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本日の一曲 19世紀までのクラシック音楽

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連載「本日の一曲」のうち、19世紀以前のクラシック音楽をまとめました。
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#本日の一曲

本日の一曲 vol.468 バッハ ヴァイオリン協奏曲 (Johann Sebastian Bach: Violin Concertos, 1723)

ヴァイオリニストにとって、バッハ、ハイドン、モーツァルトというドイツ・オーストリアのバロックから古典派の音楽は扱いがとても難しい音楽です。ヴィルトゥオーゾ的なテクニックは使わないので、音をたどるだけであればむしろ易しい音楽かもしれません。しかし、言ってみれば、リスナーの要求が極めて高い音楽なので、迂闊な演奏はできないのです。また、音符が少ない分、解釈の幅が広がってしまうので、ヴァイオリニストが一生かかって取り組まなければいけない音楽だとも言えると思います。 ヴァイオリンの初

本日の一曲 vol.456 ブニアティシヴィリ モーツァルト ピアノ協奏曲第23番 (Mozart: Piano Concerto No.23 K.488, 1786. Played by Khatia Buniatishvili)

カティア・ブニアティシヴィリ(1987年6月21日生)さんのモーツァルトの新譜が公開されましたので、ご紹介します。収録されているのはピアノ協奏曲第20番と第23番、ピアノ・ソナタK.545と、おそらくカティアさんが弾きたいものを弾いたのだと思います。 本日はその中から協奏曲第23番の第2楽章のアダージョをご紹介します。オーケストラは、アカデミー室内管弦楽団(Academy of St Martin in the Fields)、ブニアティシヴィリさんの弾き振りです。 この

本日の一曲 vol.452 サラサーテ ツィゴイネルワイゼン (Pablo de Sarasate: Zigeunerweisen, 1878)

パブロ・デ・サラサーテさんは、1844年3月10日にナバラのパンプローナで地元の砲兵楽団長ドン・ミゲル・サラサーテ(Don Miguel Sarasate)さんの息子として生まれました。 ナバラは現在のスペインとフランスの国境のスペイン側にあるスペインの自治州で、古くはナバラ王国が栄えた地域です。日本で最も有名なナバラ出身の人物は、フランシスコ・ザビエル(Francisco de Xavier)さんだと思います😊 サラサーテさんは、5歳のときから父親にヴァイオリンを学び、

本日の一曲 vol.440 ザイツ 学生協奏曲 (Friedrich Seitz: Pupil's Concertos for Violin and Piano, 1890s)

フリードリヒ・ザイツフリードリヒ・ザイツさんは、1848年6月12日、現在のドイツ・テューリンゲン州ギュンタースレーベンの農家の子として生まれ、まだ十代の1866年に勃発した普墺戦争に従軍しました。 終戦後の1869年、ゾンダースハウゼン宮廷管弦楽団のヴァイオリニストとして採用、1876年にはマクデブルク管弦楽団のコンサートマスターとなり、マクデブルク音楽学校を創立しました。 本日ご紹介する学生協奏曲5曲は、マクデブルクで出版されていますので、この音楽学校の生徒さんに使

本日の一曲 vol.437 モーツァルト ガンツ・クライネ・ナハトムジーク (Wolfgang Amadeus Mozart: Ganz kleine Nachtmusik K.648, 1760s)

今年、2024年の9月にモーツァルトさんの新曲が発表されました。と言っても、古い楽譜が発見されたということで、最後の作品とされる「レクイエム(Requiem, K.626)」以後に作曲された曲ということではありません。 モーツァルトさんの作品には、オーストリアの音楽学者ルートヴィヒ・リッター・フォン・ケッヘル(Ludwig Ritter von Köchel, 1800/1/14~1877/6/3) さんが整理した目録の番号、ケッヘル番号と呼ばれ、数字の前に K. とか K

本日の一曲 vol.433 マーラー 交響曲第2番 復活 (Gustav Mahler: Symphony No.2 "Resurrection", 1894)

マーラーさんの曲紹介の4回目です。本日ご紹介するのは長大な交響曲第2番「復活」の第5楽章になりますが、これまでご紹介した大地の歌の第3楽章「青春について」、交響曲第5番の第4楽章「アダージェット」、交響曲第1番の第3楽章を併せて聴いておけば、マーラーさんのほかのどの曲についても楽しく聴けるのではないかと願っています。 しかし、「復活」の第5楽章はこの楽章だけで30~40分あるので、ちょっと辛抱して聴かなければなりませんが、この楽章だけで、オーケストラ、ソプラノ独唱、アルト独

本日の一曲 vol.426 マーラー 交響曲第1番 (Gustav Mahler: Symphony No.1, 1899)

マーラーさんは、1878年7月にウィーン大学を卒業した後、ピアノ教師、劇場の指揮者など下積みの時代に入ります。1886年に26歳でライプツィヒ歌劇場の楽長となり、1888年の28歳のときに交響曲第1番の第1稿を完成させますが、何度か改訂し、1899年の改訂が最終版になっています。 その間、1888年10月にブダペスト王立歌劇場の芸術監督に就任、1889年に両親が亡くなり、1891年にハンブルク歌劇場の第一楽長に就任、1894年に交響曲第2番「復活」が完成、1895年に弟オッ

本日の一曲 vol.420 ショパン 前奏曲第15番 雨だれ (24 Préludes Op.28 No.15 "Raindrop", 1839)

ピアニストの藤田真央(1998年11月28日生)さんの新譜が「72 Preludes」ということで、何の前奏曲かと思いきや、ショパン(Frédéric Chopin, 1810年3月1日生~1849年10月17日没)さんの作品28の前奏曲24曲、スクリャービン(Alexander Scriabin,  1872年1月6日生~1915年4月27日没)さんの作品11の前奏曲24曲、そして、矢代秋雄(1929年9月10日生~1976年4月9日没)さんの24の前奏曲の合計72曲の前奏

本日の一曲 vol.418 パガニーニ 24のカプリース (Nicolò Paganini: 24 Caprice)

ニコロ・パガニーニさんは、1782年10月27日に現在のイタリアのジェノヴァで生まれ、1840年5月27日にフランス・ニースにて57歳で亡くなりました。パガニーニさんの人生の前半はイタリアの地で過ごし、45歳の1828年3月のウィーンから始まり51歳の1834年6月のロンドンで終わる怒涛のヨーロッパ・ツアーの後、イタリアに戻り、ニースでの死までの晩年を迎えます。 パガニーニさんの楽曲の楽譜は晩年のときに大部分を焼却し、また死後残された楽譜も散逸してしまって、あまり残っていま

本日の一曲 vol.414 アーノンクール モーツァルト 交響曲第39番 (Wolfgang Amadeus Mozart: Symphony No.39 K.543, 1788 played by Harnoncourt & Concentus Musicus)

モーツァルトさんの交響曲第39盤は、1788年の夏に作曲された最後の3曲の交響曲(第39番、第40番、第41番)のうちの1曲です。第39番が6月26日、第40番が7月25日、第41番が8月10日に完成したとされています。 今回ご紹介する動画は、ニコラウス・アーノンクール(Nikolaus Harnoncourt)さん指揮のアーノンクールさんの手兵であるウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(Concentus Musicus Wien)による演奏で、2014年のオーストリア・

本日の一曲 vol.411 ローデ ヴァイオリン協奏曲など (Pierre Rode: Violin Concertos, 24 Caprice, 1813)

ピエール・ローデピエール・ローデさんは、1774年2月16日にフランスで生まれたヴァイオリニスト・作曲家で、ヴィオッティさんの弟子に当たります。 ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)さんのヴァイオリン・ソナタ第10番(Violin Sonata No.10 Op.96, 1812)は、ルドルフ(ルドルフ・ヨハネス・フォン・エスターライヒ)大公に献呈され、大公はローデさんと初演を行いました。 アンネ=ゾフィー・ムター(Anne-Sophie Mutt

本日の一曲 vol.405 シェーンベルク 浄められた夜 (Arnold Schönberg, Verklärte Nacht Op.4, 1899)

「浄められた夜(浄夜)」は、アルノルト・シェーンベルク(1874年9月13日生)さんが25歳の時である19世紀末の1899年に作曲した後期ロマン派の曲です。シェーンベルクさんは、この後、無調音楽、12音音楽へと発展していくのですが、若い頃は師であるアレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー(Alexander von Zemlinsky)さんの指導の下、ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms)さんとリヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)さんの影響を

本日の一曲 vol.397 トスカニーニ ロッシーニ ウィリアム・テル序曲 (Gioachino Rossini: Ouverture de Guillaume Tell, 1829 by Toscanini & NBC so)

ジョアキーノ・ロッシーニさんは、1792年2月29日、イタリア・ペーザロに生まれたオペラ作曲家であり、美食家でもありました。1810年の18歳のとき、オペラ「結婚手形」で作曲家としてデビューし、1829年の37歳のときに最後のオペラ「ウィリアム・テル」を作曲するまで、40曲近いオペラを作曲しました。ただ使い回しが多かったことはご愛嬌です。 ロッシーニさんは、最初イタリアで活動していましたが、1823年のオペラ「セミラーミデ」を最後にイタリアには別れを告げてフランスに渡り、1

本日の一曲 vol.378 ドヴォルザーク 交響曲第8番 イギリス (Antonín Dvořák: Symphony No.8, 1889)

アントニン・ドヴォルザークさんは、1841年9月8日、チェコ・北ボヘミア・ネラホゼヴェスに生まれ、1904年5月1日にプラハで62歳で生涯を閉じた作曲家です。系譜としては、後期ロマン派、チェコ国民楽派に属します。 ドヴォルザークさんで最も有名な曲は、ドヴォルザークさんのニューヨーク時代に作曲した「新世界より」の第2楽章の「家路」や「ユーモレスク」第7曲かと思います。 本日ご紹介するのは、渡米の前に作曲された1889年の交響曲第8番「イギリス」です。 愛称の「イギリス」で