#感覚
エッセイ「感覚」1.触れる
字を書くときのペン先がノートに触れる、あの感覚。サッサッという音と同時に、ジワッと腕にまで伝わるノートとの触れ合い。これが何とも言えない幸福感を与えてくれる。
実際、今この原稿を書いているのはスマホのメモ帳アプリであって、ノートではないのだが、本当であれば何でもかんでもノートに書きたい。兎にも角にも「ペンで字を書く」ということに勝るものはないのだ。でもここで一つ困ったことが起きる。私は新品が
エッセイ「感覚」 2.食べる
「好きな食べ物は?」「何食べたい?」
これらの類の質問は、非常に苦手である。と言うとあまり理解されないかもしれないが、とにかく苦手なのだ。
普段から特別「食」というものにあまり興味を持たない私。だから、急に質問されても困ってしまう、というわけだ。好きな食べ物が無いわけでもないし、食べたいものが無いわけでもない。ただ特別それを相手に伝えるほどのものではない気がしてしまう。なんだか、畏れ多いのだ。
エッセイ「感覚」 5.飲む
ウイスキーが飲めると、大人になったなあと感じる。家族と、友達と、恋人とともにお酒を嗜む時間は、より近しい距離感を楽しめる素敵なひととき。二十歳になって最初に飲んだお酒はモスコミュールだったが、いま一番好きなお酒は断トツでウイスキーとなった。
のどに流れてくるときの、アルコールの独特な香りとピリリとした感覚が、大人になったことを強く突きつけてくる。お酒を楽しむことは、ちょっとした憧れが叶ったよう
エッセイ「感覚」11.鼻を突く
鼻が痛くてたまらない、どうしても受け入れ難い匂い。それを世の多くの人は「芳しい香り」「心地よい香り」と言い、毎日のように好んで摂取するらしい。そう、コーヒーである。
一歩街へと足を向ければ、そこかしこにカフェや喫茶店があり、コーヒーの香りを漂わせている。それを感じる度に「おっと、息を止めなければ」と鼻で息をするのを止める。そして無事に通り過ぎたことを確認し、やっと鼻を解放する。朝食にコップ一杯