。

父の趣味の植木鉢達を庭の隅に

もっとみる