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ニューヨーク散財日記
こっそりニューヨークに行ってきた。
今の時期に行くなんてそんな、と言われそうだだが、このまま待っていても円は上がらない。もっと下がって1ドル360円時代も来るかもしれない。それに、バイデンが勝っても、トランプが勝っても、国の分断が進んで内戦状態になり、大都市は危険な場所になる可能性もある。アレックス・ガーランドの「Civil War」を映画館で見て、洒落にならないと思った。(IMAXで臨場感
優雅な読書が最高の復讐である/Lives of the wives
作家というのは、24時間、他のことは全部閉め出して、面倒な雑事は人にお任せして、ただただ文章を書いていたい、自分のビジョンについて考えて、それ以外のことは何もしたくない種族、しなくてもいい特権的な人たちなのだという神話が長いことあって、そういう人にはどうしたってかしずく人、相手の仕事を全面的にサポートする人が必要になってくる。(少なくともある時期まで)「作家の妻」というのはそういう人たちだった。
もっとみる優雅な読書が最高の復讐である/Either/Or
読んでから少し時間が経ってしまったけれど、The idiotに続いて読んだエリフ・バトゥマンのEither/Orについて書いておこう。
The Idiotと同じく作者のアルター・エゴ、セリーンのハーバード大学2年目の物語だ。
「その人たちはHotmailというものの存在を知らないの?」という台詞やフージーズのKilling me softly with his songのシングルカセット(そう
優雅な読書が最高の復讐である/The Idiot
エリフ・バトゥマンの「イディオット」は、ミランダ・ジュライが激賞していて、グレタ・ガーウィグもお気に入りの一冊に選んでいたので、気になっていた本。
ピューリッツァー賞の候補にもなったし、そのうちに翻訳されるだろうと思ってリストには入れていなかったが、インスタのコメントでお勧めしてくれる人がいたので読んでみた。
舞台は1996年のハーヴァード大学。主人公のセリーンは(作者と同じく)トルコからの移
優雅な読書が最高の復讐である/A Sunday in Ville-d’Avray
11月。
ソフトの立ち上がりが悪く、その間にちょっとだけ目を通そうかと思った小説を一気読みしてしまう。タイトルは「A Sunday in Ville-d’Avray」。ドミニク・バルべリスというフランス女性作家の英訳本である。
今年、アルフレッド・ヘイズの「In Love」という小説に夢中になり、感想を書いている人はいないかとサーチしていて見つけたブログで、この小説を見つけた。アンニュイな日
優雅な読書が最高の復讐である/レイチェル・カスク
11月。
朝、レイチェル・カスクのJusticeという短編を読んだ。
この作品におけるJusticeという言葉を訳するのは難しい。正義や道理、というのとも、報いというのとも違い、その全部の意味であるかのようでもある。
レイチェル・カスクの小説の特徴である、長い独白が占める割合の大きな小説だ。話している人間はカスク本人らしき作家にインタビューをしに来た女性の記者。カスクは何年か前にもこ
優雅な読書が最高の復讐である/Marie Calloway
10月。
レナ・ダナムのツィートで、BuzzFeed Newsにマリー・キャロウェイについての長い記事が出たのを知った。
今から十年ほど前、マリー・キャロウェイはインディ文芸とインターネットの蜜月期が生んだトリック・スターだった。
タオ・リンが主宰していたMuuu Muuu Houseのウェブに彼女の「エイドリアン・ブロディ」が発表された時のスキャンダルを覚えている。
それはマリー・キャロウェイ
優雅な読書が最高の復讐である/2020年の読書
The Millionsが年末に掲載する、作家やライターたちのその年の読書の記録シリーズが好きだ。
そっけない新刊本のベストテンよりもずっと面白い。
新刊本の紹介やランキングは仕事で頼まれることも多いので、プライベートでやるならばこの形式の方がいいなとずっと思っていた。
でも、2020年は色々と落ち着かない年で、後半は体調を崩したこともあってあまり本が読めなかった。だけど、だからこそここで自分が読
優雅な読書が最高の復讐である/Lonely City
(2016年にFbに書いたテキストを転載)
ただ一人でいるだけでは、人は孤独を感じない。
孤独は他者との関係性の中で生じる。拒絶された時。無視される時。誤解された時。肉体的な触れ合いが持てない時。当然の権利を迫害された時。仲間として認められなかった時。居場所を見つけられない時。そこから生まれる苦痛、疎外感、被害妄想、渇望、悲しみが孤独となる。孤独は他者が多く介在する場所、都会において生まれる
優雅な読書が最高の復讐である/Paris Reviewのポッドキャスト
1月。
ナイキで買った新しいランニング・シューズでラン初め。
走りながらParis Reviewのポッドキャストを聞いた。アレクサンドラ・クリーマンという作家が朗読する「Fairy tale」という短編が面白かった。
ふと気がつくと主人公は両親と見知らぬ男と一緒に食卓についている。男は彼女の婚約者だという。それから彼女の恋人や元恋人を名乗る男が次から次へと現れる。この中から誰か一人、
新年1月6日発売! サリー・ルーニー2作目の待望の邦訳『ノーマル・ピープル』(山崎まどか訳)訳者あとがき公開
2023年1月6日、早川書房からサリー・ルーニーの2作目の小説『ノーマル・ピープル』(山崎まどか訳)の邦訳が発売されます。発売まで約1週間。『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』を読んで『ノーマル・ピープル』の発売が待ち遠しい方も、読んではいないけれど、サリー・ルーニーってどんな作者かちょっとだけ興味のある方も、英語圏だけで150万部超の『ノーマル・ピープル』の内容がちょっとだけ先取りできる「訳
もっとみるデビュー長篇で世界を席巻! サリー・ルーニーってどんな作家? 『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』訳者あとがき(山崎まどか)
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『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』は現在、世界で最も注目されている新世代作家の一人、サリー・ルーニーの長篇デビュー作である。
2017年にフェイバー&フェイバー社からこの小説が発売された時、彼女はまだ26歳だった。タイトルの通り、友人同士のおしゃべりやメールのやり取り、チャットなどの“会話”に溢れた独特のスタイルが注目を集め、『カン