夜空に魔法をかけれたら
都会では星が見えない。「都会でも星が見れたらな。」そんな切ない言葉を小さく吐く。弱々しい言葉はビル風に吹かれて消えていく。もしも僕に魔法が使えたなら、僕はきっと満点の星空を、真夜中という夢のキャンパスに描くだろう。街の光に負けない一等星を描くだろう。下を向く人々達は、星空に指をさして笑うんだろう。そんな星をきっと僕は描くだろう。殺伐としたこの街の喧騒は、街の光で消えた星達のようだ。
適当に返事をする日々と、そんな適当な日々の中で、徐々に鬱屈した性格が輪郭を帯びていく日常。野良猫が強く鳴いているのは聞こえないふりをする。それは僕の強がりだ。猫の想像を真夜中のキャンパスに映し出すと、何十等星のように存在が曖昧になる。弱虫が強がる。野良猫が強く鳴く。耳を塞ぐ。現実から目を背けるように簡単に。なりたい自分となれない自分が何十等星みたいに曖昧になる。半透明の事実に背伸びをして疲弊した僕の顔は、真夜中のキャンパスに描くには色が薄かった。これが現実です。夜空に魔法をかけられたら、どんな望みでも叶えられるのだろうな。なりたい自分になれるんだ。何色だっていいんだろうな。消えない僕の真夜中のキャンパスに描く未来の想像は、流れ星のように光って消えた。
大事なものすら忘れていく。そもそも、僕に大事なものなんてあったのか。必要なものってなんだろう。キャンパスに存在を証明する為の色なのか、それを彩る筆なのか、筆も色もない僕では、魔法をかける妄想をする事でしか朝が来ない。理想を叶えるために、笑えない日々を辿って、宙に舞った言葉を拾い集めて、僕を救うピースを虚しく探している。真夜中はずっと僕を待っている。僕の色を待っている。魔法ではなくて、僕が描く空の色、星の光を望んでいる。そんな風に考えないと僕はやってけない。