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内藤ゆき「炊飯器でお米を炊いて炊けたら終わる演劇『夏の毛になる』」普通炊き公演の感想
盛夏火の『熱病夢見舞い』を8月9日に見た。もともとマーライオンや九龍ジョーさんが関わっている(?)こともあって、盛夏火という名前を知ってはいたものの、上演を見たのは初めてだった。
いや、なんというか、すごかった。2019年に九龍さんが『夏アニメーション』について「巧拙を超えた演劇の魔法が降り注ぐ」と書いていたけれど、ほんとうに、まさにそんな感じだった。正直に言って、演技はバラバラで、なかなかめ
したため #8 『擬娩』の感想|他者の経験を想像し模倣してみること、あるいは演技についての演劇
したため#8『擬娩』を見た。せりふにはユーモアと笑いがふんだんに含まれていたものの、緊張感のある演技と展開が常に、最後まで持続していて(それを象徴していたのが、ステージに張りめぐらされたテグスだろう)、笑っていいのやら、いけないのやら……と混乱しながら見ていた。中盤からは、めちゃくちゃ笑ってしまったけれど。
擬娩。妻の出産を夫が模倣する習俗のこと、らしい。
この変わった風習は、作品の主題で
ピーピング・トム『マザー』の感想|死の絶対性が生きる者を襲い、波打つ感情は激しいダンスへと変わる
ベルギーのダンスカンパニー、ピーピング・トムの『マザー』を見た。
私は舞台芸術や演劇については素人なので、ピーピング・トムの公演を見るのは当然はじめて。まずは、ユーモアがふんだんに盛りこまれていたことに驚いた。
けれども、それと同じくらいに悲痛な感情が詰めこまれた作品で、生と死をめぐる表現は、そういう表現に対して最近、特に敏感になっている自分にとって、心理的にけっこうしんどくもあった。それ
額田大志演出、サミュエル・ベケット『いざ最悪の方へ』の感想|テクストと俳優の声、身体との死にものぐるいの格闘
額田大志演出、サミュエル・ベケットの散文を用いた演劇……と言っていいのか、不思議な公演『いざ最悪の方へ』を神保町のPARA theaterで見た。
『いざ最悪の方へ』を見て、もっとも強く感じたことは、ベケットによって書かれたテクスト、しかも翻訳されたテクストとの格闘だった。ベケットのテクストとの、くんずほぐれつの、死にものぐるいの、取っ組み合いの喧嘩が、ひたすら上演されていたのだ。
『いざ
屋根裏ハイツ7F公演『父の死と夜ノ森』の感想|生、死、暴力の偶然性、そして死の不可逆性
STスポットで屋根裏ハイツ7F公演『父の死と夜ノ森』を見た(この上演も、岡崎藝術座の『イミグレ怪談』と同じく、ハスキーさんに教えてもらった)。おもしろかった。……というか、ラストシーンがなんとも怖くて、鳥肌が立った。
『父の死と夜ノ森』で語られたのは、生と静かに対峙する、いくつもの死や暴力だった。生がきわめてランダムで偶然であるように、生に振りかざされる暴力も、それによる(または、それによら
岡崎藝術座『イミグレ怪談』の感想|幽霊はボーダーを越えるのだろうか?
岡崎藝術座の『イミグレ怪談』を見た(公演のことは、友人で戯曲を書いているハスキーさんに教えてもらった。わたしは演劇には疎いので、ハスキーさんや同級生の俳優、豊島晴香さんに色々と教えてもらっている)。終始、なんだか軽薄で、おもしろおかしくて、かなりニヤニヤしてしまった。けれども、そのユーモアや軽さと裏腹に、劇のテーマは侵略と移民、植民、戦争などで、かなりヘビーかつアクチュアルだった(「最近、おんな
もっとみるYPAM、ヤン・ジェン『ジャスミンタウン』の感想|輝くダンスと言葉が交差させるアイデンティティ、ルーツ、歴史、土地
最近、演劇やダンス、舞台作品などを以前よりも見ています。わたしは公演を見た帰りに電車の中などでその感想をツイートすることが多いのですが、せっかくなので、それらをアーカイブしておこうと思いました。というのも、自分は過去のツイートをすぐに消してしまうくせがあるから。直近のもので無事に残っていたのは、2022年12月10日にKAAT 神奈川芸術劇場で見た『ジャスミンタウン』の感想でした。
その前に、
「コンビニのコーヒーはうまいようでなんとなくさみしい」。サニーデイ・サービスの“コンビニのコーヒー”という曲について考えること
サニーデイ・サービスのニューアルバム『DOKI DOKI』が、1か月ほど前にリリースされた。最高のアルバムだと思う。
もちろん、前作の『いいね!』も大好き。ただ、出た当時は痛快で爽快なロックンロールレコードだという印象で驚いたけれど、もっと突き抜けた『DOKI DOKI』がリリースされた今になってみると、『いいね!』はブルーな陰りがある作品のようにも思える。新しいドラマーの大工原幹雄さんと録音
Roots of 電気グルーヴ ~俺っちの音故郷~(仮)#3: Daniel MillerとMute Recordsに登場した楽曲を紹介
電気グルーヴのYouTube番組『Roots of 電気グルーヴ ~俺っちの音故郷~(仮)』の第3回がアップされました。テーマは「Daniel MillerとMute Records」。
わたしは毎回QJWebでそのテキスト版を担当しているのですが、今回、原稿に仕込んでおいたアンオフィシャルなYouTube動画がすべてカットされてしまったので、ここではそれらと記事に掲載された楽曲をあらためて紹介
非英語圏/非西洋の音楽のオールタイム・フェイバリット・アルバム30について その1
ここでは、タイトルにあるとおり、わたしの「非英語圏/非西洋の音楽のオールタイム・フェイバリット・アルバム30」について書きたいと思います。
そもそも、わたしは、noteというか、ブログですらきちんと続けたり、使いこなしたりできたことがないわけですが、最近のあれやこれやで、noteをつかうのが早くもいやになってきました(そう思っているひとも多いのでは)。とはいえ、代替のプラットフォームも思いつ