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【書評】楠木健『絶対悲観主義』 大事なのは期待しないこと

ロッシーです。

楠木健の『絶対悲観主義』を読みました。

非常に面白かったです!

「絶対悲観主義」という言葉だけを聞くと、なにやら非常にネガティブな印象を受けるかもしれません。

しかし、本書を読めば、それが間違いだと分かるでしょう。

絶対悲観主義とは何か?それは、

「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもない」という前提で仕事をする

という哲学です。

本書を一言でまとめると以上です。

ただ、それを物語る著者の文章が面白いので、ぜひ興味のある方は読んでみてください。絶対悲観主義については、本書の第1章に記載されているので、そこだけでも読む価値があると思います。

世の中には、「全力で頑張れ!」「諦めたらそこで試合終了だよ」「とにかくやり抜け!」という言説にまみれています。

まあ、この煽り運転がすさまじい。

でも、それらは楽観論なわけです。なぜなら、「頑張ればうまくいく」「諦めなければうまくいく」「やり抜けばうまくいく」と考えているからです。

でも、そうではない。頑張ろうが、諦めなかろうが、やり抜こうが、うまくいくことなんてない。そう考えるのが絶対悲観主義なのです。

「うまくいくことなんてない」

という「構え」を崩さない。そのうえで仕事をする。そこには多大なメリットがあります。

その根拠について以下のように4象限で整理してみましょう。

  1.  うまくいくと思っていて、うまくいった
     ➡(想定内の)いいね!

  2.  うまくいかないと思っていて、うまくいった
     ➡望外の喜び!!

  3.  うまくいくと思っていて、うまくいかなかった
     ➡挫折

  4.  うまくいかないと思っていて、うまくいかなかった
     ➡(深みのある)いいねぇ・・・


1と3は、うまくいくと思っていたケース
2と4は、うまくいかないと思っていたケースです。

結果がどちらであっても、後者のほうが喜びの総量は大きくなります

なぜなら、期待値を下げているからです。

これは投資にも通じる考え方です。重要なのは「期待値」です。いくら投資により収益が出たとしても、期待値と比較しなければ意味がありません。

仮に投資の成果が120だったとしても、もともとの期待値が100の場合と、10の場合とでは、喜びの度合いが違いますよね。それと同じです。

また、ここで注目してほしいのは、4のケース(うまくいかないと思っていて、うまくいかなかった)です。

そのような場合、深みのある「イイねぇ・・・」ができると著者は言っています。車の中で、缶コーヒーを片手に、目を細めて遠くを見ながら、

「そうは問屋が卸さねぇよなぁ・・・」

などと、しみじみとつぶやくところをイメージしてみてください。なんかハードボイルド感満載で面白いです(笑)。

また、著者のレベルになってくると、この「イイねぇ・・・」を味わいたいがため、むしろ、うまくいかないほうが良くなってくると言います。さすがにそれはどうかと思いますけど(笑)。

要するに、絶対悲観主義により、うまくいかなかったとしても、3のように挫折したりポキッと心が折れてしまうようなことがないわけです。だって、もとからうまくいかないと思っているわけですから。

もちろん、だからといって何も努力もせずにしていればいいわけではありません。きちんと仕事としてやることはやる。でも、その結果について過大な期待をしない。それが重要なのです。

本書で、フランスの思想家のベルナール・フォントネルの言葉を紹介しています。

幸福の最も大きな障害は、過大な幸福を期待する事である

ベルナール・フォントネル(1657年- 1757年)

まさにこれは絶対悲観主義の考え方そのものだと著者は言います。

期待しないこと。

これは本当に大事だなぁと思います。

仕事や人間関係で発生する悩みのほとんどは、過度な期待から生じます。

それなら端から期待しなければいい。うまくいくと期待しなければいい。

noteもそうです。

最初から、自分ごときが書いた記事に、「スキ」をもらえるなどと期待しなければいいのです。

そう、全ては期待しないことから始まる。

絶対悲観主義、皆さんも取り入れてみてはいかがでしょうか。

あ、ただし「夢に向かって全力投球!」みたいなのが好きな人には向かないらしいのでご注意下さい。


最後までお読みいただきありがとうございます。

Thank you for reading!


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