【映画感想】 西湖畔に生きる

中国のグー・シャオガン監督による『春江水暖』に続く長編二作目。
春江水暖は記憶が確かでないが、今にして思えば、コロナの一年前ぐらいに上映された作品らしい。
誕生日会に、祝われている年老いた母親が脳卒中で倒れ、痴呆症が進み、介護が必要になってしまい…。映画サイトで見ると、そんな粗筋だったが、記憶にあるのは家族の会話でもどこでも、金銭のことばかりで、ちょとギスギスした話の中に、山水画のような中国の自然の景色。母親の孫の結婚話。孫娘と許嫁の散歩シーンでは、途中で許嫁が湖で服を脱ぎ泳ぎ始め、(かなり長い時間)途中で、陸に上がり、さっきまでと同じように会話をしてまた散歩をする長回しが印象的だった。
シーンとして目を見張るが、俳優が長いこと泳いでまたセリフを言うにも大変だっただろう。ちょっと危険なぐらいな長回しだったし。セリフはアテレコでやっているかもしれないが…。

二時間半ぐらいの映画だったが、10本映画を見ても、ドラマが気に食わないとか、物語が自然に感じられないものが、8本ほどで、2本いいものがあればいいぐらいの自分にとっては、当たりの映画だった。
この映画はフランスの映画批評誌カイエ・デュ・シネマのベスト10のも選ばれている。
しかし、よく考えてみると、この映画、どこがいいのかというポイントはよくわからない。山水映画とも呼ばれる、絶景などはもちろん画面を通して迫ってくるが、せこい銭勘定の話と、ちょっとした犯罪の話に、その景色が溶け合っているように見えるわけではない。それが悪いと思えるわけでもないのだが…。
カイエ・デュ…。でも色々説明はしているのだろうけど、翻訳してもなんだか勿体ぶった言い回しで、読んでもきっとわからないし、本当に何かこの映画の真髄を知っているわけでもないのかもしれない。
映画評論家って、本当に映画がわかっているようで、文章などで読むと、ただ雰囲気で好きなだけじゃんってこともよくあるので…。

中国の映画は検閲か何かで誤魔化すためか、映画の物語の時代が少し前のことが多い。
この映画は首都でなく、地方の再開発などが絡む映画で、この時期には『鵞鳥湖の夜』や『象は静かに眠っている』なども捨てられた地方都市のようなところが
舞台になっていた。最近なら『国境ナイトクルージング』もそうかもしれない。
この映画一作では、グー・シャオガンの監督としての腕が、確かなものかそうでないのかも分かりにくい。それで、この『西湖畔に生きる』なのだが…。

物語は茶摘みで生計を立てる母親が詐欺に遭ってしまい、大学出の息子がそれを助ける話。
予告は詐欺グループの新興宗教のような儀式などが映り、ちょっと、面白そうではある。
でも、映画サイトのレビュー点数はなかなか低め。
レビューで映画の良し悪しなんかわかるわけない‼︎
と言いきりたくもあるが、そういう映画を見ると、点数が低いなりの理由がわからなくもないし、わざわざあんまり面白くもない映画を見に行って疲れるのも嫌なので、鵜呑みにはしないものの、どう映画がイマイチなのか予測をしたり参考にはしている。
この映画のあんまりよくないポイントは、母親が詐欺に遭うダウナーな物語のせいかと、予測してみた結果…。

詐欺に遭う、騙される話も嫌な気分にはなるが、それよりも、役者のオーバーアクトが度を超えて、ヒステリックすぎて、また違う意味で嫌な気分になった。
「成功」などと唱和させる大規模詐欺グループのテンションもうるさいが、母親を演じる中年女性の大袈裟な演技が見ていて辛かった。
ビートたけし著の「仁義なき映画論」で、『遺産相続』という映画を評した際の、「オバサンの熱演はベテランストリッパーの天狗ショー」云々という件を思い出させられた。
監督の指示通りなのだろうけど、こういう熱演をしたい俳優の人も多いかもしれない。あまり映画にとっていい効果はないと思えるんですけどね…。
母親が騙されたことを知り、息子が介抱して、親子の再生あたりで、前作のような落ち着いたトーンにはなるが、前半の激しい芝居が裏目に出て、心には全く滲みなかった。
詐欺を知った時のシーンにかかる、英詞の歌のによる、引きのエモーショナル感も好きじゃなかった。シャレオツ感を出したかったのでしょうか。
これらの演出のため『春江水暖』の印象と打って変わって、グー・シャオガンって、こんな映画を撮る人だったの?とマイナスなイメージになったことは否めない。馬脚を表してしまったか…。とは言い過ぎかもしれないが。
詐欺グループの大袈裟な演出には、本当にこんな犯罪が罷り通っていることに対する怒りがあるのかもしれない。
中国やロシアの映画は、なんとなく、裏に何か意味があるのかと考えてしまう。
この詐欺グループ自体が、中国やその経済について比喩的に表現したようにも見えなくはない。しかし、流石にそうだったら、そのまま過ぎて検閲は通らないだろうけど。
しかし、これは国民に株を勧める首相がいる国とあんまりわからないといえば、かわからない。(国民みんなが得する株があるっていうことか。そんなバカな。これぞまさに『ダムマネー』だ)













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