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山小屋物語 12話 師匠とキャベツの千切り
山小屋には師匠と呼ばれる男性がいた。もうおじいちゃんと言ってもいいくらいの歳だった。
山の案内人であり、狩りの名手でもあり、塵の焼却をし、調理のプロでもあった(信じられないくらい多才なのだ!)。様々な場面で師匠の知恵を借りて、我々は標高三千メートルでの生活を営んでいた。
とりわけ厨房で師匠の存在感は、際立っていた。なにがどう凄いって、まずその独特の愛らしさで、女子の世界のギスギスをあっというま
山小屋物語 11話 富士山の中心で愛を叫ぶ
再び夏が来て、私は富士山の山小屋に登ってきた。
その年の厨房は例えるなら、「もののけ姫」に出てくる、タタラ場の女たちのようだった。よく働き、よく食べ、よく笑った。
登山客がチェックインしはじめる15時を過ぎているのに厨房のおしゃべりがうるさいので、よく番頭さんが窓をからりと開け「シーッ!!!ちょっと、バカ笑いがお客さんに聞こえてます!」と注意してきた。
「ごめん、ごめんwww」と謝りつつ、涙を
山小屋物語 10話 暗くなるまで待って
反省会は、河口湖駅からそう遠くない、親父さん馴染みの宿で行われた。
宴会用の大広間に従業員30余名が整列して正座した。親父さんから促され、番頭のリーダー北さんが「一人一言反省を述べ、また課題があれば解決に向けて議論せよ」と言った。緊張して順番を待った。
Kの舘は基本的に真面目な人の集りなので、反省会もガチであった。
番頭さん「山小屋の売店に現金をたくさん置いておくと、盗られたりして危険」
山小屋物語 9話 Why not? or die
秋も深まる11月。
山で一緒に満点の星空を見た番頭の田村くんから、
「あっこちゃん一緒に、パントマイムいかない?おもしろいらしいよ」と、電話が来た。
デートのお誘い、にしては、
8月にフラグを立ててから、回収までが遅すぎる!と思った。田村くんは女垂らしという噂も聞くので、いろんな女を垂らすのに忙しくて、順番にしていたら遅くなったのかもしれない。
私は芸術を学ぶことに関しては、ストイックな学生だ
山小屋物語 7話 山を降りる
山のシーズンは短い。
富士の山小屋は六月下旬から人が駐在して、登山客を迎え入れる支度が始まり、九月中ごろに小屋仕舞いする。
なんと短い登山期間かと思われるかもしれないが、初冠雪の知らせが聞かれるのは例年九月中旬である。下界と比べ、とても寒いのだ。
富士山は、独立峰で風が強く、雪が積もれば地面がつるつるに凍るアイスバーン現象が起こる。山に慣れた強力やガイドでもともすれば滑落する恐れがあり、そうな
山小屋物語(仮) 日記編2008
フジヤマから帰ってきました。
出発の日は、中学で授業をやったその足で富士吉田に向かったので、頭の切り替えが出来ず。上に登ってからは、新人でもありえん失敗を連発。完全に仕事を忘れていました。リーダーには迷惑を掛けて申し訳なかったです。第二のふるさとのような場所ではあるけど、こんなんじゃいっそ来なければ良かった。米を炊き損じた時は自ら立ち去ろうかと思いました。とほほ・・・。最終日にはI瀬とA子に「