本日の一曲 vol.452 サラサーテ ツィゴイネルワイゼン (Pablo de Sarasate: Zigeunerweisen, 1878)
パブロ・デ・サラサーテさんは、1844年3月10日にナバラのパンプローナで地元の砲兵楽団長ドン・ミゲル・サラサーテ(Don Miguel Sarasate)さんの息子として生まれました。
ナバラは現在のスペインとフランスの国境のスペイン側にあるスペインの自治州で、古くはナバラ王国が栄えた地域です。日本で最も有名なナバラ出身の人物は、フランシスコ・ザビエル(Francisco de Xavier)さんだと思います😊
サラサーテさんは、5歳のときから父親にヴァイオリンを学び、才能を開花させました。12歳の時にパリ音楽院のジャン・デルファン・アラール(Jean-Delphin Alard, 1815年3月8日生~1888年2月22日没)先生に師事しました。
そして、16歳の1860年には、コンサート・ヴァイオリニストとして、パリでデビューし、以降、世界各地でコンサートを行い、その名を馳せました。
本日ご紹介する「ツィゴイネルワイゼン」はおそらくサラサーテさんの曲の中では最も有名な曲であると思われます。その曲の出だしの「突然に悲劇が襲う」ような曲想は、効果音として頻繁に使われています。
「zigeunerweisen」とは、ドイツ語で「ジプシーの方法(歌)」という意味で、作曲の1878年当時流行っていたジブシーの音楽に着想を得たものだと思います。
その冒頭の悲劇は、何と行っても管弦楽伴奏のほうが迫力があると思います。テノール歌手のプラシド・ドミンゴ(Placido Domingo, 1941年1月21日 生)さんがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)を指揮した演奏で、ヴァイオリン・ソロは、ドロシー・ディレイ(Dorothy Delay, 1917年3月31日生~2002年3月24日没)さん門下のアメリカ人ヴァイオリニスト、サラ・チャン(Sarah Chang, 1980年12月10日生)さん、27歳のころの演奏です。
もっとも、ヴァイオリニストにとっては定番の曲なので、ピアノ伴奏で演奏される機会の方が多いでしょう。2002年生まれ、グラナダ出身のマリア・ドゥエニャス(María Dueñas)さんのヴァイオリンとロバート・クレク(Robert Kulek)さんのピアノによる演奏です。
そして、この曲の最も有名なエピソードは、サラサーテさんご自身が演奏した1904年の録音が残っている、ということでしょう。ピアノは、スペインのヴァイオリニストであるフアン・マネン(Juan Manén, 1883年3月14日生~1971年6月26日没)さんだとされています。
この録音には、2部が終わったところでサラサーテさんの「謎のうめき声」が録音されており、3部が省略されて4部に入るのですが、この録音をモチーフにして、内田百閒(1889年5月29日生~1971年4月20日没)さんが短編小説「サラサーテの盤(1948)」を書いています。文庫版で20頁くらいの小品です。
そして、1980年、この「サラサーテの盤」を原作にした鈴木清順(1923年5月24日生~2017年2月13日没)監督の映画「ツィゴイネルワイゼン」が公開されました。名画ですが、エンターテイメント系ではありませんので、ご注意ください。
映画にはサラサーテさんの録音が使われていますが、「ツィゴイネルワイゼン」の曲自体が使われていることはなく、音楽としては、石川晶(1934年11月10日生~2002年2月10日没)さんのドラムが使われたりしています。
(by R)