shimozu jin

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【映画感想】 破墓(パミョ)

個人的には『アシュラ』『コクソン』などが公開された頃に(十年ぐらい前か)韓国映画を見始めて、『殺人の追憶』などの過去作などを掘り返しつつ、新作映画が上映されるたび、期待してみたものの、『ザ・キング』『ザ・メイヤー』など滑っているもの多くあり、韓国映画だからと言っても、毎回、いい映画が見られるわけじゃないんだな…。ということがしばらくして分かってきた。 その後、毎年、二、三本のいい作品があり、そんな感じで韓国映画を見続けてきたが、ここ数年は一本も面白い映画がないことが続き、映画

    • 【小説 ショートショート】 調書

      『…私の最初の記憶…。それは本当に自分が記憶している初めの記憶かはわからないが、印象に強く網膜に張り付くほど、残っているものは、クマのことだだ。クマがその黒い毛並みがたなびいて横たわっている姿だ。クマといっても、それは本当の熊じゃなくて、それは名前だ。子供の頃、家で飼っていた雑種犬の名前だった。 クマは家の庭で鎖で繋げられながら、青息吐息で苦しそうに倒れている。それは数週間前から続いていた。当時、5歳ぐらいだった私は、毎日、夜にクマを心配して、苦しむ彼の背中を撫でていた。 そ

      • 【映画感想】 西湖畔に生きる

        中国のグー・シャオガン監督による『春江水暖』に続く長編二作目。 春江水暖は記憶が確かでないが、今にして思えば、コロナの一年前ぐらいに上映された作品らしい。 誕生日会に、祝われている年老いた母親が脳卒中で倒れ、痴呆症が進み、介護が必要になってしまい…。映画サイトで見ると、そんな粗筋だったが、記憶にあるのは家族の会話でもどこでも、金銭のことばかりで、ちょとギスギスした話の中に、山水画のような中国の自然の景色。母親の孫の結婚話。孫娘と許嫁の散歩シーンでは、途中で許嫁が湖で服を脱ぎ泳

        • 【映画感想】 若き見知らぬ者たち

          内山監督の評判の良かった、前作「佐々木インマイマイン」がイマイチ、いいと思えなかった。 主人公のドラマが薄くて、退屈でその割、変にラブシーンは多かった気がする。 高校の同級生だった、明るい佐々木が実は、という回想のところで、やっとドラマっぽくなったと思えたが、いきなり、佐々木の親父が死んでしまう。人が死んだからといって、それが感情に刺さるわけではなく、物語が思いつかなかったのか、としか思えなかった。 その後は相変わらず、影の薄い主人公がなんだかただの棚ぼたで、仕事がもらえて、

        【映画感想】 破墓(パミョ)

          【小説 ショートショート】 惑星のマニフェスト

          未来世紀2024年。 地球人は宇宙各惑星とコンタクトを取り、友好的に文化や科学技術をシェアしていた。 また、あまりに荒廃した惑星には地球の技術者が行って悪い環境を整えたり、食物を送ったりしていた。 ある惑星では、あまりに施政者の行き過ぎた職権乱用と、惑星の住民を無視した身勝手な統治ぶりで、星自体が立ち枯れ、滅んでしまう可能性があり、そこへ政治学者などが乗り込み、施政者を引きずり落とそうと、惑星の住民を説得しようしていた。 各惑星の政治を知る博士と、惑星の言語学者たちは惑星の

          【小説 ショートショート】 惑星のマニフェスト

          【小説 ショートショート】 りりぃ(テキヤレザレクション)

          ※めちゃくちゃな話です。  TMGEオマージュ? 仕事にあぶれたテキ屋のたつの生活は荒れていた。 朝から酒を煽り、昼にはチェーン系の飲食店、目高屋でビールと餃子を頼み、昼飲みをする。 夜は夜で居酒屋で、そして自宅で一人酒を飲む。 飲んでも飲んでも気が晴れず、気分はどんよりと落ち込む一方だった。 妻と一人息子は十数年前に家を出ていったきりで、それから一回も会っていない。 妹に嫌われ実家は出入り禁止。全てはたつの自業自得ではあったのだが…。                   

          【小説 ショートショート】 りりぃ(テキヤレザレクション)

          【小説 ショートショート】 アクション映画

          西暦20xx年。 ネット被害による自殺者が急上昇した。 特に、有名人の自殺が多く、snsでの誹謗中傷には罰則刑がつくようになった。さらに脳科学の発達により、直接、死者の脳から情報や画像、音声情報を読み取り、自殺した人が実際に被害を受けたと感じていた記事などを調べ、それを書いた本人などを逮捕することができるようになった。 そんな20xx年のこと。 俳優のボブ・クロスビーは自宅の豪邸で、酒を飲んでいた。特注のウォーターソファーに沈み込むように寝転がり、ウォッカ、ウイスキー、ワイ

          【小説 ショートショート】 アクション映画

          【小説 ショートショート】 ときめき

          大学生の柳田真一は都内の大型電気屋の、イベントスペースでお気に入りのアイドルが登場するのを待っていた。 信一は同じように待ち構えているファンの中に埋もれながら、ポケットに入った携帯を確認した。 「絶対、写メは撮らないとな…」 デジタルの腕時計を見ると、イベント開催の時間は近づいてくる。 信一は胸をときめかせながら、その時を待ち続ける。 「ワクワクするよなあ」 隣にいた一緒にイベントに来ている友人の城ヶ崎が、興奮で鼻息を荒くしながら、浮き上がる汗をハンカチで拭って言った。 「そ

          【小説 ショートショート】 ときめき

          【小説 ショートショート】 テキヤナイト

          タツは昼間から、自分のマンションで四畳半で横になって寝ている。 自分の両手を広げた先には、ワンカップの瓶。なかにはただの水が入っている。少しの金さえあれば、ワンカップ酒が買えるが、それすらもなく、瓶に水を入れ少しだけでも酒の余韻が楽しめればと、そうして酒風味のついた水を飲んでいるのだった。 タツの的屋の仕事は、年々減っている。今年の夏はいくつかの仕事があったが、仕事のある数週間前に、祭りの縁日は町内会だけでやると、そこの町内会長からお達しがあった。なんでも、会長が言うには裏社

          【小説 ショートショート】 テキヤナイト

          【小説 ショートショート】 暑苦しい女

          溝口ひかるは今日も嫌われていた。 某私立高校での生徒副会長を務めるひかるは、正義感の強く、性格のいい、熱いパッションを持った高校生だった。 しかし、そのことが災いしてか、同じ高校の生徒からとても評判が悪かった…。 「うざい女」 「暑苦しい女」 「ギャーギャーうるさい女」 いつも生徒たちから数々の罵声を浴びていた。 そして、今日も…。 彼女の通う高校では朝礼の時に、校長の話が終わると、生徒に質問を聞くことが慣例だった。 しかし、その質問の時間に手を挙げる生徒はいなかった。溝口ひ

          【小説 ショートショート】 暑苦しい女

          【小説 ショートショート】 隣町の戦争

          未来の世界。 大陸間に国や国境がなくなり、町単位で行政の区分けがなされていて、どこの大陸にいても、気に入った他の大陸の街へ移住できるようになっていた…。 土曜の夜。山下はマンションのベランダに、リクライニングチェアを置いて座ると、街を見下ろしながら、ジョッキに注いだビールを飲みはじめる。 「はい、おつまみ」 妻の恵が皿にジャッキーパルカスを山のように乗せ、テーブルに乗せると、自分も椅子に座った。 「気持ちいい風だね」 「うん」 そう言いながら二人はビールの入ったジョッキで乾

          【小説 ショートショート】 隣町の戦争

          【小説 ショートショート】 父と娘 

          ※時事ネタっぽい感じ。 ※個人名 新聞名は思いつかないので…。 サラリーマンの島田は午前中の仕事が終わり、昼に同僚と、チェーン系の飲食店めだか屋に行った。 「最近、高校生の娘の考えていることがわからなくてさ」 テーブルの前に座り、そこに置かれた機器でメニューを注文し終えると同僚がつぶやく。 「そういえば、お前のところも女の子だったな」同じく一人娘を持つ島田が答える。 「息子ならよかったな。それだったらもう少しは考えてることが理解できたのに…」 「そうかな。娘でもこっちが想像

          【小説 ショートショート】 父と娘 

          小説【ショートショート】 父の仕事

          ある日、インターネットの動画チャンネルにこんな映像がアップされた。 それは子供たちに自分の父親や母親の、知られざる仕事姿を、VTRで見てもらうという企画の動画だった。 シェフや看護師、大工やシステムエンジニアなど、さまざまなお父さんやお母さんの仕事をする姿を見て、子供たちはいたく感動し、VTRを見た後、再会した父や母と抱き合い、日頃からの感謝の言葉を述べ、親は仕事への自信を強め、親子の絆がさらに深まり、動画を見ていた視聴者が、ウルトラほっこりするという、全く、企画としていい

          小説【ショートショート】 父の仕事

          【ショートショート 小説】 呪いの井戸

          百合と聖は新宿南口にあるのバスターミナル。略してバスタ、の前に、二人で旅行に行くために、待ち合わせをしていた。 「おはよう、聖」 朝の新宿の街。まばらな人混みの中、百合が旅行バッグのカートを引きながら、手を振って歩いてきた。 「おはよう、百合。でも、ちょっと遅刻してるよ」 バスタ前で立っていた、大きめのリュックを背負った聖も、時間を気にしつつ手を振って迎えた。 「ここって何度か通ってるけど、使ったことないんだよね」 百合がバスタのビルを眺める。 「私も初めて」 「名前が変だよ

          【ショートショート 小説】 呪いの井戸

          【ショートショート 小説】 レストラン

          洋食ダイニング「OUTUBRO」は朝の十一時から、夜九時までの営業している、老舗のレストランだ。 パスタ、ラザニア、ステーキなど、庶民的なメニューが並び、比較的、低価格の食事を提供しているが、シェフの腕は一人前で、昔は某ホテルの料理人をしていたほどであった。 夜の10時を過ぎそんながOUTUBROが店じまいをしようと、閉店と書かれたプレートが入り口のドアの前に下がる時、「おはようございます」と、OUTUBROの掃除担当の当年取って、75歳の丹波が清掃の服を着て厨房へやって

          【ショートショート 小説】 レストラン

          【ショートショート小説】 ワールドエネミー

          生牡蠣色の雲が覆う空に、割れるようなジェット音が響き渡っている。 雲以外、何も見えない空間に、突然、太陽に照らされ一機のU18戦闘機が現れた。 「前が全く見えません。仲間の戦闘機も、目的の爆撃地点も…」 パイロットのリー・スパーク空軍大尉が無線で本部へ連絡する。 「何を弱気なことを言っている。とにかく、目的を達成するんだ」 スピーカーから本部の大佐からの声が聞こえる。 「わかりました…」 無線を切ると、リーは「仲間はどこにいるんだ?」と呟いた。 リーは闇雲に戦闘機を前進させて

          【ショートショート小説】 ワールドエネミー