突然の配置転換。新たな役割をきっちりこなす人は格好いい。楽天・則本投手が30セーブ。通算100勝後の達成は史上3人目。「まだまだ精進」33歳の闘志は衰えない
突然の配置転換。新たな役割をきっちりこなせる人は格好いい。楽天の新守護神、則本昻大投手が30セーブを達成した。通算100勝を挙げた後の30セーブは史上3人目。慣れた先発から試合を締めくくる仕事人への配置換え。33歳右腕は「まだまだ精進」と闘志が衰えない。チームは現在4位。逆転のAクラス入りへ、新守護神の役割は高まっている。
14日にホーム仙台で行われた日本ハム戦。相手は現在リーグ2位と勢いに乗っている。楽天にとっては3連戦の初戦を勝って弾みをつけたい。
チームメートの先発、早川隆久投手が6回3失点と試合を作った。味方打線は中盤の3イニングに7得点を挙げてリード。このまま逃げ切りたい。八回に1点を返されて7-4で九回を迎えた。
最後を締めくくるためにマウンドに送り込まれたのは則本投手だ。クローザーにすべてが託される。
先頭打者に四球を与えると、次打者にヒットを打たれるなど、1死満塁。ショートゴロの間に1点を返され、なお2死一、三塁のピンチが続く。
ここで打席に立ったのは日本ハムの1番打者、水谷瞬選手だ。この日、先頭打者本塁打を放っている。長打が出れば同点となりかねない。
緊迫の度合いは最高潮に。チームの勝利に加え、先発投手の個人成績もかかっている。守護神、則本投手がつぶすわけにいかない。
則本投手は初球134キロのスライダーが外れボール。その後2ストライクを奪い追い込んだ。しかしファールで粘られ、2球ボールが続く。フルカウントに持ち込まれた。
運命の7球目。則本投手は142キロフォークで低めに落とした。水谷選手のバットが空を斬る。空振り三振。則本投手はピンチを脱出して、チームを勝利へと導いた。センター方向を向き、雄たけびを上げた。今季30セーブ目だ。
則本投手は昨季までの11シーズンで先発投手を務めていた。積み上げた白星は114。2014年から5季連続奪三振王に輝いている。先発投手の柱的な存在だった。
しかし昨季までクローザーを務めていた松井裕樹投手がメジャーへ移籍した。守護神の穴を誰が埋めるか。そこで則本投手に白羽の矢が立った。
これまで先発で名を挙げてきた。突然の配置転換。本来なら受け入れられるものではない。しかし則本投手は守護神への転身を受け入れた。
憧れの存在だった故・津田恒美さんも広島時代は「炎のストッパー」と呼ばれていた。憧れの存在と同じ立場になることで、心が燃えた。
通算100勝を達成した後に、1シーズンで30セーブを達成した投手は過去に2人だけ。日本ハム時代の江夏豊さん(1983年)と巨人の上原浩治さん(2007年)だ。いずれもレジェンド的存在。その2人に肩を並べた。
則本投手は「すごい方と同じところに名前が挙がるのは光栄」と喜んだ上で、「まだまだ精進しないといけない」と闘志をさらに掻き立てている。このメンタルの強さこそ、則本投手の特徴であり、クローザーに必須の条件なのだ。
パリーグのセーブ王争いで則本投手は2位に5差をつけてトップに立っている。突然の配置転換。それでもきっちりと役割をこなす則本投手は格好いい。新守護神がいれば、チームも勇気づけられる。逆転のAクラス入りへ、楽天が勢いに乗ってきた。
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