
逢坂剛と冒険小説と警察小説等
一時期、エンタメ系の小説にハマっていた。ハードボイルド小説、探偵小説、警察小説など。その中で割と最初の方に耽読したのが大沢在昌(おおさわ・ありまさ、1956年~)の作品だった。
大沢在昌の作品を購入していると、本屋の棚の中の近場でよく見掛ける作家の名前がある。作品数もそれなりにある感じで気になってくる。その作家の名前が逢坂剛(おうさか・ごう、1943年~)であった。
逢坂剛は、東京都文京区の生まれ。本名は、中浩正(なか・ひろまさ)。開成中学校・高等学校を経て、1966年に中央大学法学部を卒業。大手広告代理店の博報堂に勤務。17年ほど作家活動と兼業し、1997年に31年勤めた同社を退職し専業作家に。
デビューや受賞などは次の通り。
1980年に「屠殺者よグラナダに死ね」(後に「暗殺者グラナダに死す」へと改題)で第19回オール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。
1986年に『カディスの赤い星』で第5回日本冒険小説協会大賞を受賞。
1987年に同作で第96回直木賞、第40回日本推理作家協会賞を受賞。
2015年に『平蔵狩り』で第49回吉川英治文学賞を受賞。
ちなみに父親は、挿絵画家の中一弥(なか・かずや、1911年~2015年)。本名は、中福寿(なか・ふくじゅ)。大阪府門真市の生まれ。山本周五郎(やまもと・しゅうごろう、1903年~1967年)、池波正太郎(いけなみ・しょうたろう、1923年~1990年)、藤沢周平(ふじさわ・しゅへい、1927年~1997年)など主に時代小説の挿絵画家として多くの作品を残した人物である。
江戸時代の探検家・近藤重蔵(こんどう・じゅうぞう、1771年~1829年)を主人公とした逢坂剛の時代小説『重蔵始末』から連なるシリーズでは、挿絵を中一弥が担当して、親子の共作が実現している。
逢坂剛の作品で最初に読んだのは、やはり直木賞を受賞している『カディスの赤い星』だったかな。新装版でページ数を確認したけれど、上巻が370ページで、下巻が419ページ。初っ端からこのような大長編を読もうと思ったのか不明である。
でも、『クリヴィツキー症候群』から始まる探偵・岡坂神策シリーズも、『イベリアの雷鳴』から始まるイベリア・シリーズも、他のシリーズにしても、それぞれ1冊がそこそこの長編だし。
『裏切りの日日』などの公安警察の百舌シリーズは、確かある程度、逢坂剛の冒険小説や探偵小説を読んだ後に、手を出したような記憶もあるし。
やっぱり、『カディスの赤い星』から読んだ感じだろうな。自分もギターを趣味で弾いているし、そんな要素もありながら。
『カディスの赤い星』は、PR会社の事務所長が主人公の日本とスペインを舞台にした冒険小説。題名は、失われた名器のギターの名称。カディスは、スペイン南西部の港町の名前である。大長編だけれど、勢い良く読めてしまう内容。最後の最後も「そう来るかぁ~!」と思った。なかなか鮮烈で、しっかりと逢坂剛の作品のファンになった。
『幻の祭典』や『燃える地の果てに』、『さまよえる脳髄』など、色々な作品を読み進めていった。同時に『さまざまな旅』や『書物の旅』といったエッセイも、手に取っていった。小説もエッセイも面白い。興味の幅がどんどん広がっていく。全てが読書の醍醐味である。
そして、やはり、先述した公安警察の百舌シリーズである。『裏切りの日日』からシリーズは始まるが、テレビドラマ化され『MOZU』として放送されたのが二作目『百舌の叫ぶ夜』と三作目『幻の翼』である。
さらに映画化がされ『劇場版 MOZU』となったり、スピオフドラマ『大杉探偵事務所』などになったりも。実際のところ、映像作品はどれも観てはいないので特に感想はない。気が向いたら観てみたいような、でも原作の世界観がズレちゃうのも嫌だし、といった微妙な立ち位置である。
取り敢えず、原作のシリーズが8作品あるので、そちらをまず堪能してもらいたいかな。丁度、逢坂剛の前に、大沢在昌の警察小説『新宿鮫』シリーズを読んでいたのも、良かったかな。警察小説、シリーズもの、といった予習が、準備が整っていた。いやはや本当に面白いシリーズである。
他にもシリーズとしては、悪徳警官の『禿鷹の夜』などの禿鷹シリーズや、ポップで笑いもある『しのびよる月』などの御茶ノ水警察署シリーズがある。
時代小説では、先述した『重蔵始末』シリーズや、『道連れ彦輔』シリーズ、『平蔵の首』などの通称、平蔵と呼ばれる長谷川宣以(はせがわ・のぶため、1746年~1795年)を主人公とした長谷川平蔵シリーズも。
ここから先は
宜しければ応援お願いします! 書籍代・資料代などの活動費に使わせてもらいます!