向井さり

読むだけでその場に行った気持ちになれる旅日記をめざして書いています/他こまごましたエッセイ

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マガジン

  • 金曜こちゃこちゃ旅行記

    ヨーロッパの旅を振り返って写真とともに記録しています。週一金曜に更新。テイストはいろいろ。すべての写真の無断転載を禁止いたします。

  • あれこれそれこれ

    人生観とか、内観とか、振り返りとか。いろんなテーマや投稿企画もここ。

最近の記事

秋の終わりのクリスマスマーケット フランス・ストラスブール

桃色がかったアルザスの町並みに、紅葉はとても似合う。 葉っぱを通り抜けるぬくいひかりが、やわらかに揺らいで、心が溶けていく気がする。川沿いの木々の黄色が水面にも映って、なんともきれいだ。11月末の肌寒さも感じないような、暖かな眺めが広がっている。 そんな秋の終わりのストラスブールでは、早くもクリスマスマーケットがはじまる。 自然の赤や黄色に、クリスマスの飾りつけたちが加わって、素朴な町はきらきら輝く天の町になる。 木の屋台が並び、レストランもリースやモミの木でおめかしして

    • 中世ヨーロッパにタイムスリップ ドイツ・エスリンゲンのクリスマスマーケット

      朝方肌寒くなって、日によっては起きて毛布を引き寄せるような時期になってきた。 暖かいお茶を入れて、記憶を思い出して味わいながら、文章を書くことの幸せよなあ。 冬の楽しみの一つと言えばクリスマスマーケット。ドイツはクリスマスマーケット発祥の地で、いろんな都市で個性豊かなマーケットが開催されている。有名なのはシュトゥットガルト、ニュルンベルク、ドレスデンなど、どれも大都市だ。 私はどちらかというと小さいのに惹かれるタイプなので、そういうのはないかと調べていると、ちょうどかわい

      • お花と運河と美術館 オランダ・アムステルダム

        スキポール空港に朝ついて、そのままキューケンホフ公園に直接むかう。 一面のチューリップを見られることで有名な、キューケンホフ公園。空港からもアムステルダムからも、バスでさくっと行けるから、とても便利だ。 アクセスが良くて簡単に行けるのに、風車あり、跳ね橋あり、チューリップあり、運河ありのオランダ全部盛りセットが楽しめる。 キューケンホフ公園は、チューリップ時期の3月末から5月末しか開かない。私は人混みをさけつつチューリップを楽しもうと、3月末の開きたてに行ったのだけど、チ

        • オランダちいさい町めぐり エダム・フォーレンダム

          小さい町に行くのが好きだ。もちろん観光地のたくさんある大きい都市も楽しいけれど、小さい町をただ歩くようなのが一番好きだ。 いまどき、旅に行くとなったらネット上にたくさん事前情報があふれていて、行っても写真で見たなと思うことすらある。 行こうと思い立つくらいには情報があって、でも写真があんまりないところ。秘境に行くのは怖いけど、適度に知らない新鮮さがほしい。小さい町には、そういう気楽な新鮮さがたくさん隠れている。 公共交通機関で行けるところで、女が一人で歩いても危なくなさ

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        • 金曜こちゃこちゃ旅行記
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        • あれこれそれこれ
          8本

        記事

          エンデの故郷を訪れる

          ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」が大好きだった。 この前、はじめて引っ越し先近くの図書館に行ったとき、あのあかがね色の本が置いてあるのを見つけた。箱はなくなって、背表紙は擦り切れて文字が見えなくなっていた。もう外見ではなんの本だか分からなくなっているそのあかがね色に、「ああなるほど、時がたって擦り切れれば擦り切れるほど本当に…」と感嘆したのは、きっと私だけではないだろう。 *** 小さい頃、私はクラスになじめなくて浮いていた。しょんぼりと家に帰っても、両親はピリピ

          エンデの故郷を訪れる

          中世の歴史を伝える首都 スイス・ベルン

          ベルン(Bern)はスイスの首都だ。首都と聞くと近代的な建物がたくさんあるように思うけれど、ここベルンの中心地は中世の街並みがそのまま残されている。 ベルンへはチューリヒ空港からもチューリヒからも、電車で1時間とちょっと。電車でベルンの街に入って行くと、赤茶色の街並みと、その中央のひときわ目立つ塔が見えてくる。 旧市街は、蛇行したアーレ川の内側、まるい高台にあって、川にはとても背の高い橋が架かっていた。 駅を降りると、石畳に赤い路面電車(トラム)が走っている。道の両側は建

          中世の歴史を伝える首都 スイス・ベルン

          森の中のかわいい村 ドイツ・ミッテンヴァルト

          ドイツの南東の州・バイエルン州は、自然豊かな州だ。特に南部はドイツアルプスになっていて、四季折々の景色を楽しむことができる。 バイエルン州は、州都のミュンヘンや、山の上の白亜のノイシュヴァンシュタイン城で有名だが、実は他にも小さくてかわいい街がたくさんある。 10年に一度のキリスト受難劇で有名なオーバーアマガウ、ウィンターリゾートとして人気のガルミッシュ・パルテンキルヒェン、ヒトラーの別荘地で有名なベルヒテスガーデン。 それらは大抵、隣国オーストリア行きのドイツ鉄道の途中

          森の中のかわいい村 ドイツ・ミッテンヴァルト

          アルプスの境界守 スイス・ベリンツォーナ城壁群 

          スイスには世界遺産が12か所もある。 ユングフラウ、ベルン旧市街、ベルニナ鉄道など名だたる有名観光地が並ぶ中、新しく2000年に登録された文化遺産。それが「ベッリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群」だ。 ベリンツォーナはスイス南部、イタリアとの境界にあるティチーノ州の州都だ。使われている言語もイタリア語で、街はイタリアの雰囲気が色濃い。特にスイス北部からやってくると、電車を降りた瞬間、真っ青な空に強い日差しが差して、まさしく南に来たのだと実感する。 電車駅を含む街は

          アルプスの境界守 スイス・ベリンツォーナ城壁群 

          もの書き3か月、受賞してただニヨニヨしているだけの記事

          受賞させていただきました!告知する他SNSも持っていないので黙ってニヨニヨしています。 受賞したこともとてもうれしいですが、わざわざ私の書いたものに時間を割いてくれて、読んでくれて、コメントまでいただいているということが嬉しいです(スクショスクショ…… 書いたものを公開しはじめてやっと1か月たちますが、恥ずかしさやためらいはいつもあって、たまに全消ししたくなりながらもとりあえずそっと今のところ書き続けている……という感じなので、こうして肯定的な反応をもらえると……じわじわ

          もの書き3か月、受賞してただニヨニヨしているだけの記事

          ただ待つこと、ただ聞くこと

          傾聴の大切さを説く本がいくつもある。 半信半疑だった私は、ある日それが人の心を見事に溶かす瞬間を目にして、とても感動した。 ――― 昔通っていたドイツ語のクラスは、先生と、生徒二人の計三人。とても小さなクラスだった。 先生のシレーヌは近くの大学生で、笑顔が素敵なひとだった。クラスメイトのオリビアは、ポルトガルから来ていて、授業中に困ると「Hilfe~(助けて~)」とこっちをつついてくれた。 シレーヌは近所のおすすめのパン屋のパンを買ってきてくれたり、マフィンを焼いて来

          ただ待つこと、ただ聞くこと

          境界の門 スロバキア・ブラチスラバ

          ウィーン3泊4日の最終日、せっかくなので昼から半日隣の国にも行ってみることにした。 お隣スロバキアの首都ブラチスラバは、ウィーンからたったの1時間で行ける。しかもバスで直通。 フリックスバス(Flixbus)でチケットを取って、ウィーン中央駅から乗り込む。 (フリックスバスは最高だ。座席は広いし、車内にはトイレもあるし、比較的時間通りだし、観光地の目の前まで連れて行ってくれる。なんなら電車よりフリックスバスがいい。) 降りたバス停は旧市街のすぐそこだった。手前には立派な橋

          境界の門 スロバキア・ブラチスラバ

          チロルアルプス オーストリア・インスブルック・ツークシュピッツェ

          アルプスといえば、モンブラン、マッターホルン、アイガーあたりのスイス南西部のことと思われがちだが、本当は、ずっと東のオーストリア・ザルツブルクあたりまで伸びている。 日本でもなんとなく耳慣れた「チロル」も、このアルプスの一部だ。(ちなみに、耳慣れているのはチロルチョコのおかげだと思う。) チロルは、オーストリアの西部、スイスやドイツとの国境付近のアルプスを言う。 そこにはドイツとオーストリアにまたがるツークシュピッツェ(Zugspitze)があり、ふもとには綺麗な高原が広

          チロルアルプス オーストリア・インスブルック・ツークシュピッツェ

          好きだった時間を振り返って書くことのよさ

          「何かをした後は検証して振り返るのが大切」とよく言われる。 どうしてうまく行かなかったのか。どうすればうまく行くのか。次は何を試してみるのか。試行錯誤の繰り返しで物事は良くなっていくから、「振り返るのが大切」というのはもっともな話だ。 でも、ここで一つ。 振り返ることが大切なのは、「うまくいかなかったこと」だけなのだろうか。 つい反省の方に目が行くけれど、「楽しかったことやよかったことを思い出す」のも案外いい。しかも、試行錯誤のためでもなく、未来に再現するためでもなく、

          好きだった時間を振り返って書くことのよさ

          暮らすように泊まる スイス・デュ―ベンドルフのエアビー

          旅行の楽しみの一つに宿がある。ホテルももちろんいいが、最近いいなと思う選択肢がエアビーだ。民家やアパートの使われていない一室をお借りして、長めに滞在する。エアビーに泊ると、観光客のほとんどいない住宅街で、暮らしの端っこを味わうことができる。 このとき泊ったのはデュ―ベンドルフ(Dübendorf)だ。チューリッヒまで電車で直通約10分と程近いこの村は、民家と低層の集合住宅が立ち並ぶ住宅街だ。村を流れる小川沿いには木々の茂る遊歩道があり、緑を楽しみながら穏やかで心地よい滞在が

          暮らすように泊まる スイス・デュ―ベンドルフのエアビー

          打ち明け話のありがたさ

          Noteを始めてから、他の人の記事を読むことが多くなった。 海外に移住しているとか、50から大学に通っているとか、働きながらずっと長い間毎日投稿しているとか、現実だとめったにお目に描かれない人たちがこの世に確かに存在しているのだと、本当に驚くし、励まされてとても勇気が出る。 何歳からだって新しいことを始めていいんだって思うし、 住む場所とか仕事って変えていいんだって思うし、 利益にならなくたって書き続けていいんだって思うし、 楽しんで生きていいんだって思う。 自分の現実の

          打ち明け話のありがたさ

          湖に浮かぶお城 スイス・シヨン城

          天国みたいな空色に、薄く霧かかった遠くの高い山々。 そんな美しい湖畔にたたずむ、中世のお城が、シヨン城(Château de Chillon)だ。 ――― シヨン城は、スイスの西端にあるレマン湖(Lac Léman)のほとりに、つきだすようにぽつりと立っている。ジュネーブからは1時間30分、チューリヒからは3時間くらい。どちらの場合もモントルーまで電車で行って、そこからバスに乗って行く。 湖に浮かんでいることで有名な、その幻想的なお城は、意外にも大きな道路に接するように

          湖に浮かぶお城 スイス・シヨン城