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第11回(最終回) 新たな物語の始まり
こうして、私が生まれて初めて出版する本の物語は幕を下ろす……はずでした。
しかし、物語はさらに続きます。
『さわり』は朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞の大手4誌の書評に取り上げられ、それぞれに好評を得ます。
それもあってか、1度ではありますが、無事、版も重ね、本を読んだ取材協力者の方々からも感謝されました。
ただ1つだけ、叶わない願いがありました。
それは、日本が誇る伝統
第10回 伝えたい想いが変わる
原稿の締め切りと出版時期の延期理由として、新たに重要な情報を入手できたことを話すと、担当編集者は「納得するまで書き直して、いい作品にしてください」と発売を延期してくれました。
原稿を書き直すにあたり、「鶴田櫻玉の琵琶活動」と「水藤錦穣の人生」という2つの穴を埋めるのと並行して、私はもう1つ、作品の質の向上に取り組みました。
それは「作品から音(音楽)が聞こえてこない」という課題のクリアでし
第7回 なぜ「佐宮圭」になったのか
友人からのアドバイスを受けて調べてみると、当時、未発表原稿で応募するノンフィクションの賞が主に2つありました。
それぞれの過去の受賞作をチェックすると、鶴田錦史の伝記には、集英社の「開高健ノンフィクション賞」よりも小学館の「小学館ノンフィクション大賞」の方が合っている気がしました。
早速、最終的な書き直しに取り組み、完成したのは2010年3月末日の応募締切(当日消印有効)前日でした。
第6回 ショックで髪が抜け落ちる
私は書き上げたばかりの鶴田錦史の伝記の原稿を、この仕事の依頼主である小さな出版社の副社長兼編集長のもとに送りました。
彼女はとても喜んでくれました。私の5年半に及ぶ苦労と努力に対するねぎらいの言葉のあと、「では拝読して、お返事しますね」と言いました。
しかし、いつまで経っても返事はもらえません。
彼女に呼び出されたのは、半年後の2006年10月。当時、ライター仕事が多忙を極め、5日間