廃他
人間に戻るまでの軌跡
そもそも自我を持ったりしたらいけなかったんだと思う 私は脆い、持った自我すら中途半端だった。 でも他者を模倣する以外のアイデンティティなんてどこに転がっているんだろう。 何もできない。 それも選択のうちで人生をリスクに晒すってギデンスあたりが言ってた。 母を壊したのも私のせいだ、私が自我を持てない弱さを彼女に押し付けた。 彼女に私の自我になるように命令したのも私で。 だから私は面白くないんだ。 そうこうしている間にもアフリカではたくさんの子供たちが死んでいる。 私が今
誰にも守って貰えなかった。 家の外でも中でも関係なかった。 だから家を出たけど、飯と屋根が保証されていただけマシだったのかもしれない。 ずっと道端の小銭を拾うような生き方をしてきた。落ちているものを拾って食って、運がよかったからたまたま生きてこれただけのような人生だった。殴られないために大きくなるしかなかった。触られるのが痛かったから鎮痛剤をたくさん飲んだ。 愛する人たちにはそんなことしないでほしい、 助けなきゃいけない、 見えてしまったのに、助け無い選択をするならそれを
今日から日記を書く セルフモニタリングと状況判断の欠如で大事な友人と喧嘩をした。 相手にも十分オーバーキルされたとは思っているが、役満ロンをさせる必要なんてこれっぽっちもない 合理性がない 使えるスキルなんて多いほうがいいに決まっている ただ自分のこういう簡単なところに傷付く脆弱さというか まあいかにも文明に守られた人間様ですねというところに本当に腹が立つ でも精神的体力なんてあったほうがいいに決まってるから 今日から実験的に修行僧と怪物のダブルジョブ選択をしてみようかな
この1年転がるように毎日を生きてきた。 もう何万遍、人に笑いながら説明したか分からない自分語りのストーリーが、私から搾取することにしか興味のなかった男と決別してようやく終わった。 私の夜職人生に寄り添ってきた人との終わり、 あのマンガの登場人物がしていたような、泣き笑いの『離れたくないなあ』、この街の人間が誰かと終わる時の泣き方。そんな風に泣いて泣いて泣いて、私はずっと欲しかった、頑張った、でも手に入ることは無かった彼の心を諦めた。 諦めきった私に、腹を括って全部終わ
私に取って、数字は安心と確実性の象徴だった。 他人の気持ちなんて分からない。幼稚園で泥の入ったバケツを顔に投げつけられたときから、小学校で集合写真の自分の顔だけ潰されたり席が無かったりしたときから、お金や性欲の為だけに簡単に人の気持ちと尊厳を踏みにじる人がいると知ったときから、他人の気持ちなんて分からないし、知りたくもない。 信用の裏には大抵悪意がどよめき、おしあいへしあいしている。真面目に育った私はそのダメージを全身に受けてきた。弱かったんだと思う。環境のせいには出来な
親と訣別をして、家を出た。私は母の人間臭さが受け入れられなかったし、母は私の生き急ぎ方を到底、『母』であるがゆえに余計、理解できなかった。 始まりはちょっとしたすれ違いで、それは本当にたぶんちょっとしたことで、でも私と母にとってはあまりに決定的で、だから私は母を、私にとっては帰らぬ人にすることにした。私がこの世で最も愛した筈の人間は、最も認めて欲しかった筈の人間は、跡形もなくどこかへ消えていってしまった。私は紛れもなく、あなたになりたくて生きていたのに。 こうして私の人生
「好きじゃないならそんなことしないでくれた方がいいのに」 最近そんなことを思う機会が増えた。かわいいね、とかそんな何気ないひとこと。「今日会ってくれてありがとう」、思ってもいない癖に。謎のパフォーマンスで突然「いつもありがとう」とか、LINE payで送られてくる千円。そんなことのために自分のなけなしのお金を使わないで欲しい。 「彼は私のこと好きじゃないかもしれない」とかそんな不安ですらなくて、「彼は私のこと好きじゃない」断定法。多分きっと誘わなかったら一生会ってすらくれ
親に風俗がバレた。週刊誌での連載の話も、たくさんお世話になったソープとデリの在籍も、私を支えてくれたお客さんの連絡先も、潰さざるを得なかった。毎日売春婦と罵られ、そんな母をどこか他人事のように見ていた私は淡々と逃げるために必要な手続きを進めた。 警察、学生相談所、教授。母がいうところの、ありとあらゆる「まともな大人」に助けを求めた。大学の友達に頭を下げてお金を借り、物件も借りる。 感情を何処かに置いてきたかのように、私は淡々とするべきことをひとつひとつ進めた。物件が決まっ
高校2年の春、その後恩師となる数学の講師が、塾で、私のクラスを初めて持った日、私にこう聞いた。 「人生で一番大事なものはなんだと思いますか」 私は一言、忍耐、ですかね、と答えた。「悟ってますねえ〜」ほんのたわいもない戯れに真面目な返事が返ってきて優しく笑ったあの恩師は、彼の職場のある同じ新宿で私が今、性風俗産業に骨を埋めていることを知らない。 煙草を吸う。あの時の同期は同じ大学に進学したり、京都に行ったり、恋人と幸せに過ごしていたり、本当に様々に生きている。私とは離れた
いろんなことがあって、1ヶ月ぶりに彼に会った。 前日の夜、母親が「明日は雨で、今年1番の寒さらしいよ」なんて言うから、きっと彼がめんどくさがってなんもしないだろうことは最初から予想がついていた。 彼の家の前に着いた時には気温は4度、当然のように彼は布団からまだ出てきていなかった。 あまりに寒かったので、約束の時間よりも早く、無理に彼に鬼電をかけておこし、無理に家に入った。今日洗濯物当番の彼は、洗濯物が濡れてしまって機嫌が悪い。ベットルームで永遠に除湿を掛けているせいで、
今回はちょっと毛色の違う話。 昔、まだ私が恋愛感情すら自覚できていなかったとき、彼との事後に、彼は私にある女の子の投稿を見せた。そのホス狂の女の子は、彼が紹介したNSソープで、5日間で70万近く稼いでいた。 「すごいでしょ」 お前の努力ではないのだが。でも彼は嬉しそうだった。まあスカウトとして女の子の力になれることは嬉しいだろう。さらに彼のお金にだってなる。ニコニコ嬉しそうにしている彼を見ながら私は全力でその女の子に嫉妬していた。 私は彼の自慢の姫になりたかった。私の
しとしと雨が降っている。彼の安らかな寝顔が雨雲の光に当てられて柔らかく見える。 個性とは所詮自分が演じたい役のことだ、福田恆存はそう言う。私にはそれが本当なのか、実のところわからない。でも、私はよく、その役を剥いでみたいと思う。変だろうか?剥いだって結果見えるのは、本能という名の大したことない残滓かもしれないが。 昨晩、彼のお面をどうしても剥がしたくなってしまった。これは演技や表現を虚構だと責める、愚かな私の性質なんだろうか。その人間の本性を剥きたくなってしまう。そんなも
私は映画を見るのが得意じゃない。そもそもが忙しくてADHDの私は、2時間もジッとして映画に集中していられない。ましてや隣に人がいる時に、その人ではなく、映画を観ているという事実に耐えられない。だから特に好きな男と映画は観ないということに決めていた。 でも先週会った時、彼は珍しく、私に何がしたいかとか一切聞かず、行為が終わるとおもむろに画面の前に私を連れて行き、prime videoを開いた。 普段、他人に愛想ばかり見せている彼が、私が行くまで寝ていて、担当の女の子から回収
しばらく角膜炎で目が見えなかった私は今日になって閑散期と呼ばれる11月を初めてこの身で体験した。結果は散々だった、1本ついただけ、これなら昼職の時給の方が良かった。まあ昼職は自由出勤じゃないんだけど。 私は数字というアイディンティティに依存している。自分の出した成果でしか自分を評価できない。成果を出せない努力や過程などなんの意味もない。それはやり方が間違っているということ。私には「がんばったね」もクソもない。 高校の時にはそれが偏差値や順位だった。毎日毎日落ちるんじゃない
ここ数日気分が沈んでいる。大嫌いなアリストテレスのよくわからない文章を延々と授業で読まされたからということもあるが、なんで稼いでるのかわからなくなってしまったからということもある。 中学1年のあの日からずっと、俺は、自分が13の時にレイプされた、その時の絶望と恋心と汚い感情全てを原動力に生きてきた。世界を見返すためになんでもやった。音楽も美術も勉強も化粧も恋愛も、何もかもを見返すためだけだった。復讐心、それだけだった。今その思いが薄れつつある。過去の不幸に縋って生きてきた俺
この半月ほどで何もかもが変わってしまった。綱渡りのように無自覚に淡い恋をしていた私は、竜巻のようにやってきて、私と彼の関係を乱して行った彼女の言葉に飲まれて、その自分の醜い嫉妬と恋心に気付いた。結婚まで考えていた彼氏と別れた。一つの愛に蹲っていられない自分の若さと愚かしさに気付いた。 私は現実という地面にべったり足をつけるほど、まだ成熟できていなかったのだ。 私がこの歌舞伎町に本当の意味で足を踏み入れてから1ヶ月が経った。大金を積んで、買えないと分かりきっているものを買お