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真実を見る色

胸の奥に突き刺さる言葉の針を慎重に取り除く。少しブレて抉れてしまった心臓から、たらりとインディゴブルーの不安が流れた。僕には運命(さだめ)が無いように感じる。悪い事をしてもいい事が降り注ぐ日もある。いい事をしてもまたいい事が続く事がある。指名手配犯が逃げ切る。悪人がたらふく飯を食う。浮気女に彼氏ができる。女を誑かす男が社長になる。悪い事をしてもいい事が起こりうる。僕は死にたい気持ちを沢山部屋に充満させる。その部屋から飛び出ると晴れやかになる時がある。人が死んだ日に笑える時がある。祝日に泣く事もある。運命など特にないのだろう。潤いも乾きもきっと感じるだけで存在はしないのかもしれない。僕はきっと何処かで満たされているのだろう。でも僕は、何処か足りないと思っている。そしてそんな事を感じる世界は不幸だと思っている。そしてそれは僕に問題があるからだ。

何かを求める僕は、いつも有象無象の感情に支配される。僕は弱い人間だ。いつも嘘を孕んだ言葉に怯えている。それは真っ青で、夜になると真っ暗になる。月がチクタクと欠けていく。どんな形でも美しく輝きを放つ月は、欠けてばかりの僕は何故か、僕は何故か、なんでだろう。輝きを失っていく。月は欠けても美しい。それなのに僕は欠ければ欠けるほど光を失っていくのだ。ありあまる不安は行き場を失い、大きな黒に飲み込まれた。僕は、少し生きる意味を失う。そして月は輝いている。静寂が降り注ぐこの月の下で、僕はゆっくり死に向かいたい。

ピアノが優しい音を立てる。朝までゆっくり聴いていたいと思った。湿気ったタバコはワインレッドの副流煙を立ち上らせ空に消えていった。足を止めて聞いた足音は、自分の足音だった。孤独の音がスタスタと後ろに響いている。もう戻れない日々を思い出しても、時間経過と共に断片的になっていく。無駄な時間を分け合う恋愛という娯楽に似た愛だのなんだの言うあれ。じゃれ合いだの戯れだの言われるそれ。僕はそれを、それとなく平らげてみても、そこにはいつも何処か満たされない僕がいるのだ。夢も嘘も、何処か期待してしまうものがある。期待してしまうんだ。でもそれだけなんだ。それは寂しい響きを残した。見えないのはいつもそういった弱さだ。

星が落ちそうな夜に、星をぼんやり眺める僕、地獄に落ちそうな夜に、空を見上げる僕。奇跡が起こるなら僕は、奇跡が起こるなら僕は。無駄な祈りだとしても手を合わせるよ。そんな弱さを認める夜があったっていいじゃないか。星が降る夜に、ゆっくり、いつしかの思い出を忘れていく。

時の川を渡る船が、三途の川を船が泳いでいる。先生だ。先生がいる。先生が乗っている。先生は行きなさいと言った。それは生きなさいにも聞こえた。先生僕は死にたいです。先生、行かないでください。あぁ行ってしまった。先生は行ってしまった。僕は今日も生きる。空を見上げて見る。空はインディゴブルー。僕の血液。そうだ、夢を見よう。終わらない夢を見よう。インディゴブルーの夢を見よう。


インディゴブルー。青には「内面を見つめ直す」という意味がある。それがさらに深くなった青の「インディゴブルー」は、「真実を見る色」となるのだ。そして僕はそんな色の夢を見るんだ。

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