
ダブリンと心。クライベイビーとLUAS。
違う国に越して、ケアを怠ってしまったことがある。
メンタルヘルス
東京にいた頃、子供の頃から感じていた生きづらさの理由を見つけたくて、
メンタルクリニックに行った。
2つほど、持っている傾向を提示され、今まであった疑惑が本当になった。
ダブリンに越して半年が過ぎた頃、
自分の精神状態の悪さにアクセルがかかった。
理由は二つ。
そもそもメンタルケアを怠っていたことと、
忙しなく変わる環境に脳が追いつかなかったこと。
ダブリンの街。
多くの人種が行き交うシティーセンター。
混ざり合う人種。
英語が得意な人、そうでない人…
オープンな視野を持つ人、自分の文化にこだわる人…
自分が立っているフィールドは、完全な無法地帯なのだった。
パートナーにはたくさん迷惑をかけたし、
改善した今でも時々困らせていると思う。
パニック発作。クライベイビー。
感情のコントロールができず、言われてもいない悪い言葉が脳を駆け巡る。
それがさらにアクセルをかけて、喋ることもできないほど泣き喚く。
もはや叫びに近い泣き声が、口からボロボロと出てきて
自分自身でさえも、びびってしまうのだ。
薬も何度も何度も考えた。
何度も何度も、その筋の情報を持っている友人に尋ねては
「今日知り合いに連絡するね」「来週連絡するね」
と、のらりくらり躱されてしまった。
自分の扱い方がわかってきた今でも、
薬は視野に入れている。
あまりにも無茶でストレスがない日でも
顔中がただれてしまっている。
身体的にきてしまっている。
パートナーに何度も「クライベイビー」と
ネタにされた。ネタにしてくれてるうちは花だ。
今ならまだ
変えるチャンスがある。
今ならまだ、パートナーはそばにいてくれる。
人を変える原動力はシンプルに他人だったりする。
「自分が辛い、自分が痛い、自分が悲しい」だけじゃ
最終的に自己否定的な考え方になってしまって、
むしろ自分が辛い状況が
気持ちよくなってしまったりする。
心地良くなってしまったりする。
でも「自分のせいでこの人が辛い」
「自分のせいでこの人が悲しい」
「自分のせいでこの人が苦しんでる」
とかだと
案外動けたりする。
でもそれと同時に
本当に救えない状況の人は
周りも見えないから自分が周りを苦しめていると気づかない。
自分が生きるので精一杯だから
周りを見て我が身を治すことなんてできない。
メンタルヘルスとは
本当に多種多様で
本当にたいへんな問題なのだ。
でも海外に来て思うのは、
みんなそういうことにオープンだ。
鬱や精神疾患をジョークにしたリール動画を見ていて
なんてはっちゃけているんだろう
と思ったと同時に、
同じ気持ちを持つ人を
軽い気持ちにさせてくれるものだと思った。
そういう文化は
好きだ。
自分が酷いメンタルヘルスに苦しみ始めて
しばらく立った時、
わかったことがあった。
自分は何も試していないし
変えようと努力をしていない。
自分のメンタルヘルスは病的だ
というコンフォートゾーンにこだわって
抜け出すことすらしようと思わなかった。
それに気づいたのは
パートナーに自分の職場であった問題をシェアしていた時だった。
「何回も同じ話ばかりしているよ」
頭が真っ白になった。
それを言われるまで、自分が繰り返し同じ話をしていると気づけなかった。シンプルに気づけなかった。
怖かった。
自分のメンタルは
ここまで散らばったものになってしまったのだと思った。
気づかないうちにパートナーの肩に
自分に降りかかった嫌な事や嫌な言葉を
勝手に重りにして積み上げていた。
自分は自分自身との会話が足りないと気づいた。
自分を顧みないから
自分の問題に気づけない。
気がつけば白紙のノートに自分の思いや
あぶれた言葉を書き綴っていた。
酷くて、醜くて、汚い言葉たちだった。
痛くて辛い攻撃だった。
自分はそんな言葉たちを脳に溜め込んでいたのだ。
パンクする前に気づけたのは幸いだった。
機能不能になる前に
気づけてよかった。
LIDLで買ったチョコレートクロワッサンが
甘くてサクサクで身に染みた。
自分はいろいろな小さな幸せを見逃していた。
小さな心遣いも
小さな優しさも
自分のことで精一杯で
忘れてしまっていた気がする。
…
数週間前。日記より。
ホームレスのような乱れた身なりの女性。
それを助けるまるっと太ったアイリッシュの男性。*LUASにて。
泣きながら、ボロボロの女性。体をガラケーのように折り曲げて、向かい合わせの電車の席でうずくまっていた。横にすでにいた男性は、乗るときに運賃を出してあげたのか、最初から隣に腰掛けていた。
彼女の向かいに座る乗客が電車を降り、顔を上げた女性。
比較的若い女性だった。
男性は彼女の顔を拭い、肩を貸して眠らせてあげていた…
降りる場所になったようだ。「手伝わせてくれ」と、彼女のカバン代わりの、大きめなスーパーのビニールバックを持ち上げた男性。
ドラッグアディクトなのか、足もまともに動けない彼女を、背後から支え、「気をつけて」とサポートする男性。
女性は終始申し訳なさそうな表情をしていた。
ごめんなさい。
小さく呟いた声が聞こえた。
男性はただ真剣な表情で、
自分の娘でもおかしくなさそうなその女性を
大きな暖かそうな手で支えていた。
(*LUAS:ダブリンのシティーセンターを通る路面電車)
続…
サムネイル:The Light On The Hill (2024) uta.
Also...
アートデュオ、ウタノキ.
双方向のアート制作を目指す二人組。コトバ担当のアキホとアート担当のウタで制作を行う。https://brown508329.studio.site/#top
2024年にはアートギャラリーで個展を開催。
https://summeroflove.jp/illustration/948/