「アンブローシア・レシピ」第11話
1914年10月4日(1) ロンドン「ウェイン! これ見て!」
午前7時、ミリセントは今朝届いたばかりの新聞を握りしめて兄の部屋に飛び込んだ。
昨夜は傷がじくじくと痛んでほとんど眠れず、明け方になってようやくまどろんでいたウェインは、賑やかな妹の声に苦笑しつつ瞼を開ける。
ミリセントは鈍色のワンピースに白いエプロン姿だ。どうやら家政婦オニールの手伝いをしているらしい。
「今日の新聞に昨日のウェインの事件が載っているの! 『プリースト診療所のグレイ医師、暴漢に襲われる』っ