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風見鶏

山の尾根に立つ一本の風見鶏
風に押され どちらへも揺れながら
私の背中は ただ「支えること」だけを
覚えてしまった

名前を呼ばれるたび
風の力に身を任せ
「姉」としての方向を指し示す
迷うことも 止まることも許されず

けれど私は知っている
風見鶏の内側には
錆びついた心が隠れていることを

誰かがそっと手を伸ばして
私の背を撫でる日が来るならば
その手の温かさで
錆は剥がれ ただの私に戻れるだろう

押されるばかりの背中ではなく
撫でられることで
初めて立ち止まり 空を見上げられる

私は今日も風に揺れるけれど
背中を撫でるその手が
私を赦してくれる日を
ひそかに待ち続けている。


あとがき
長女として生まれ、姉として生き、母となった女性の詩。
常に誰かを支える役割を担ってきた主人公の心情を描いています。
母となった今でも「ねぇちゃん」と呼ばれる主人公。
押され続ける背中は、前へ進むことを求められ、役割を果たすために強くあらねばならないというプレッシャーを象徴しています。

しかし、主人公が本当に求めているのは、「押されること」ではなく「優しく背中を撫でられること」でした。それは、自分が役割ではなく、一人の人間として認められ、優しく労わられる瞬間を指しています。
「赦してくれる日」は、自分自身の弱さや本当の気持ちを受け入れ、役割から解放される希望の象徴です。

私、長女です('◇')ゞ


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SAI - 青の世界と物語
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