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FA権行使の阪神・大山選手が残留を決断。「地鳴りのような歓声が忘れられない」。ライバル球団に移籍するのはご法度なのか。古巣のファンから敵対視されたサッカー選手も

ライバル球団に行くべきか、留まるべきか、それが問題だ。国内フリーエージェント(FA)権を行使していた阪神の大山悠輔選手(29)。右の長距離砲が下した決断は、阪神への残留だった。決断の理由は「地鳴りのような歓声を受けた感動が忘れられなかったから」。大山選手の決断を支持したい。ただ、そもそもライバル球団への移籍はご法度なのだろうか。

大山選手は29日、阪神に残留することを会見で伝えた。推定17億円プラス出来高の5年契約を結んだ。昨季、38年ぶりの阪神の日本一に貢献。ただ今季はセリーグ2位に終わり日本シリーズ進出を逃した。

大山選手は今季14本塁打、68打点。昨季の19本塁打、78打点に比べると自身の成績も低下した。「もう一回、優勝、日本一を達成したい」と宣言。チームとともに自分自身の巻き返しを誓った。

ライバル球団の巨人からは6年総額24億円のオファーがあったとみられる。金銭的な条件では明らかに巨人の方が上だ。また大山選手は茨城県出身。関東の球団への希望も理解できる。実際、大山選手も巨人移籍に傾きかけていた。

大山選手が翻意したのは、23日に本拠の甲子園であったファン感謝デー。多くのファンが大山選手の名前入りタオルを掲げた。「阪神は大山とともにあらんことを」。ファンの願いが込められていたはずだ。

28日の選手会納会では、阪神の選手やスタッフから残留するように改めてお願いされた。

ファンやチームメートたちからの熱い願いに、大山選手は残留を決断した。この決断を支持したい。

ただ気になるのは、そもそもライバル球団への移籍はご法度なのだろうか。今回、巨人への移籍話には「禁断の移籍」と報じるマスコミもあった。大山選手が巨人以外のチームへの移籍を検討していたら、今回の大山選手の移籍話はこれほど大きく報じられただろうか。

ライバル球団への移籍。メジャーリーグのジョニー・デーモンさんを思い出す。デーモンさんはボストンレッドソックス時代に快足のトップバッターとしてチームを引っ張り、2004年の世界一に貢献した。

長髪で顔全体を覆うひげ姿。ボストンのファンからは「ロックスター」として絶大な人気を集めていた。

そんなスター選手が2005年オフにライバルのヤンキースへFA移籍。これまでのトレードマークだった長髪をばっさり、ひげもそり落とした。

2球団のライバル関係は、日本の巨人・阪神に近いと言われる。スター選手の「裏切り」に、ボストンで試合が行われた時には、デーモンさんへ相当のブーイングが巻き起こるはずだとも言われた。

実際にはブーイングと同じぐらい、古巣のファンから温かい歓声が送られた。思ったほどの敵意がボストンのスタジアムに巻き起こったわけではなかった。

一方で、サッカーの移籍となると穏やかではない。ポルトガル代表として活躍したルイス・フィーゴさんだ。現役時代、スペインのFCバルセロナでプレーしていた。それが2010年にライバルのレアル・マドリッドへ移籍する。

この2チームの試合は「クラシコ」と呼ばれる伝統的な一戦。しかもマドリードとバルセロナの政治的な緊張関係があるため、ほかのスポーツ以上にライバル関係が厳しい。

そんな状況下で、フィーゴ選手は移籍した。バルセロナでの試合で、コーナーキックに向かおうとしたフィーゴさんにペットボトルやゴミなどが投げつけられ、古巣のファンから敵意がむき出しにされた。

また、フィーゴさんがバルセロナで経営する日本料理店が破壊される騒動も起きた。フィーゴさんを「裏切者」とみなす憎悪の思いが、明らかな形で示されたのだ。

もしも、大山選手が巨人に移籍していたら。デーモンさんのように古巣のファンから温かい歓声が送られていたのか。それともフィードさんのように、徹底的に敵意を向けられていただろうか。

阪神に残る決断を下した大山選手。猛虎軍団の長距離砲として、来季の活躍に期待している。残留が間違いでなかったと、バットで証明してほしい。

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