恋してばかり僕ら人間。総じてみんなバカで愚かで苦しくて悲しくて、縋るように優しさを迫る恋人達は、いつか来る終わりを考えることも無く、今の幸今の幸と過ぎ去った時間に目を瞑る。作り笑いをする僕と、本当に笑う君とでは幸福感に差があるようだ。僕は欲で君は愛を、君は言葉で僕は行動を。昔の恋人、そのまた昔の恋人。君という今の恋人とかつての恋人をなぜだか重ねてしまうのは、きっと僕は影を見ているから。1周目2周目、漫画も勉強も周回すれば周回するほど奥が深まる。ただ、恋だけは回れば回る程苦しく
壊れて元通りになる心なんて1つも無い。それを知っているのに、僕らは誰かを傷つけて生きていく。昨日から続く心の痛みを抱えながら、僕が笑っているのは、それに気づかないようにしているからだ。これから先、失うものばかり増えていくという事実と、軋んでいく体、ヒビが割れていく心。続く日々。壊れていく僕。不安が心を満たした時、希望も何もかもが溺れていく感覚が分かる。これから先、悲しい事が増えていく気がしてならない。だから僕は1つずつ丁寧に壊していく事を考える、失う前に壊していく。僕は弱くて
僕達は生きている。希望がない日々を平らげている。鬱憤を苦しくなるまで喰らい続けて、たまに吐き出して生活を続けている。僕達はいつも前を向いているふりをする。明日頑張るだとか、全然死にたくないよだとか、全然平気だとか。前を向かないと周りに心配をかけるから。惰性で前を向いている。後ろ向きに凝り固まった心を無理にでも前に向けている。それはまるで、ヒビの入った足で走っているように。 ベランダに寄りかかって、不確かな日々を見つめている。風が少し気持ち悪いと思ったのは、少しだけ具合が悪い
悲しい夜は、何となく月が光っていない気がする。朝日は眩しくて目が痛くなる。夕日はずっと見ていられる。海はずっと離れずにいてくれる。その広大さに、不安すら覚える。どこまでも続く空。端から端までを見ると、球体に見える。まるで閉じ込められているようだ。大きな監獄に捕らわれているみたいだ。だが、監獄と呼ぶには、この星は美しすぎる。僕はふと歩みを止める。美しさを感じる度に、歩みを止めてしまう。空、海、大地。いちいち見惚れてしまう。そして映し出された自分の薄汚れた心に、いつも枯れた花のよ
秋の風はなんとなく寂しい。そうさせるのは、秋に傷付いたからなのか、秋に何かを失ったからなのか。土砂降りの雨が心に水溜まりを作る。風は冷たく頬を撫でて、街の光が淡くなっていく。ネオンが水溜まりに反射して、波紋を広げて有耶無耶になる。必死に生きるのもバカバカしくなってきた。苦しいから全部燃やしてしまおうと、ポケットから出したライターは雨に掻き消された。冬はきっといつの間にか来て、僕はきっといつの間にか死んでいる。なんとなく寂しくて、なんとなく時間がたって、なんとなくで生きて、なん
イルミネーションが街を彩る。それよりも眩しい愛と、これから芽生える恋が、積もった雪を溶かしている。ざくざくと音を立てながら、積もった雪に僕の足跡が着く。その足跡を後ろから、1人、2人と踏み潰していく。そして僕も、誰かの足跡を踏みしめる。人の流れをよく感じる。そして僕もこの流れの1つなのだ。 窓辺に飾っている小さなメリーゴーランドや、特設のスケートリンク。サイレントナイトとは程遠い街の賑わいと、弾ける笑顔と、魔法がかかったように頬を赤らめて、ただ1人を見つめる少女の瞳。花束を
都会では星が見えない。「都会でも星が見れたらな。」そんな切ない言葉を小さく吐く。弱々しい言葉はビル風に吹かれて消えていく。もしも僕に魔法が使えたなら、僕はきっと満点の星空を、真夜中という夢のキャンパスに描くだろう。街の光に負けない一等星を描くだろう。下を向く人々達は、星空に指をさして笑うんだろう。そんな星をきっと僕は描くだろう。殺伐としたこの街の喧騒は、街の光で消えた星達のようだ。 適当に返事をする日々と、そんな適当な日々の中で、徐々に鬱屈した性格が輪郭を帯びていく日常。野
「祈りというものは、前向きな絶望である」誰かが言っていた気がする。願いが希望で満ちているのは、願いは叶うものだと認識しているからなのかなんて考えている。なら、祈りが何故前向きな絶望なのかと言えば、祈りは、叶わないとどこかで認識しているからだと考える。そんなこんなでこの世界は希望に満ち溢れている。今日もいい天気、雲ひとつ無い空、美味しい食事、戦争のないこの国、和気あいあいとしている人々。こんな満ちた世界で、1つの絶望を抱えて生きている。僕は希望に満ちているはずなのに、空は晴れて
悩む事ばかり増えた。重く、淀んだ色の黒い蝶が僕の頭上を回っている。美しく鱗粉を撒き散らし、それを被った周りは不幸になっていく。年を重ねる事に、蝶は増えていく。抱えきれないブルーな感情を引きずりながら歩く。雨まで降ってくる始末だ。雨は心が寒くなる。ポツポツとなる音が僕の孤独を強調しているかのようで、曇り空を睨みつける事で存在を証明する。そんなことをしていても、空は晴れないと知っていながら、小さい僕は、空を睨みつける事しかできない。その行為は憎しみを募らせ、また雨を降らせる。そん
待ち合わせまで時間があったので、ふらっと喫茶店に寄った。無機質に垂れ流れるラジオ。ほとんど無音なこの空間で、甘ったるいであろうアイスココアを頼んだ。アイスココアを頼んだはずが、ホットココアが来た。そしてホットココアの方が100円高いのだ。どっちも美味しいので問題は無いが、暑いのでアイスココアが飲みたかったなぁと、思い口に運んでみる。猫舌の私には熱すぎる。少し冷めるまで今読んでる本を開いた。喫茶店で本を開くなんて我ながら気取っているな。なんて思った。ついでだから、煙草にも火を付
僕が孤独と初めて出会った日。それは静かに雪が降る日だった。人は皆雪を見上げてはしゃいでいる。毎年降る雪に笑顔を見せている。僕はそんな雪を眺めて、このヒリヒリと痛い肌と、感覚を失っていく手に、いつしかの温もりを忘れてしまう恐怖に怯えていた。その日は確かな孤独だった。今年の夏は特に暑いな。太陽がジリジリと押し寄せる。それはまるで社会の波のように。それはまるで、僕を押しのけるように。そして僕は、孤独と初めて出会った雪の日を緩やかに思い出していた。 独りは寂しい。1人は自分と向き合
胸の奥に突き刺さる言葉の針を慎重に取り除く。少しブレて抉れてしまった心臓から、たらりとインディゴブルーの不安が流れた。僕には運命(さだめ)が無いように感じる。悪い事をしてもいい事が降り注ぐ日もある。いい事をしてもまたいい事が続く事がある。指名手配犯が逃げ切る。悪人がたらふく飯を食う。浮気女に彼氏ができる。女を誑かす男が社長になる。悪い事をしてもいい事が起こりうる。僕は死にたい気持ちを沢山部屋に充満させる。その部屋から飛び出ると晴れやかになる時がある。人が死んだ日に笑える時があ
今日は暑いね。ジップロックに7月の熱を閉じ込めて冬になったら売ろうなんて思っていた。令和の空気も売ってたくらいだし。そんでさ、梅雨はどこに行ったんだ?梅雨の行方は誰も知らない。梅雨の前の春の風だって鼻を掠めて通り過ぎてしまったな。冬の日は春を待っていたのに今日みたいに暑いと冬も恋しいね。今日の日差しも気がついたら秋の夜風になってたり。そう言えばさ、彼ら別れたらしいよ。幸せな時間も過ぎる。でも春の風も夏の日差しも秋の夜風も冬のダイヤモンドも嘘ではないんだ。幸せな時間も嘘じゃない
僕は少しだけ考えた。人は死んでしまったらどうなるのか。僕は少しだけ考えた。いつか死んだ人を忘れてしまったら嫌だなって。僕は少しだけ考えた。死ぬのが怖いのは忘れられるのが怖いからなんじゃないかって。僕は少しだけ考えた。人は皆、忘れるのが怖いから墓を立てるのではないか。僕は少しだけ考えた。悲しみは一夜限りで、永遠の哀しみは自分の生への渇望のみなのではないかってこと。僕は少し考えた。もう死んでしまおうと。僕は考えた。またまた僕は考えた。そしてそれは無駄だと悟った。 人は死ぬと星に
神秘的な泉が僕を呼び込んだ。そこには神様がいた。神様は僕に質問した。「あなたにとって幸せとは?恒久的で壊れないもの?瞬間的ですぐ忘れるもの?」僕はわからないまま答えた。「僕らはできが悪い。だからきっと瞬間的ですぐ忘れるものだと思う。だからこそ寂しくて尊くて、僕らはずっとあの日あの時を引きずって過ごしているんだと思います。」神様は少し笑って僕を泉から街へ追い出した。ビルに囲まれたこの街には幸せなんて欠片もない気がする。僕らは一生探し続ける幸せを、形のない幸せというものを探しては
優しさを振りかざさないあの子は、優しさを当たり前にしない、幸せを当たり前にしない現実主義者。鬼は金棒を振りかざして、恐怖で怯えさせるような独裁者。鬼も泣くような優しさと、幸せを当たり前にしないあの子が夢を見るような、僕はそんな言葉を綴れるだろうか。僕にそんな事ができるとしたら、僕はまだあの日テレビで見た憧れのヒーローになれるだろうか。伝えたい言葉なんてそんなに無いのに、僕は人を救う事によって自分を救いたいだけの弱い人間なのに。もしかしてあの憧れのヒーローも、誰かを救うことによ