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記事一覧

月と共に 《詩》

月と共に 《詩》

「月と共に」

湾曲する海岸線と空が
ひとつになるあたり

きらきらと輝く
海を指差す少年を見た

夜に長い散歩をして
世界のゆくえを考える老人

少女は香り付きの蝋燭を売っている

そして綺麗な声でキャロルを歌う

枯れて黄ばんでいく丘の草や
冬の雨さえも愛した

遥かな空虚を見つめる彫像のように
時は動かず

風だけが吹いている

語りうる行為の散漫な影が
言葉少なに切り取られ

その頭上では

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不死の詩 《詩》

不死の詩 《詩》

「不死の詩」

真夜中過ぎの柔らかな暗闇

ふらふらと揺れる 
発熱に近い温もり

君は不死の詩を歌う

床の上に脱ぎ捨てられた
僕等の衣服に
月が濡れた光を注いでいる

夢想 想像力 妖精の翼

自らの妄想の図柄を
君の中にある宇宙に描く

君の持つ生身の魔法が 一欠片 
甘く割れていく

月に打たれた音叉の音に
耳を澄ませた

ふたりの唇が触れた時 
君は花となり鮮やかな蕾を開く

僕は不死の

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辺境 《詩》

辺境 《詩》

「辺境」

僕等は然るべき判断を
保留し続ける事により

無限に引き伸ばされた
希望を抱き続けている

時間は無限ではないのに

ある時には堅固な岩塊の上に

またある時は軟弱な泥地に

僕等の意志は
載っているのかもしれない

世界中の人々は軍服を身に纏い

気をつけの姿勢を
取っているかの様に見える

尋常ではない希望と強い夢想へと
駆り立てる想いを
軍服の下に隠したまま

地球上の一番みすぼ

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予言する鳥 《詩》

予言する鳥 《詩》

「予言する鳥」

道徳だとか理論性だとか
其れを凌駕するほどの狂気

爛熟を極めた架空の帝国都市

混ざり込む耽美的な旋律

感情投入と自己投影 

希薄な色彩を塗り替える

流離う若者達 

現在と過去に対する葬送のマーチ

しばしの黙考 

深い森の中で鳥が予言する

世俗的な装飾性を捨て去るのだと

自分の心の中にある言葉に
耳を傾け信じる事だと

前に進もうとしている者だからこそ 
つまづ

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旅人 《詩》

旅人 《詩》

「旅人」

僕等は旅人の姿を追いかけている

僕は最も親しく信頼出来る君にすら

僕自身の断片しか
伝えきれてはいない

僕の全体像は君にも誰にでも
理解する事など出来ないだろう

そう僕等は隣人の姿ですら
はっきりと見えない

薄暗がりの道を手探りで歩いている

時々 誰かの言葉や行動により

閃光に照らし出されたかの如く

君を認識する事が出来る

僕等が同じ場所に居て

ぴったりとくっ付く様

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桜日待たずに 《詩》

桜日待たずに 《詩》

「桜日待たずに」

形があるものにせよ 
無いものにせよ

全てはいつか消えていく 
残るのは記憶だけだ

僕等は普段 

あまりにも多くの巧妙に作られた
複製に取り囲まれている

其のせいで本物を知らない

実物の持つ激しさ荒々しさや
其の重みを見失う

ただの野放図な認識だけが
空から落ちて来た

激しい宿命的な恋の始まりの様に

僕は存在理由の第六番目に 
恋みたいなもの…そう書き残す

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12月の夜空 《詩》

12月の夜空 《詩》

「12月の夜空」

魔法に満ちた夜

燃え盛る炎と愛しさ

唇に降りて来た夢

其の瞳の中に見た楽園

貴方は私以外の誰かを
愛する事なんて出来ない

そんな言葉を口にする彼女

12月の夜空に永遠を誓う星を描いた

もっと自惚れなよ 綺麗だよ

ライラック 《詩》

ライラック 《詩》

「ライラック」

嘘に閉じ込められた沢山の雀が
空を仰ぎ羽ばたこうとしている

僕は重みの無い

小さな言葉の断片が羅列された
紙切れを部屋中にばら撒く

路地裏に捨てられた腐りかけの
果物が入った箱から

まだ食べられそうなものを漁る

僕等はずっと下を向い生きて来た

世界が新聞記事に集中している時

僕と君は
腐りかけの果物を分け合い食べた

致死的な響きを帯びた風と
暁色に染まる窓辺

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さよなら 愛しい人 《詩》

さよなら 愛しい人 《詩》

「さよなら 愛しい人」

起きて見る夢 愛だけを残して

僕はただ其処にある空白に従属する

何かが不意に通り過ぎる そう風だ

一陣の風が通り過ぎて行く 
何も奪わずに想いと意志を与えて

自分が自由だと感じれる
唯一の状態が此処にある 

其れは空白の中だ

僕の内面 混沌とした闇にある
毒と向き合う

ある場合には致死量に匹敵する
毒性を含むものだって
其処には存在している

現実と幻想が入

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花唇 《詩》

花唇 《詩》

「花唇」

咲き誇り揺れ舞い誘う花唇

想いの数だけ言葉を重ね

そっと此の手で触れた柔らかな花

ただ ひとつの願い事 

祈りは瞬く星明かり

立ち止まり 振り返り 
また歩き出す

栞を挟んだ
此のページに書かれている 
終わりの無い物語

悲しみの雲と刹那の雨 

希望の虹と柔らかな陽の光

夜空には同じ想いを抱いた
小さな星が並んでいる

僕は其の星の輝きに耳を澄ませる

貴方と同じ夢を

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夢のほとり 《詩》

夢のほとり 《詩》

「夢のほとり」

ひとつ またひとつ色を重ねて

見えるだろう

最後にはきっと救われる

世界はいつか
弱者に救いの光を与えてくれる

僕等にも虹が見れると信じて

激しく降りつける雨も我慢して来た

一日はとても長く
嘆きの雨は降り止まぬ

そして きっと 人生は短い

誰のもとにも陽が照らされるのなら

彼女は何故に…    

僕等は 

さよならを告げる為に
出逢ったんじゃない

見上げ

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今夜なら 《詩》

今夜なら 《詩》

「今夜なら」

肩寄せ合って歩く影

僕の伝えたい想いと 
君から伝わる想い

愛しさの欠片 

恥じらい染める胸の音

願いの明かりを灯す瞳の奥

何度でも聞きたい言葉を覗き込む

僕等の星がまたひとつ
恋の詩を奏でる

言葉になる前の言葉 

歩こう 明日へ

想いの星々が集い瞬く今夜なら

星摘み 《詩》

星摘み 《詩》

「星摘み」

さよならを沈めた 
ありがとうの言葉

時の流れの先に 

咲く事のない花が揺れている

結べない糸を後ろ手に隠して

音もない夜に輝く一等星

手を伸ばす真夜中

星はあんなに遠く 
夜はこんなにも長い

街灯の明かり 

踏めない影だけを連れて歩く

舞い散る無言が此の街を包み
独り行き先を影に尋ねる 

七色 《詩》

七色 《詩》

「七色」

秘密の色彩に指先が触れ 

そして唇が触れた時

愛の言葉は静かに
僕等の内面意識に閉じ込められる

僕は迷いもなく この身を委ねる

瞼を閉じて見つめ合い 

夜の淵に
誰も知らない小さな花が咲く

君がかけた虹の下に僕は居た

花の香りに似た記憶が僕を包み込む

躊躇いがちに繋いだ手 
指先に告白の余韻

遠い日の恋は詩となり

僕はまた
触れられぬ虹の色彩に手を伸ばす

交わす吐

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