心に刺さる仕事【読書感想】
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一万円選書。
北海道にある小さな町の本屋さん店長
(いわた書店/岩田徹氏)が、
お客様にピッタリな本を
一万円分選書するサービスです。
「お客様にピッタリ?」
常連のお客様、
いわゆる「お得意さん」への
特別なサービスなんかじゃありません。
この革命的なサービスは、
そのほとんどが
お客様の顔すら見ることなく
ピッタリな本を選書するというものです。
それを可能としたのが「選書カルテ」です。
これは店長の岩田さんが作った、
お客様の人柄を想像するためのカルテです。
「何歳の時の自分が好きですか?」
「上手に年をとれていますか?」等
設問を読むと
思わずクスッと
にやけてしまうような内容です。
実際に初対面でお会いしたお客様に
このようなことを聞くことは
かなりの違和感を覚えますが、
メールや郵送にて届く
カルテだからこそ
お客様は心を開いて
回答できるのだと思います。
こういった意味では、
提供されているのは本
だけではなく、
「自分と向き合う機会」
という特典まで付いている
サービスと言っても
過言ではないかと考えます。
こうして、
お客様の人物像を作り上げていき、
「これまでに読まれた本で印象に残っている本BEST20を教えてください。」
というメインの設問を元に
お客様にピッタリな本を
選書していくというものです。
ここまで読んで、
利用してみたいと思った方も
おられるのではないでしょうか?
「一万円選書」ですから
10冊前後の本が選書されます。
自分で本を選ぶとき、
どうしても好きなジャンルへ
偏りが生じがちです。
それが悪いことだとは思いませんが、
人から勧められた本により、
新たな価値観や趣味嗜好を発見し、
その後の生活に、
選択肢の幅を広げることがあります。
つまり、
「一万円選書」というサービスは、
元の興味に沿った本だけでなく、
お客様を新たな世界へ導く一冊も
含まれており、
自分では気づくことのできなかった
可能性を見出すきっかけをも
提供してくれるものなのだと考えます。
バブルが崩壊し、
日本中の経営者が苦境に立たされた日本。
書店業界も例外ではなく、
まちの小さな本屋さんが
次々に閉店していく中、
岩田さんは、あることをきっかけに
「一万円選書」を始めることになります。
テレビ番組での特集なども入り、
今や抽選を行って
顧客数を
制限せざるを得ない状況のようです。
人をたくさん雇って、
大雑把な選書とすれば
いくらでも捌けそうな気もします。
しかし、
「選書に思いを乗せる」という意味で、
一件一件と向き合う時間を
大切にされている仕事の流儀には
胸が熱くなりました。
そして、
今回もまた
「好きなことで生きている」を
目の当たりにし、
自分もまたより一層、
尖った生き方をしていこうと
前向きになれる一冊でした。