向井さり

読むだけでその場に行った気持ちになれる旅日記をめざして書いています/他こまごましたエッ…

向井さり

読むだけでその場に行った気持ちになれる旅日記をめざして書いています/他こまごましたエッセイ

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  • こちゃこちゃ旅エッセイ

    ヨーロッパの旅を振り返って写真とともにエッセイにしています。週一金曜に更新するようにしたい

  • あれこれそれこれ

    人生観とか、内観とか、振り返りとか。いろんなテーマや投稿企画もここ。

最近の記事

チロルアルプス オーストリア・インスブルック/ツークシュピッツェ

アルプスといえば、モンブラン、マッターホルン、アイガーあたりのスイス南西部のことと思われがちだが、本当は、ずっと東のオーストリア・ザルツブルクあたりまで伸びている。 日本でもなんとなく耳慣れた「チロル」も、このアルプスの一部だ。(ちなみに、耳慣れているのはチロルチョコのおかげだと思う。) チロルは、オーストリアの西部、スイスやドイツとの国境付近のアルプスを言う。 そこにはドイツとオーストリアにまたがるツークシュピッツェ(Zugspitze)があり、ふもとには綺麗な高原が広

    • 好きだった時間を振り返って書くことのよさ

      「何かをした後は検証して振り返るのが大切」とよく言われる。 どうしてうまく行かなかったのか。どうすればうまく行くのか。次は何を試してみるのか。試行錯誤の繰り返しで物事は良くなっていくから、「振り返るのが大切」というのはもっともな話だ。 でも、ここで一つ。 振り返ることが大切なのは、「うまくいかなかったこと」だけなのだろうか。 つい反省の方に目が行くけれど、「楽しかったことやよかったことを思い出す」のも案外いい。しかも、試行錯誤のためでもなく、未来に再現するためでもなく、

      • 暮らすように泊まる スイス・デュ―ベンドルフのエアビー

        旅行の楽しみの一つに宿がある。ホテルももちろんいいが、最近いいなと思う選択肢がエアビーだ。民家やアパートの使われていない一室をお借りして、長めに滞在する。エアビーに泊ると、観光客のほとんどいない住宅街で、暮らしの端っこを味わうことができる。 このとき泊ったのはデュ―ベンドルフ(Dübendorf)だ。チューリッヒまで電車で直通約10分と程近いこの村は、民家と低層の集合住宅が立ち並ぶ住宅街だ。村を流れる小川沿いには木々の茂る遊歩道があり、緑を楽しみながら穏やかで心地よい滞在が

        • 打ち明け話のありがたさ

          Noteを始めてから、他の人の記事を読むことが多くなった。 海外に移住しているとか、50から大学に通っているとか、働きながらずっと長い間毎日投稿しているとか、現実だとめったにお目に描かれない人たちがこの世に確かに存在しているのだと、本当に驚くし、励まされてとても勇気が出る。 何歳からだって新しいことを始めていいんだって思うし、 住む場所とか仕事って変えていいんだって思うし、 利益にならなくたって書き続けていいんだって思うし、 楽しんで生きていいんだって思う。 自分の現実の

        チロルアルプス オーストリア・インスブルック/ツークシュピッツェ

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          5本

        記事

          湖に浮かぶお城 スイス・シヨン城

          天国みたいな空色に、薄く霧かかった遠くの高い山々。 そんな美しい湖畔にたたずむ、中世のお城が、シヨン城(Château de Chillon)だ。 ――― シヨン城は、スイスの西端にあるレマン湖(Lac Léman)のほとりに、つきだすようにぽつりと立っている。ジュネーブからは1時間30分、チューリヒからは3時間くらい。どちらの場合もモントルーまで電車で行って、そこからバスに乗って行く。 湖に浮かんでいることで有名な、その幻想的なお城は、意外にも大きな道路に接するように

          湖に浮かぶお城 スイス・シヨン城

          お気に入りだった服に、鋏を入れる

          お気に入りだった服に、鋏を入れる。 じょきじょき小気味いい音を立てながら、小さな正方形がたくさんできていく。もろもろと出てきた糸くずを最後にはらって、何度も大事に着た服は、簡素な拭き布になった。 ものを最後の最後まで使うのは心地いい。 単にもったいないから、というのもあるけれど、すべてを使い切るということには、そのものを大切にしきったというすっきりとした満足感がある。 普段から来ていた服だから、特別に紐づいた思い出があるわけではない。でも、だからこそ肌で感じる擦り切れた愛

          お気に入りだった服に、鋏を入れる

          大好きなチューリッヒ湖の春

          今回は写真だけ。 本当は誰にも見せずに箱にしまっておきたいくらいに大好きな景色。

          大好きなチューリッヒ湖の春

          上京のとき、友達ができるか怯えていた私へ

          当時大学のために地方からひとりで東京に出てきた私の一番の心配事は、「友達ができるかどうか」だった。 もともと、私は友達作りが得意じゃなかった。 クラス替えのたびに、知らないところでグループができてしまうのが怖くて、とにかくどこかのグループに入れてもらおうと必死だった。 それでどこかに入れても、実は馴染めていないんじゃないかと勝手に不安になって、毎日家に帰って泣くような子供だった。 見知った校内のクラス替えですらそうなのに、東京という知らないところではもっと怖いに決まって

          上京のとき、友達ができるか怯えていた私へ

          豊かな小国 リヒテンシュタイン

          リヒテンシュタイン(Liechtenstein)はスイスの東側にある小さな国だ。 小豆島と同じくらいのサイズだが、金融の中心地でもあり、タックスヘイブンのため法人税収が多くて、そのため市民の税金がとても少ない。ちなみに国民の平均年収は1000万円越えだ。 …いいなあ。そんなにお金があったら旅行行き放題、それから湖畔に家を買って、いいPCを買って… …いかんいかん。今回はまっとうに小旅行を楽しもうというのに、ついつい早々頭が煩悩に引っ張られてしまった。首都・ファドゥーツ(

          豊かな小国 リヒテンシュタイン

          ヨーロッパ最大の瀑布 スイス・ラインの滝

          ごうごうと流れ落ちる水の塊。広々としたライン川が、ある一点で切り落ちるように滝になっている。そこはヨーロッパで一番大きな滝、ラインの滝(Rheinfall)と呼ばれる場所だ。 滝横の断崖にへばりつくように突き出している展望台から見上げると、瀑布はすぐそこ、本当に手が届いてしまいそうだ。 思わず桟から身を乗り出すと、顔に水しぶきがかかる。ごうごうという音でまわりの声はかき消されてしまっているが、人々の高揚が表情から伝わってくるようだった。 ――― ラインの滝はチューリヒか

          ヨーロッパ最大の瀑布 スイス・ラインの滝

          巡礼と薔薇の町 スイス・ラッパースヴィル

          チューリッヒから湖を南下したところにある美しい小さな町、ラッパースヴィル(Rapperswil)。 この町は、スペイン・サンティアゴ・デ・コンポステーラにつながる聖ヤコブの道の上にあり、透き通った湖を横断する巡礼の木橋と、修道院の美しい薔薇園で有名だ。 町には船で行くこともできるし、電車で行くこともできる。もちろん、巡礼の木橋を対岸のHurdenから渡って行くこともできる。むしろ、スイス最長(841m)を誇るこの木橋をこそお目当てにやってくる人も多い。 今回は、街に電車で

          巡礼と薔薇の町 スイス・ラッパースヴィル

          湖畔のおとぎの街 ドイツ・メーアスブルク

          かわいらしいカラフルな建物が立ち並ぶ、湖畔の街・メーアスブルク。 街は丘上と湖沿いの上下二つに分かれていて、起伏のある街歩きが楽しい。 2時間もあれば十分見て回れるくらいの小さな町だが、湖沿いにはホテルやレストランが立ち並び、バカンスを楽しむ多くの人でにぎわっていた。 ――― ドイツ・オーストリア・スイスの国境に位置するボーデン湖(Bodensee)。そのドイツ側の湖畔にあるメーアスブルク(Meersburg)は、ドイツのリゾート地として有名な場所だ。 行きやすいルート

          湖畔のおとぎの街 ドイツ・メーアスブルク

          記憶を文章にしたためるということ

          好きだった瞬間を覚えておきたいから、文章の形で書くことにした。 何かを素敵だと思うとき、これまでも写真は撮ってきたし、それを見返して当時を思い出すきっかけにすることはあった。でも、それだけでは自分の中で薄れて行ってしまうものがあると、30になってようやく知った。 単に視覚という感覚に絞っても、360度の空間にいるときの印象と、写真という長方形の枠に収めた印象はどうしたって違う。 ましてや、視覚以外の感覚、例をあげるなら草の匂い、空気の肌触り、風の温度、でも本当は個別に分

          記憶を文章にしたためるということ

          天然フラミンゴをさがして フランス・カマルグ湿原

          8月末。海辺のバカンスを期待して初のニースに降り立ったところ、天気は大雨。 なんだか雨のニースはちょっと熱海っぽい。海岸線に広がるプロムナードに大きなホテル。 熱海に行ったこともないのに、一目見て「温泉の無い熱海」のイメージで私のニースのイメージは固まってしまった。 せっかくなので熱海ではなくフランスっぽいところに行きたいのだが、天気予報は無情にも明日も雨を告げている。行きたいと思っていた近隣のかわいい村もやっぱり雨。 飛行機でわざわざ飛んできたのにこの仕打ちはなんだ。せ

          天然フラミンゴをさがして フランス・カマルグ湿原

          幸福な山 スイス・リギ

          「山の女王」リギ山までは、チューリヒから電車で2時間弱。 スイスの多くの山と同じように、山頂まで電車で行くことができ、気軽なハイキングが楽しめる。欧州初の登山鉄道の通るそこは、多くの人に遠い昔からずっと愛されてきた山だ。 9月初めのその日の天気のコンディションは抜群だった。 登山鉄道で斜面を登っていくそのときから、すでに外の空気の美しさがありありと肌に感じられる。待ちに待った山頂駅で降りると、ああもう、予想していたはずなのに、予想以上に美しい。 空の青は手が届きそうなほ

          幸福な山 スイス・リギ

          巡礼の地のクリスマス スイス・アインジーデルン

          雲一つない蒼い空、湖はそれを映して透き通り、ほとりには昨夜のうちに降り積もった雪がきらめいている。 年に幾度訪れるかという美しい一日が、ちょうど、一年にたった一週間しか開催されないアインジーデルンのクリスマスマーケットに重なった。 チューリッヒ中央駅からアインジーデルンに向かう電車は約45分。普段は比較的空いている電車も、この日ばかりは多くの人でごった返していた。 スイスの電車には珍しく、席に座れず立つことになったが、大きな窓から冬の陽光差し込む電車では、それもさして苦にな

          巡礼の地のクリスマス スイス・アインジーデルン