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『七十二候』綿柎開‥わたのはなしべひらく


『綿柎開‥わたのはなしべひらく』
                       8月23日から27日頃


二十四節季では『処暑』となり
少しずつ少しずつ厳しい暑さが緩み
朝夕過ごしやすい時期となりました。



夏に背を向け‥
さようならまた来年。


秋さんこんにちは。
そんな気持ちになります。


もう少しすればまた
秋見つけをしに公園へ行ったり
お散歩したり‥

わたしはそんな何気ない日常が
とても好きです。




当たり前に過ぎていく毎日の繰り返しに
時にうんざりしたり
時に逃げ出したくなったり‥。


それでもやはり心帰る所は
『今ある場所』だと
知っているからかもしれません。





さて、夏と秋がバトンタッチするこの時期に
ぴったりのこんな和歌があります。


夏と秋と 行きかふ空の 通ひ路は かたへ涼しき 風やふくらむ

古今和歌集 凡河内窮恒
おおしこうちのみつね


《現代語訳》
夏と秋とが移り変わる空の通り道は
片方で今ごろ涼しい風が吹いているのだろうか




夏と秋が「お疲れさま」「次よろしくね」と
すれ違いざまに挨拶を交わす‥
そんな空の通り道があるのかな。

わたしはこの『行き交う空の通ひ路』
という箇所を読んだ瞬間から
凡河内窮恒の世界に引き込まれてしまったのです。



そして‥
『かたへ涼しき風やふくらむ』と続くのも
情緒的でとても好きです。



片方では秋めいた涼しい風が吹き
もう片方では夏の残り香が
漂っているのでしょうか。




移り行く季節の真ん中で
青い空を見上げれば


もしかしたら
すれ違うほんの一瞬に
出逢えるかもしれませんね。


そして、この歌の作者である凡河内躬恒の背景に関する書物に目を通した時


いつも決まって引き合いに出されるのが
同じ古今和歌集の選者であり歌人である紀貴之の存在。


二人を比較する記事も多いでしょう。


深い友情を育む中には、ライバル心も
あったのかもしれません。



わたしには先ほどの和歌に
そんな気持ちも見え隠れするように
感じてなりません。



夏と秋と 行きかふ空の 通ひ路は
君と僕が移り変わるこの通り道は


かたへ涼しき 風やふくらむ

君の方はいい風が吹いているかい?
僕の方はね‥。。



歌人成り立ちや、この時代の背景から
想いを汲み、短い歌の中から
その気持ちを想像する‥。

読み手にとって
それが和歌や短歌の
醍醐味のひとつといえるでしょう。


詩にも同じことが言えると思うのですが
やはりそこが好きで
読んだり書いたりしてきたように思います。



そしてこれからも
わたしは書いては読み
書いては読み‥


また誰かの気持ちを
読み解くようにその世界へと
想いを馳せるのでしょう。


そしてわたしの気持ちを
読み解いていただけたらと
願うのでしょう。




 


さて話が逸れてしまいましたが

『綿柎開‥わたのはなしべひらく』のお話を。



ワタの花は主にクリーム色の花を咲かせます。フヨウやムクゲの花似ていますよね。


一日すると萎んでしまう‥
短命のお花です。




花が終わり、秋になると熟した果実が
弾け白い綿毛が現れ
花のように見えることから


綿花「めんか」と呼ばれています。


綿花は先ほどの花(ワタ)ではなく
モフモフの
果実のことだったんですね。

 





この綿を包む花のガク=柎が
開き始める頃となりました。



花として咲く時間は短くとも
その後、姿を変え、形を変え

ガクが開き始めるこの時期から
ふわふわの白いお顔を見せてくれます。


コットンボール(綿花)という
かわいらしいネーミングも

暑い夏には見るだけでも
暑さが増すような‥
そんなモフモフとした素材も 


これからの季節には
恋しいような‥触れたいような‥。


そんな季節が
もうすぐやって来ますね。




七十二候に使用している写真は
すべてphotoACからのものとなります。





2021年版の‥
詩的な記憶‥七十二候です。











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